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1.サトウマリコが呼ばれた日

突然思いついて書いてみました。


逆ハーを目指します。

いずれは・・そうなるかと・・・。多分。

日本の、とある街に、佐藤万里子という、日本人としては

ありふれた名前の女子高生がおりました。


彼女は、名前同様、とても平凡な容姿で中肉中背、成績は中の中。

クセのある頑固な真っ黒な髪は、染める事も諦める程で、顔立ちも・・・悪くは

無いのですが、これといって印象に残るものではありませんでした。

家から30分以内で着く高校5校の内の、3番目の偏差値の学校に通う、

佐藤家の3兄弟の真ん中の子でした。


そんな彼女の1つ上の兄のは、この辺りでは超進学校と言われる学校に通う秀才で、

1つ下の妹は、万里子の高校よりも少し偏差値は低い学校に通っておりましたが、

万里子とは違い、柔らかい栗色の髪が美しく、目鼻立ちが整って小顔の妹は

高校のミスコンに1年生にして選ばれる程の容姿の持ち主でした。


そんな兄弟を持つ万里子です。

努力しても、誰の目にも留まらず、いつも手柄は兄弟の物。

ちょっと卑屈な性格になってしまったのは仕方がありません。

それでも、兄弟仲がとても良かったので、そんなに捻くれずに、かえって常に

脇役という気楽さが居心地良く感じておりました。




とある日曜日の事。


隣の市にある父の実家に、法事の為一家で訪れる事になりました。

この家にすむ伯母の名前もまり子といい、同じ名前だった為、特に万里子は

可愛がってもらっておりました。

伯母のまり子は売れないファンタジー小説家。万里子は、まり子の1番のファンで、

特に異世界トリップ物が大好きでしたので、伯母に会える事はとても楽しみに

していたのです。



伯母の家には、父の他の兄弟も集まり、それぞれが子供を連れて来ていたので、

リビングダイニングはすぐにいっぱいになりました。



そんな時です。



万里子は、足元がふわっとした気がしました。

キッチンに立っているはずなのに、床の感触を感じられないのです。


眩暈?そう思った万里子は、思わず隣に居た伯母の手をとります。



次の瞬間。




朝のラッシュもびっくりな、ぎゅうぎゅう詰めの中におりました。




先ほどまで感じていたフローリングの感触は無く、ひんやりと石の冷たさを感じます。


先ほどまで、一緒にキッチンの手伝いをしていた妹を探しますが、見当たりません。

見知った親戚の顔も無く、見知らぬ女性ばかりでした。

ふと、眩暈を感じた瞬間に伯母の手を取った事を思い出し、未だ握り締めている

手の先に、視線を移します。


そこには、先ほどまでの自分と同じようにキョロキョロと辺りを窺っている、

伯母のまり子がおりました。


「伯母さん、ここ、どこ?」


不安げに伯母に尋ねますが、不安が伝染したのか、他の女性達も一斉に「何?」

「ここはどこ?」「どうしてこんな所に?」と騒ぎ出しました。

聞こえてくるその声は、子供のような声もあれば、老女のような、しがわれた声もありました。


高校生としての平均身長の158cmの万里子は、少し埋もれ気味で周りの状況が

よく分かりません。

万里子よりもだいぶ長身のまり子は、

「女性ばかりだわ。部屋の周りに、不思議な服を着た人達が居る。大体が・・・男性ね」

と、万里子の質問に応えるでもなく、目にしたものをそのまま言いました。


「なんだか・・服装からしてファンタジーっぽいわ!もしかしたらこれは、

私達、『召還』されたんじゃないかしら?」


ファンタジー小説家のまり子は、好奇心に目を輝かせています。


その時です。


「これは・・・どういう事だ?」


とても柔らかい印象の声が響き渡りました。声の印象は優しいのですが、言葉は鋭く、咎めるような

口調でした。


その後に、老人の声が響きます。


「予言の通りに、姫を迎えるべく儀式を行ったのですが・・・」


老人の声は、とても困っていました。


予言?儀式?姫?


日常では聞かない言葉が出てきて、万里子は伯母の発言も的外れではないかも

しれない・・と不安が増しました。

それでも冷静でいられるのは、隣の伯母の存在でした。

周りの女性は、知り合いも居ないようで、騒ぎはどんどん大きくなります。


「予言通り、サトウマリコなる姫を呼んだのです」


万里子はちょっと、呆れました。

日本に、一体何人のサトウマリコが居ると思っているのだろう。

いや、海外にだって沢山居るだろう。それ程にありふれた名だ。

この人達は、その事を知らないのだろうか。

ピンポイントで、その姫と言う人だけを呼べば良いものを、どうやら名前だけを頼りに

儀式を行ったため沢山の『サトウマリコ』が呼ばれてしまったようでした。


そうか・・・だから伯母さんも・・・そう思って伯母を見たのですが


「何言ってるのかしら。やっぱり異世界って言葉が違うのねぇ。惜しいわ」


え?


万里子は驚きました。どうやら、伯母のまり子は彼らの会話が理解できなかったようなのです。


「1人だ。姫は、1人だけなのだぞ!こんな・・167人も居ては、わからないではないか!」


今度は野太い声が、慌てたように言いました。


どうやら、サトウマリコという名の人間は、地球上に167名いるらしい。


現実逃避のため、万里子はそんな事を考えていました。


自分が、言葉を理解できるのは何かの間違いだ。姫以外は帰してくれるはず。

伯母と一緒に、伯母の家に帰るのだ。そう信じていたからです。


「条件を絞りましょう・・」


そう老人は言うと、今度は万里子にも理解できない位、つぶやくような声で何やら

言葉を紡ぎ始めました。


「ちょっと!何やら儀式めいたものが始まったわ!」


小説のネタになるとでも思ったのでしょうか。伯母の目がキラキラして、その老人に

見入っています。

やはり、言葉が理解できていないのだ・・・


「きっと、呼びたい人以外は帰してくれるのよ」


そう言うと、


「そうよね、こんなに沢山彼らも求めていなかったわよね。

よし、じゃあ万里ちゃん、どちらかが残ってしまったら、帰った方が親族に説明する事。良い?」


「え?一緒に帰ろうよ・・」


何を言うのだ。この伯母は。いくら貴重な体験でも、帰らなかったら小説に

書けないのだ。

さすがに呆れたが、次の瞬間・・・


「あっ、杖を振り上げたわ!」


自分の頭の上から、実況中継をする伯母。


タン!


音が響いたと思ったその瞬間、



・・・・・・・・・伯母は、視界から消えていた。



あんなにぎゅうぎゅうだった部屋に、今は自分だけ・・・・・



いや、離れたところに、同じ年頃の女の子がもう1人。




残されたのは、たったの2人だけだったのです。


読んでいただき、ありがとうございます。

のんびり更新していくつもりです。

今度も読んでいただければ嬉しいです!

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