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プロローグ
近くの川へ水を汲みに行く道すがら、ふと。懐かしい気配を感じた。
見上げると、ちらちらとユキが舞い始めていた。
1…、2。
見ずぼらしい布の服の上に、白い結晶がきらきらと彩りを添えていく。
3、4。
白い結晶達は歓喜に震えるように、俺を目がけて競うように降り注ぐ。
5、6。
…嫌だな、また名前を考えないといけない、とぼんやり思う。
7、8。
白銀の小さな少女たちは、俺に向かって悪戯っぽく微笑みかける。
9、…10人。
そろそろ打ち止めだ。あんまり増えると、うるさくてしょうがない。なにしろ春から秋までは、誰とも一言も口をきかず、魔道書とにらめっこの引きこもり生活をおくってきたのだ。
「皆行くぞ、ついてこい。」
しゃがれた声でそう言って、一年ぶりに口角を無理やりに持ち上げれば、そのぎこちなさに気づいたのか、ユキたちは思い思いにキャハハと笑った。
俺は黙って俯いて、寒さでかじかんだ手をこすり合わせた。
うるさい冬が、今年も始まる。