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4.消えた赤い星

男だ!


こんなに綺麗なのに、男なんだ!



見たままの印象通り、恋愛経験も無ければ、手を繋いだ経験も親類を除いては

小学校の遠足の時だけ。という万里子は、ジルの腕の中で自身も石になったかのように、

カチーンと固まってしまいました。



「あぁ・・すっかりお体が冷えて・・」


ジルは、そんな動かなくなった万里子を、さっさと腕に抱き上げ、部屋を出て行きました。


まるで、万里子以上に、ジルがこの空間に万里子を居させたくないと思っているかのように、

それはそれはすばやい動きで、万里子はされるがまま。でございました。



「・・・大丈夫ですか?」



あの儀式が行われていた部屋を出て、少しすると長い長い階段がありました。


一見華奢な印象を与えるその女性的な風貌の割りに、逞しい体つきのジルは

長い長い階段をものともせず、万里子を抱きかかえたまま上っていきます。


「あの、重いですよね?歩きますから・・」


「重い?いいえ。姫は重くなんてありませんよ。

神殿は地下深くにありますから、余計寒かったでしょう?もう少しで地上に出ますよ」


まるで、地上に出たら暖かい。というような口調だが・・・肌で感じる空気は冷えたままだった。

この世界は、ずっと冬なのだろうか??


ぶるり。万里子はまた大きく震えました。


「この世界は、今は冬なのですか?」


「冬?いいえ。今は季節で言うと、夏ですよ。ですが、今は1年中殆ど変わりません」


「なぜ、ですか?」


「ヤンテが姿を消してしまったからです」


「・・・やんて」


はて、何の事だろう。言葉は分かるつもりだったが、この言葉は聞いた事がない。


不思議そうに言い返した万里子に、ジルは丁寧に説明しました。


「ヤンテ、とはこの地に昼と夜、そして季節を与えていた存在です。空高くにある、

赤い星ですよ。

それが17年前に突然姿を消しました。

それからはずっと冬のように寒く、作物も育たない。夜のような暗闇が続き、

飢えた人々は略奪を働き、国は荒れました。

この国は、ヤンテに見離された。もう終わりだと人々は悲しんだ。

そんな時に、予言があったのです。体に赤い石を持つヤンテの姫が現れるとね」


静かに話しながら、小さな扉を開け、古びた石の螺旋階段を上るジル。

待って。何か・・・何かが引っかかる。


先ほどから、ジルの言葉が万里子の頭の片隅に引っかかっていました。



先ほど通った、扉の向こうを、人々の騒がしい声が通り過ぎました。

その中には、一緒にこちらにやってきたマリコの甲高い声も聞こえます。


「私達は、裏口から出ますよ」


「え?」


頭が混乱する。何かが、引っかかって、それが頭の中でもがいている。

アタマガイタイ------!


「裏口、ですか?」


「えぇ。今頃は外は大変な騒ぎになっているでしょうからね」


「え?」


「着きましたよ。この扉を開ければ、外に出られます。姫、まだ寒いですか?」


そういえば。


「い、いえ。少し暑い位です」


ジルは満足気に微笑むと、万里子を抱いたまま器用にドアを開けました。


ずっと、冬がつづく暗闇の世界へ----------------




の、はずが。


そこは日の光が眩しい位に降りそそぐ明るい世界。

ただ、ジルの言った通り、国の荒れた様子が日の光に晒されておりました。

木々は枯れ、草も無く大小の石がむき出しの地。


「やはり・・・」


感極まったかのようにつぶやくジルを見て、やっと、引っかかっていた言葉を

思い出した万里子は・・



「!!ジ、ジルさん・・・・さっき、何て言いました?」


「ヤンテですか?」


万里子の胸は、苦しい位に高鳴っておりました。


「いえ!あたしの事、何て呼びました?」


「姫、と。・・・あなたが、本物の姫でしょう?」




ジルは、白いのか黒いのか・・・?

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