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38.撃沈

大変お待たせしました!


待っててくださった方々…ありがとうございます!

「あのぅ…」



「ダメです」



「…まだ何にも言ってないのに…」



うなだれる万里子を、ジルが小さくため息をつきながら振り返りました。


「何も言わなくてもわかります。どうせ、部屋の外に出たいと言うのでしょう?」


「……」


何も答えない万里子に、いつもは穏やかなジルの左眉がぴくり、と動きました。


「違いましたか?」


「イエ…そのとーりです…。でも!あの…式典の事でジルさんも忙しいんじゃあ…」


「全て指示はしてあります。式典は今日なのですから、準備はもう出来ていますよ」


神殿に来て早々倒れてしまった万里子はそれからというもの、部屋の外に出る事を許されず、

ジルの監視の下、ただひたすらぼんやり一日を過ごしておりました。


「でも、でもですね?外からはいまだにどったんばったんと物音がするじゃないですか。

まだお仕事あるんじゃあ…」


「大・丈・夫、です。あれ位の仕事がこなせないようでは、神官なんて辞めてしまえばいいんですよ」


なにげにブラックな事を言うジルでしたが、優しく優雅なジルしか知らない万里子はすんなりとそれをスルーしました。


「それより…あの女…いえ、マリー姫が式典の最中、後ろで控えているように言ったのですね?」


「はい。えーっと、式典で神託?をするんですか?で、どっちかが本物なんだから後ろに控えていてくれって…」


「ええ…式典の最後ですね。ヤンテの神託があります。ですが、このように形ある神託を行うのは実は初めてなのですよ」


「え?そうなんですか?」


「ええ…。今までの歴史でヤンテが消えた事など無かったのですよ。そのヤンテの復活と共に現れた赤い石を持つ姫……。この姫が一体どんな存在なのか…まだ謎に包まれています。

ですが、ヤンテに関わりがある事は確かでしょう。闇から抜け出せた喜びで、各国の王族も姫を一目見たい。何かお言葉がもらえるかもしれない。そんな思いを持ってこの式典に向かっているのです。

その要望に応えるために、そのような場を設ける事にしたのですが…」


まさかあなたがこのように巻き込まれるとは…と、神妙な面持ちで続けたジルの言葉よりも、万里子には気になった言葉がありました。


「なぞ!姫って謎に包まれているんですか?何か使命があったりとか、異界の娘しか取りにいけない聖剣があったりとか、そんなの無いんですか?!」


「ありませんよ?私が祖父の霊から告げられたのは、消えていたヤンテが異界から現れる少女を召還する事で復活するという事だけでした。ヤンテの姫だからと言って特に使命があるなどは……あぁ。使命があるとすれば…」


「!やっぱりあるんですか!?」


「ヤンテの復活ですよ。そのためにあなたは呼ばれたんですから。使命は果たされたと言っても良いでしょうね」


「果たされた…」


伯母の書くファンタジー小説をいつも読んでいた万里子の頭には、召還されるからには使命があり、時には危険な旅に出たり、魔王の退治という異界の大問題を丸投げされたり、時には意に添わぬ相手と結婚させられるのではないかといった考えがありました。

自己主張がなによりも苦手な万里子には、到底出来ないと恐怖を感じ、ならばいっそひっそりと手に職(お針子業)をつけて生きていこうと考えていたのです。


それが、ジルはヤンテの姫に使命があるのならば、それは既に果たされたと言います。


当然、万里子の頭にはひとつの可能性が生まれました。


「じゃあ…帰れるんですか?」


万里子が期待を込めた目でジルを見上げると、ジルは悲しげに微笑みました。


「すみません…。方法が無いのです。それに、ヤンテと関わりがあるのは確かですから、あなたが消えたと同時に、またヤンテが消えてしまうとも考えられるのです。それに、マールの言う使命とやらがあるのなら、果たすと同時に元の世界に戻っているはずです」


ジルにわずかな期待を打ち砕かれ、万里子はがっくりとうなだれました。


「そうですよね…小説でもそうでした。帰れるか、そこで平和に暮らしてメデタシメデタシとなってました…」


「やはり帰りたいですか?ここで…そのメデタシメデタシとはいきませんか?」


「帰り……たいです。あの!ここで皆さんのとてもよくしてもらってるんですけど、皆さんの事…とっても大切なんですけど…でも、家族に…会い、たいです」


「私達を家族のように思って、甘えてくださっていいんですよ?私にとって、もうあなたは何者にも変えがたい…かけがえの無い人なんです……」


ジルの熱い想いを込めた言葉は、女性なら誰しも頬を赤く染めたことでしょう。

しかし、恋愛感情に疎い万里子はまたもスルーしてしまいました。

それどころか……


「ジルさんには本当に感謝しているんです。危なっかしい私をいつも助けてくれて、ジルさんが近くに居るってだけで、すごく安心するし………あの、私のパパみたい!」


「は、パパ?とは?」


不思議そうに首を傾げるジルは、次の瞬間カチン!と固まりました。


「お父さんの事です。あ!勿論ジルさんの方が若くてカッコイイですよ?」


万里子の少しのフォローも、見事に固まったジルの耳には入りませんでした。

いえ、たとえ聞こえていたとしても、何の慰めにもならなかったに違いありません。

突然固まったジルに気付いた万里子は、原因が分からずに慌てだしました。

そしてそれは、シアナが二人を迎えに来るまで続いたのです。


みじか!

すみません。うまく話を切れませんでして(汗)

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