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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

続編のない短編達。

この世は弱肉強食。

作者: 池中織奈

 一人の少年が息をひそめて、茂みの中に隠れていた。この世界では珍しい夜を表す、黒色の瞳と髪。

 身につけているものはみすぼらしく、森の中に存在する葉や獣の皮で作られたものであった。

 空では二つの太陽が輝いてる。丁度、昼間だ。

 茂みに潜んでいる少年のすぐ近くに、一匹の獣が居た。それは猪のような姿をしていた。ただし、大きさは従来の猪よりも大きく、鋭く尖った角が生えている。その獣は、一匹の獣の死骸にしゃぶりついていた。地球でいう猪が基本的に草食であるのとは違って、その獣はこの森の獣を好んで食す肉食獣だ。

 「……」

 少年は声を発する事なく、その様子を見ている。

 バレないように、音は一切立てていない。

 しばらくして、獣が食事を終えて、移動する。寝床へと向かおうとしているのか、そのまま進路を変えて足を進めていく。

 次の瞬間、大きな音と共にその獣が消えた。

 正しく言えば、少年がしかけていた落とし穴にはまったのだ。

 その落とし穴には、木の棒が落ちると同時に刺さるようにしてあり、獣の苦しみ、もがく声が聞こえてくる。

 真っ向勝負で勝てる見込みはない。

 だからこその、罠だ。

 このまま息絶えてくれるのが望ましい。普通の猪ならそれで十分かもしれないが、あの獣は猪よりも凶暴で丈夫だ。

 しばらくすれば、声がやんだ。

 それに少年はほっと息を吐く。

 そして穴に近づいていき、死んでいる獣を見ながら声を発するのだった。

 「……良かった。これで飢えずに済む」

 少年はそれから、腰に掲げたポーチもどき(森にあるもので作成)から石で作った刃物を取り出して獣を頑張って解体していくのだった。







 「……うまい」

 解体した獣を持てる限り、手にして少年――磯野日向は自身の拠点に戻った。それは、森の中に位置する小さな鍾乳洞だった。

 日向は火を起こして、獣の肉を食し、壁によっかかる。

 そして、もうこんな生活も二年にも及ぶのだなとただ懐かしく思うのであった。

 日向がこの魔獣の森――最も日向は名称は知らないが――にやってきたのは二年前、日向が農業高校に入学してすぐの事だった。

 突然下校中に、瞬きをした瞬間に日向はこの森に居た。

 もちろん、わけがわからなかった。ただ、太陽が二つあることや、見た事も聞いた事もない生物が生息している事から此処が自分が知っている世界ではないという事はわかった。

 異世界召喚か、トリップかと考える余裕はなかった。

 森にやってきてすぐに一番最初に見たのが、猟犬のような獣だったのだ。捕食者の目をして追い立てられる中を必死に木に上って逃げた。

 その獣は木の上までは上がってこなかったので、一安心して冷静になってみた。その結果、思うにとりあえず異世界だとかはどうでもいいとして食事を確保しなければ餓死するという事だった。

 元々田舎育ちで、実家が農家だから動物の解体とかは割となれている。それに加え父親が格闘マニアで色々と仕込まれていて、身体能力は高かった。

 生き物を殺す事に罪悪感はなかった。

 それから必死になって食べられる果物を探したり、飲み水を探したり、あと獣達を狩るためにどうするべきかと試行錯誤しだ。

 幸い果実なのは充実していたが、肉も食べたかった。だからこそ、狩る方法を考えて罠とか作ってみたりしながら生きているのだ。

 もちろん、この森から出て人間と接触しようとは思った。ただし、この森は異様に広い。それに加えて恐ろしい獣が溢れる森の知らない区域にいけば、もっと未知なる獣が居るかもしれないと思うと中々動けなかったのだ。

 毒を持つ生物がいれば対処方法はない。解毒剤など持っていないし、未知の生物が居る場所にはあまりいきたくなかったのだ。

 それに森の探索をしていたら今日の食事さえも満足に取れない。

 獣たちは異常に丈夫だったりするため、きちんと準備しないと中々狩れないのだ。日向は知らない事だが、この森には動物はほぼ居ない。魔獣と呼ばれる人間の脅威ばかりだ。動物はほとんど魔獣に食いつくされている。

 しかも日向がトリップした場所はこの広い森の中心部であり、人は来ない。そういうわけで二年近くずっと日向はサバイバル生活をしている。

 何度か死にかけたが、死にたくないって願望の元必死に生きている。

 この場所は弱肉強食の世界だ。

 弱ければ食われる。日向だって何度か食われかけた事がある。おかげでこの二年間で気配を読む能力が凄まじいほど成長している。生きるために必死だったのだ。

 小物の魔獣なら頑張れば罠なしでも倒せるようになった。この二年で急所や弱点を色々と知っていたためでもある。

 名前は知らないが食べられる果実についても身を持って色々と知識が増えている。中には一口食べた瞬間、あまりのまずさに吐いてしまったものもあるが、美味しい果実は森に多い。

 ついでに言うと魔獣は川にも居る。川を覗き込んだ獣を引きずり込んで食べる巨大な魚をはじめてみた時は日向は驚いたものだった。水を汲みに行く中で、食われそうになったこともある。ただしその魔獣は陸には上がってこないから対処法はあった。

 「……明日も頑張ろう」

 日向はただそう呟く。

 人間が誰か来てくれるかもしれないという期待は彼にはない。此処が異世界であろうとも、それよりも日向は明日生きるために気にしなきゃいけないことが山ほどある。

 気を抜いたら食われる世界だとは十二分に理解しているのだ。

 そして、洞窟の入り口にしっかりと獣が入ってこないような対策をして日向は眠りにつくのだった。




 ――――この世は弱肉強食。

 (気を抜いたら食われる世界を必死に彼は生きている)




磯辺日向イソベヒナタ

田舎出身、農家の出。ただ父親が格闘マニアで色々習ってたから身体能力も高いし割と強い。

トリップ先が人が一人もいない膨大な面積を持つ魔獣の森の中心。

自分で得物をとらないと死ぬし、毎日頑張って得物を狩ってる(罠とかはって)。

生きるのに必死で、広すぎてどれだけあるければ森の外に行けるのかも不明な状況なために、トリップして三年間ずっと魔獣の森で暮らしている。何回か死にかける状況はあるけど、頑張って生きてる。



基本、自分の力でたくましく生きてるキャラって好きです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 逞しい主人公は安心できる [一言] 四季がある土地だとしても1年を生き延びれたのなら、もう日向自身もその土地の生態系の一部に埋もれてるし外に出ないほうが良いですね いずれ仙人みたいに知る人…
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