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2-2 ボリアの町

ヌル・ポインの町から北西に目を向けると、

一際高い、そして特徴的な形の山があります。

大きな山の頂上部分を一度切り落として、

間を抜いて先っちょを付け直したような、

大きな山の上に台地があって、その上に小さな山があるような。

小さい方の山はラリバール山と呼ばれています。

台地の部分にはボリアという町があるそうです。

わたしたちはこの町の行政長官、スミスさんに呼ばれています。

「・・・コーヤ、ここの話はあてになるのか?」

お酒と香水、女の人の臭いを漂わせながら合流したユースケ様が言います。

「うちの王家の連中が使っていたという呪法は、

 七星請願書とか言う魔道書に記されているという話でな。

 それがこの町にある、という話を得るまでそれなりに金をかけてウラを取った。

 信用は出来るだろう」

ご主人様たちは『元の世界に戻る方法』を探しているそうです。

同じ世界から、別の国にそれぞれ呼び出されてしまったのだとか。

冒険者ギルドでお仕事を請ける傍ら、異世界に関係する情報を集めているとのこと。

今回接触することになっているスミスさんからは、

不法に人をさらっている疑いのある宗教団体の調査を依頼されています。

なんでもラリバール山の山腹に教団の施設があるのだとか。

この教団が、先程お話にありました七星請願書を持っているとかいないとか。

どういうルートからなのか、

この教団の調査協力の話をスミスさんに取り付けたコーヤ様は、

報酬代わりとして七星請願書の閲覧を望んだそうです。

わたしたちは顔合わせの後、調査に向かうことになっています。

朝から山登りになってしまいますが、しょうがありません。

しっかり寝たわたしやコーヤ様は問題ありませんが、

あまり寝た様子もなく、お酒もだいぶ飲まれているユースケ様は・・・

と少し考えましたが、ユースケ様は体力のお化けなので全然大丈夫そうでした。

むしろメンバーの中で一番軽快に歩いています。

まぁ山登りといいましても、この山の街道は以上に整備されていて、

道は小石もほとんどなく、一定間隔で魔物除けの道標が立てられています。

普通の街道なんかより、よほどお金がかかっているように見えます。

コーヤ様の肩を抱いて、昨日の夜が如何に素晴らしかったかを声高に説明しています。

コーヤ様は聞き流されていますが、わたしは気になってしまい耳がダンボです。

顔が赤くなってしまいます。


ボリアの町。

ラリバール山から放射状に町並みが広がっています。

形としては山を持ち手とした扇のような。

町の外周には妙に頑丈そうな外壁があります。

出入り口は私たちが近づいている扇の広がった側にいくつかある門と、

ラリバール山に向けて設置されている、とても大きく頑丈そうな真っ黒い城門だけです。

そう、お城の門としかいえないようなとても立派な門が山に向けて設置されているのです。

門の周りには物見の塔や胸壁があり、見回りの兵士が山のほうを見張っているのだとか。

というのもラリバール山からは時折、ヴーアミと呼ばれる凶悪な怪物が襲来してくるのだとか。

町を取り囲む壁は全て、ヴーアミを警戒して立てられたのだそうです。

何でこんな山の中、しかも凶悪な怪物がいるようなところに町があるのでしょう。

疑問に首を捻らざるを得ません。

門には屈強な、そしてお金のかかった装備の兵隊さんがいました。

騎士様のように煌びやかな装備ではないですが、高い性能を感じさせる良い皮鎧です。

造りはしっかりしているし、細かいところに施されている、魔術効果のある装飾の数々。

「ボリアの町に何用かね?

 商売目的であれば南門、それ以外であればここで話を伺うが」

「オレたちはここの行政長官に呼ばれてきた者だ」

「ほう、あんたたちが・・・ずいぶん若いんだなぁ。

 話は聞いているが・・・てっきり歴戦の戦士みたいなのが来るかと思っていたぞ」

「依頼を受けるときに腕試しをされて信用は勝ち得たと思っているが」

「そうだな。まぁ名前やなにやらの情報は伺っている。

 この水晶に片手を乗せて宣誓を頼む」

兵士の人が懐から小さな水晶を取り出しました。

これは一種の魔法装置で、一種の身分証明の為に使われています。

コーヤ様が水晶に手を載せて唱えます。

「我、嘘偽りのない身分の証明を求める」

水晶が青く光、地面に向けてコーヤ様の個人情報を表示します。

名前、年齢、性別、所属ギルド、所属国家。

「なるほど、確かに。

 元ツヴァイ国の勇者様か・・・じゃあ次の人も」

言われて今度はユースケ様が面倒くさそうに水晶に手を載せます。

「・・・我、嘘偽りのない身分の証明を求める」

再び水晶が青く光、地面にユースケ様の個人情報が表示されます。

「確かに。

 しかし敵対関係にあった二つの亡国の勇者が、今では一つのパーティーに所属しているんだな。

 さて、お嬢ちゃんの番だぞ」

私も身分を証明します。

私の名前は長すぎるので、今使っている名前だけを表示します。

「・・・OKだな。

 確かに行政長官より通達されていたパーティーのものだと確認できた。

 ようこそ、ボリアの町へ。入門証を発行しよう。

 これがあれば今後は提示だけで出入りできる」


門を抜けると、白亜の町並みが広がっています。

放射状の町並みはしっかりとした都市計画に基づいて建物を配置しているようで、

公園などの憩いの場もあるようです。

「・・・綺麗な町ですね」

「まぁこんな辺鄙なところで不自然な感じはするがなぁ」

門を抜けてすぐは商店街のような感じになっています。

建物に使われているのは全て白い石材。

外壁に使われているのと同じ、綺麗だけど実に頑丈そうな石です。

町の建物は基本的にこの石を使って建てられていて、

色の着いた建物も、石に塗装を施しているようです。

町を歩く人たちはみんな小奇麗な格好をしていて、にこやかです。

人間、獣人、エルフにドワーフ、みんな明るい顔をしています。

貧しそうな服装の人や悲しそうな顔をした人は見えません。

商店街で扱われている商品は、宝飾品からさまざまな種類の服。

食料品としては香辛料、新鮮な山菜、野菜。

「・・・行政長官の館はこの通りの先にあると聞いている。

 さっさといくぞティア」

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