『ひえひえのお手てとあんよ』
❅ひだまり童話館主催「開館10周年記念祭」企画参加作品です。
❅「ひえひえな話」のお題で書かせていただきました。
さむ~い冬の朝の出来事です。
みゆちゃんはとろとろ眠りから目を覚ました。
「ふあ~」
大きなあくびをしながらみゆちゃんは布団から起き上がりました。
「さむいっ!」
冬の朝ですから、朝のお部屋もしんと冷たい空気でいっぱいです。
みゆちゃんは窓のカーテンをサアーッと開けました。
「あ! 雪だ。雪が降ってる!」
道理でこんなに寒い訳です。
お外はしんしんと静かに雪が降っててとても静かでした。
お部屋から廊下に出て、みゆちゃんはお母さんを探します。
でも冬の朝の廊下は……。
「う~、つ、冷たい!」
ひえひえの廊下ですぐにみゆちゃんの小さなあんよは冷たくなってしまいました。
テレビのある部屋の入り口を開けると、あったかい空気がほぺにほわっとあたってみゆちゃんはほっとしました。
「お母さん、おはよう」
「おはよう、みゆちゃん。寒いからすぐ靴下履きなさい」
お母さんは台所で朝ごはんを作っていました。
お母さんに言われてみゆちゃんはすぐにお母さんのお手製の毛糸の靴下を履きます。
お母さんの編んだピンクの毛糸の靴下はみゆちゃんのお気に入りです。
ひえひえの足もほかほかしてきました。
「うー、今朝は寒いなー」
お父さんも起きてきました。
ソファーに座って裸足をすりすりしています。
「お父さんもあんよひえひえ?」
「ああ。冷たいぞー?」
そう言ってお父さんがわざと冷たい足をみゆちゃんに伸ばしてきたので「きゃあっ」とみゆちゃんは笑って逃げました。
「お父さんふざけてないで靴下履いて」
「お父さん駄目でしょが!」
二人に言われてお父さんは大人しく「はーい」と返事しながら靴下を履きます。
お父さんの靴下も毛糸の靴下で、もちろんお母さんの手作りです。
朝ごはんが出来上がって、三人テーブルの椅子に座ります。
テーブルの下でみんなの足が、お揃いの毛糸の靴下がもこもこと足を包んでくれています。
お母さんのあったかおみそ汁は体も心までもほかほかしてきます。
「「ごちそうさまでした」」
「はい。みゆちゃんちゃんと全部食べれたね」
「うん!」
ご飯を食べ終わって、みゆちゃんはお外で積もった雪でお父さんと遊びました。
手袋をしていても手はすぐにひえひえになって冷たくなってしまいました。
「冷たい~」
みゆちゃんはお家に入って真っ赤になった手をこすり合わせました。
「みゆちゃん、ホットはちみつミルク作ったわよ」
「わーい!」
寒い朝によくお母さんはホットはちみつミルクを作ってくれます。
じんわりあったかくて甘いこの牛乳の飲み物が、みゆちゃんは大好きでした。
「お母さんありがとう!」
お母さんにぎゅうっと抱き付いたみゆちゃんはあることに気付きました。
お母さんのお手てがお外に居る時みたいに冷たいのです。ひえひえでした。
「お母さんの手、冷たい」
「しょうがないのよ」
お母さんは困ったように笑って言いました。
「お母さんお手て貸して」
みゆちゃんは良いことを思いついて、お母さんの手を取りました。
「ふう~、ふう~!」
みゆちゃんは口から息をはいてお母さんの手に吹きかけます。
小さなお口で一生懸命ふうふうとしてみました。
「これでお母さんの手あったかくなるよ!」
「ありがとう。みゆちゃん」
お母さんにお礼にいっぱいぎゅうっとしてもらっててみゆちゃんはとってもいい笑顔です。
~おわり~
拙い作品ですが、頭の中でその場面の絵を浮かべていただきながら読んでいただくと嬉しいです。
お読みくださり、本当にありがとうございました。