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焦れた私は一軒家に入り老婆の入って行った部屋の扉を開けて旋律する。
老婆はバットのようなモノで何かを叩き、すりつぶしていた。
部屋の中には血と古い家独特の埃の混ざった臭いが充満しており吐き気を煽る。
ドンッ!
と言うと音と共に叩かれた何かから赤い液体が飛び散る。
グチャグチャ…
バットでそのまま何かを擦り潰す…。
「な… 何をしているんですか?」
あまりの光景に吐き気を覚えながら訪ねる。
老婆はゆっくりと私の方を振り向き、先ほどと同じ不気味な笑みを返す。
「村ノしキタりのモノデよ。」
「しきたり?」
「セイ者はイラんでの。」
「せいじゃ?」
私は意味が分からず問いかえす。
「生ジャのからダを砕いテ地面にウエねば祟ラレル。」
そういうと老婆は血まみれのバットを持ったまま立ち上がり、こちらへと歩き始めた。
「う… うわぁああああああああ!!」
私は恐怖のあまり、悲鳴を上げて家を飛び出す。
駅へ逃げるべきか!?
いや、駅へ行ったら袋のねずみだ。
雑木林は!?
何があるか分からないが、雑木林なら老婆の足では追いつけない!!
私は嫌な予感はしたが、逃げ切れる可能性のある雑木林へ走り出した――
雑木林に入ると、地面はぬちょぬちょとぬかるんでいる。
血生臭い雑木林に入ってからずっと「ぐぅうううう…」と言ううめき声のようなモノが聞こえる。
イタイ…
ケルナ…
うめき声の中に人の言葉のようなものも混ざっているが、そんなモノいまさら気にもならない。
私は今凶器を持った狂人に追われているのだ。
「はぁ… はぁ…」
私は老婆が追いかけて来ていない事を確認すると木に寄りかかる――
木が生暖かい…
私は恐る恐る寄りかかった気を確認する。
月明かりに照らされ、映る木の幹は心なしか赤く見える…。
私は恐る恐る自分が踏んでいる地面を確認する。
水がぬかるんでいると思っていた地面は粘り気があり、ところどころに砕かれた骨の残骸のようなものがある。
まさか――
私は血の気が引くのを感じた。
この雑木林は先ほど老婆が言っていた"生者を砕いて埋めた場所"だった事に気が付いたのだ。
人の血を吸った木々は殺された人の恨みか自然現象か不気味な赤味を帯びている。
では先ほど聞こえたうめき声や人のような声は私に踏まれたこの肉片の持ち主なのだろうか…。




