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カオス・ボーダー  作者: 柚黒 鵜白
第一章 光と闇
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第一章 光と闇 第六話 五霊の巫女

今回から戦闘が開始します。

第一章 光と闇

第六話 五霊の巫女


私ことロミナ・ライト・ネハーレンには妹がいた。その子は私と歳が一つしか離れていなかったのに私よりも優秀で、私よりも人望があり、そして何より例え相手が平民だろうが貴族であろうが態度を変えずに接しているというように優しい子だった。


だが護衛を付けての散歩をしていたある日殺されてしまった。正確なことは私も知らないのだが、妹のそば付きの人からはそう聞いた。どうやら護衛が全員殺し屋にすり替えられていたらしい。妹が殺されたことがあまりにも悔しかった私はまだ幼い頃ではあったのだが、妹を殺した殺し屋達を雇ったもの、また 護衛を殺し屋にすり替えた人物とその協力者について調べ尽くした。もしすり替えられていたとしても普通屋敷を出る前に気づかれるはずなのだ。


そして15歳になった日、つまり妹が殺されてから2年と少し経った頃だ。やっと計画の首謀者を全員調べ上げることができた。首謀者の数は13人だった。3人はもう殺した。2人はもう起き上がることも、字を書くことも、言葉を発することもできなくした。残すところ後8人だ。そして、そのうちの1人が今ここにいる。そう、当時13歳だったにもかかわらず護衛副隊長の座にいたこの男ミミールなのだ。


「よぉ、元気だったか?姫さん?いや、 妹ちゃんのオマケ《・・・・・》っていった方がいいかな?」

「覚えてくれたのですね?ミミール。ひとまずありがとうございます」

そう言って制服のスカートを少しつまんで上に上げる。笑顔も忘れてはいない。


それが嘘の笑顔であったとしても。


「ちっ、なんでパンツをそのまま見せないかねぇ?そうしてくれたら今この場でお前を犯してやんのによ。お前が俺の快楽のするがままに気が遠くなるほどな!」


この下衆が!!と今にも叫びそうな気持ちを押し殺して私は問う。


「・・・ミミール、覚えていますか?私の妹のことを」

「ああん?覚えているに決まってんだろ?あんな上玉忘れるわけねぇってぇの。つうかよぉ」


ミミールは自分の武器である。細剣を腰から抜いてこちらに向け、そして


「展開」


ミミールがそう叫んだ。するとミミールの霊獣である女王蜂ことクナラが出てきて自分のサーベルと合体させた。


「おら、死ねや!!」


そう言うと細剣を大きく振った。普通だと だから?となってしまうような行動ではあるのだが、今回は違った。何せ周囲の木影から兵士が生まれてきたのだから。どうやらクナラの能力はこの兵士達を影から呼ぶ能力らしい。確かに女王蜂の霊獣ならば納得ができる能力である。そして誰もが恐怖するだろう。


普通なら


「出てきなさい。"ミスズ"」


そう言うとすぐ近くから光が現れ、そして1箇所に集まると金髪蒼眼の1人の少女の姿となった。


「ミスズ、あれを防いで」

「了承」


そう言うとミスズは影の兵士達を次々と消していっていた。


「なんだよそいつ、聞いてねぇぞ。一体なんなんだよ」

「マスター、名乗った方がよろしいのでしょうか?」

「さぁ?した方が良さそうだし一応してみたらどうでしょうか」

「了承。私の名前はミスズ、八神獣が一体麒麟の霊獣です」


そう言うとミミールはピクッと眉をひそめた。

それを確認すると私は杖を取り出した。そして


「展開」


そう言ってミスズを杖と融合させた。それに気づいたのかミミールが細剣を持ち直して「しねやぁぁぁぁぁぁ!!」と叫びながら突っ込んできた。だがしかし、私は恐れない。そんな感情はとうの昔に消したのだから


「アウラ・ブリット・スラスター」

そう唱えた。すると私の周りに水の弾丸が生成されてミミールに打ち出された。そう、これは魔法だ。この世界では魔法を使えるのは魔族だけというが、私は例外なのだ。なんでそうなったのかは今は話さない。ちなみに妹が生きている時から使えているものだ。


確かに絶命させる 手前・・ までいためつけたつもりだ。だが


「なかなかきいたぜぇー!!だが、まだたんねぇよ。それにあんたはまだ 麒麟そいつの力を使いこなせていない。違うか?まあもし使いこなせていたにしろこれの前には無きに等しいけどな」

そう言いながらミミールは立つと制服を脱ぎ捨てた。その内側には奇妙な服を着ていた。


「それはなんですか?」

「こいつか?こいつはなお前の妹を殺させるように仕向けたって親父に言ったら"アームズ"の連中が作ったっていうこの強化スーツをくれたんだよ。まったく妹さまさまだな」


そんな減らず口をここにきてたたいてくるとは思わなかった。でも、これで一つ目、あと一つ


「おいどうした。こんなものなのか?だったらこっちから行くぞ"影円針シャドー・ワークス!!」


そう言うとミミールが細剣を振りながら距離を詰めてきた。そしてその剣先が光ったかと思うと周りの影がミミールと同じ形に浮かび出てきた。そして刺突や斬撃の大雨が襲ってくる。

「この俺の無数の剣技に勝てるかな!」

右から来たかと思うと左から、前から来たかと思うと後ろから、刺突や斬りに来てきた。だが、どんなに攻撃してこようが当たらなければ意味がない。確かに素手だったら不可能だ。だけど私は今杖を持っている。ならばよけれる攻撃は全てよけ、よけきれない攻撃が来たら杖で弾いておけばいい。そして出来た隙をついて魔法をぶつける。この作業を繰り返して影を全滅させた。そして

「フーラ・ブラッソ・オーグメント」

と残った本体に向かって風の刃を飛ばす魔法を行使した。今度は首を狙った。だが

「おせーんだよ!!」

とよけられた。悔しさと同時に怒りがこみ上げて来た。

(なんでこんなにも力を持っているというのにその力を、人のためではなく己の快楽を満たすために使うというのですか!!)と。そう思っていたらふと囁いた。


「なんで私の妹を殺したのですか?」

その問いかけに対してミミールは

「は?なんで教えなきゃなんねぇんだよ?意味わかんねぇ」と答えてきた。

「・・・否定しないんですね」

「くくっ、当たり前だろぉぉ!完了の報告をせずに依頼が終わっても報告しないって聞いていたから本当に実行するのか?って不安だったんだがな、次の日に殺されたってあいつのそば付きの奴が言っていたのを聞いてスカッとしたぜ」

「なんで」

私がポツリと言う。


「あぁ!?」

「なんで殺したの!?」

「決まってんだろ。あいつは俺のことが好きみたいな態度をしていたくせにいざ俺が告白したらあいつ『ごめんなさい。あなた様のお気持ちはとても嬉しいのですが、私には既に好きな人がいるのです。本当にもう仕上げございません』ってほざきやがったんだぞ。もしその相手が俺よりも上の階級の貴族達だったらまだ許していたさ。だけどあいつが好きだって言った相手を聞いてみたらそいつは俺よりも階級が下の下である平民だったんだぞ!そんなの許せるわけがないだろうが」


確かに妹には好きな少年がいた。その少年は私のそば付きの人の親戚の子で平民だった。だが、そのそば付きの人に預けられていた時にはよく私と私の妹と身分差を気にしないで遊んでくれた。裏表のない笑顔を向けてくれた。そして何よりも私の初恋の人でもある。


「それに俺の方があの平民よりも顔がいいし、金も、権力だってあるんだ。それを言っても俺に心変わりしねぇ。だから殺したんだよ。俺のものにならねぇってんなら壊して誰のものにもしない方がいいからな。つうかなんだよ。別に人を殺しても罪には何ねぇんだから勝手に恨まれてもこっちが困るんだよ。何よりもお前が確実に王女になれるんだからいいじゃないか?ええ?」


それを聞いて安心した。これで 二つ・・・だ。


「最後に」

「あぁ!?」

「言い残すことはありますか?」

「さっきから本当になんなんだ・・・よ」

ミミールは私の顔を見て表情をかたくした。まあそうでしょう。何せ今の私の表情はきっと私の中で最高の笑顔だろう。それでも目は笑っていないのだから。


「ミミールさん。これで決闘はやめにしますね」

「そ、そうか。いい判断だ。何せお前の攻撃は俺のこの"ルミーナ・ベレス"に傷一つつかないのだからな」

この人は何を誤解しているのだろうか?

「何か認識を間違えているようですね。これからあなたの処刑を始めるという意味だったのに」

「は、はぁ?い、一体何を言っているんだ。お前の攻撃は俺には効かないんだぞ?」

「はい、そうですね。確かに 麒麟は《・・・》効かないのでしょう。ですが この子たち《・・・・・》ならどうでしょう」

「何を言って」

「あなた達、あの人を殺してください」

そう言った。そう、ロミナは言葉を発しただけだ。だが、言葉を発した直後ミミールは目の前から消えた。正確に言うなら遥か上空へ吹き飛ばされた。


ロミナは、それが落下してきたのを確認すると

「これで6人目、か。思っていたよりも脆い人たちばかりね」

と興味がないとばかりの冷ややかな声でそう呟いた。その周りには麒麟の女性と4つの黒い影が存在していて、ミミールの死体は人間だった面影が残っていなかった。


ミミールVSロミナ

勝者 ロミナ

次回はサヴァーです。

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