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43.必要で不必要な存在

お待たせしました!ちょっと暗いです。注意!そろそろほのぼのタグ変えなきゃですね…(-_-;)

深い眠りについていた万里子が、突然ぱちり。と目を覚ましました。


ゆっくりと首をめぐらせますが、小さくなんの装飾もない殺風景な部屋には万里子ひとりしかおりませんでした。


(あれ?誰かがいたような気がするんだけど……それに…)


何か違和感を感じ、腕を動かそうとしたものの、まだ身体は重く腕はピクリとも動きませんでした。


(むーー。ギリギリ首は動くんだけど……)


それでも、ゆっくりとまるでギシギシと音が鳴るようなぎこちなさで、扉に目を向けました。

すると、目覚めたのを知ったのか絶妙な間で扉が開きました。


「マール様!お目覚めですのね!ゼス、薬茶をお持ちして!」


遠慮がちに開けられた扉から、様子を窺うように顔を覗かせたシアナは、目をぱっちり開けている万里子を見ると、嬉しそうに微笑み扉の外に向かって指示を出しました。

いそいそと入って来たシアナを見て、万里子はホッとしました。


「シアナさん、あれからどれ位時間が経ってますか?」


「一晩しか経っておりませんよ。お加減はいかがですか?」


「まだ身体が重いです」


「まぁ…」


シアナの繊細な美しい顔から微笑みが消えました。


「ヤンテを受け入れるのに、かなり体力が消耗したのですわ。ルヴェル様の薬茶には劣りますが、今用意させますので、お待ちくださいね」


「あ!でも痛みは無いです!ただ動かないだけです!」


シアナは寝台に近づくと、万里子が上半身を起こすのを手伝いました。


「本当ですの?何か違和感があるとか…それもございませんか?」


「違和感…なんか、部屋に誰かが居たような気がするんですけど…痺れというのか、なんか…なんか違うんです」


「誰か…ですか?…いいえ…私が時折扉から様子を窺っておりましたが、ゆっくりお休みいただこうと思いまして、室内には入っておりません。夜会の時分には私もマール様の元から離れておりましたが、その簡は誰も入れぬようジル様が警備の者にきつく申し付けておりましたし…。痺れがあるのはどこですの?ひどく痺れますか?」


「いえっ、あの。うまく表現できなくて。痺れのような感覚なんですけど、痛みは無いし…誰かが居たような気がするってだけなのかも……でも、誰も来ていないからそれもきっと気のせいだと思います。夢を見たのかも…」


「きっとそうですわ。とても深く眠っておいででしたのよ?」


「はぁ…そのせいですかね?頭はすごくスッキリします」


万里子の答えに安心したのか、シアナは再び微笑みを浮かべました。

その時、控えめなノックが聞こえました。


「ゼスが薬茶を持ってきたのですわ。お入りなさい」


最後は扉に向かって声をかけると、大きな身体の若い男性がその巨体を縮こまらせて、小さなゴブレットを大切そうに両手に持ち入って来ました。


「シアナさま、薬茶をお持ちしました」


「ありがとう。そうだわ、ゼス。あなた夜会の時の警備団長だったわよね?」


「は、はい」


「マール様。この者はゼスと申しまして、神官兼警備団団長なのです。神殿のように基本的に神官しか入れない場所はゼスのような警備団が警備するのですわ。

昨晩の夜会の際にもこの神殿を警備しておりました。ゼスに昨夜の事を聞いてみてはいかがでしょう」


「は…あの、昨夜の事とは……」


思い当たる事があるゼスは、息をするのも忘れてシアナの横顔を見つめました。

次の言葉を待ちながらもゼスは背中に嫌な汗が流れ落ちるのを感じました。かすかな震えが、ゴブレットの中のとろりとした金色の液体を僅かに波立たせます。


「ゼス、昨夜の夜会の間、ここに誰か来て?」


「っ!…いいえ。どなたもいらっしゃっておりません」


一言ずつ、その言葉をかみ締めるようにゼスは答えました。


「昨夜は、わたくしを含め7名で警備しておりましたが、誰も異常は無かったと申しておりました」


「…そう。そうね、私もそのように報告を受けております。マール様…」

「あの!いいんです!多分、夢だったんだと思うんです」


「マール様、きっとお疲れなのですわ。まだお体も動かないようですし、薬茶を飲んでゆっくりお休みください。ゼス、ありがとう。薬茶をこちらへ。もう下がっても良いわ」


「は…」


ゼスは、まだ困惑したような表情を浮かべる万里子を一瞥すると、そそくさと部屋を出て行きました。


「さ、マール様。これを…あぁ、お手伝いしますわ。少し上を向いてくださいませ…ええ。そうです。苦いですけれど、一気に飲んでくださいませね」


「はい。……に、にがっ!!」


「あらあら。苦いと申し上げましたのに…。明日には少し動けるようになると思いますわ」


「そうですよね。式典も終わったしまた帰るのに私が動けないんじゃ迷惑をかけちゃいますもんね」


すいません。とこてんと頭を下げる万里子を、シアナが慌てて制しました。


「違いますの。まだ数日は他国の王族も留まるようですわ。神殿造りのためにもっと情報を収集しようとしているようです。ジル様やサク様もその対応に追われております。数日は解放してもらえないでしょう。それに各国の王族や貴族の女性達はグリューネ様に衣の依頼をしたいと殺到しているようですわ。ですから、マール様は安心して、ゆっくりなさってください」


「ええー!グリューネさんがですか!?もう引退するって言ってたのに……でも、グリューネさんがもしまたお仕事始めるなら…私もまだお手伝いできることがあるでしょうか」


今の万里子にとっては、仕事がなくなることが一番不安でした。何も出来ない状態でただただお世話になるだけなのは、考えるだけでも落ち着きません。

式典で体験したことで、召還されたのがやはり自分であったのだと分かった今でも、その不安は消えません。

むしろ不安は増すばかりでした。自分が求められているのは器だけなのか…なら、今この不安に押しつぶされそうな心はどこに行くのだろう…この世界では必要な私(身体)と必要じゃない私(心)がいる…そう考えると、思考はどんどん暗い方に沈んでいきました。


(せめて、せめて仕事があれば神殿での事は割り切って考えられるのに…)


自分が姫だとバレてしまったら、ここに閉じ込められて周りの都合で身体うつわを使われてしまうのだろうか…自分の意思とは関係なく?そう考えて、万里子はゾッとしました。


目をギュッと閉じた万里子を、シアナが気遣わしげに声を掛けてきました。


「マール様?大丈夫でございますか?」


「え?あ、ハイ!大丈夫です。ちょっと考え事をしてました」


「あの…実は、面会をご希望の方がいらっしゃるのですけれど…入って頂いても大丈夫でしょうか?」


「え?そうなんですか?誰でしょう?大丈夫ですよ。お待たせしちゃったんじゃないですか?」


「まだ目覚めておりませんでしたので、別室で待って頂いております。気付かれたとはいえ、お体がまだ動かないのですから、ご無理はなさらないでくださいね」


「え……でも、待って頂いてるんですよね?大丈夫ですから」


重く沈み込む気持ちを面会する事でそこから逸らせるならと、万里子は努めて明るく答えました。


「そうですか?それでは…お連れ致しますわ」


「はい。お願いします」


ちょこんと頭だけでお辞儀すると、シアナは心配そうにしながらも部屋を出て行きました。


少しして、短いノックの後に再び開けられた扉から、ぴょこんと顔を覗かせたのは、昨日倒れる直前に見たあの大きなピンク色の目が愛らしい少年でした。

42話の直後のシーンは直接的な表現はしませんw

でも痺れって事は…え??て感じで!


平和ボケした日本から、しかも自己主張せず目立たないように平凡に生きてきた万里子は、43話になってもぐずぐずです。すいません…いずれ成長させるつもりです!どうかも少しぐずぐず万里子にお付き合いくださいませm(__)m

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