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春夏秋冬―移ろう心―  作者: 天満月 六花


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春の終わり―決断―


 あの冬の日の出会いから、俺は彼女をよく見かけるようになった。大人しくてクラスの中心で立ち振る舞うような子ではなかったが、俺の目は目立ちにくい彼女ばかりを捉えるようになっていた。

 いつも友達と楽しそうに笑っている彼女は、あの日俺に見せた優しい笑顔を思い起こさせた。見ていると、彼女の様々な表情が見える。友達の話が余程面白かったのか堪え切れずに声を出して笑っている表情、いたずらをされたのか少し膨れっ面な表情、落ち込んだ友達を慰める時の慈愛に満ちた表情……。

 その様々な表情を俺にも見せてくれたらいいと、ぼんやりと思っていた時だった。


 今までに見たこともない、悲しくて切なくて……誰かに一途な想いを伝えているような……見ているこっちが痛くなる表情を見たのは。

 その視線の先に居たのは、俺の隣にいた相模だった。その時相模の隣にいた俺は、彼女の瞳に映る事はなかった。


 彼女の視線の先にいたのが相模で、確かにショックだった。俺を目の端に入れもしない彼女に腹が立った。

 それなのに彼女の相模を思う表情が、今まで見てきた彼女の表情の中で一番綺麗だと、そう思った。

 心の奥で何かが壊れるような感覚がした。

 いつしか彼女の目の先にいるのが俺ならいいのにと思い始めた。相模を見ているあの瞳で、俺を見て欲しいと。


 気づいたら好きになっていた。きっかけは冬の日の笑顔で。

 相模を想っている彼女にだんだんと惹かれていった。


 二年になって同じクラスになった時、初めて間近で見たんだ。

 相模を想い、相模だけをその瞳に映す彼女の姿を。俺を見もしない、彼女の姿を。


 耐えられなかった。辛くて堪らなくなった。

 彼女はずっと、俺の隣にいる相模を見ていて。俺は相模の隣で相模を見ている彼女をずっと見て。

 報われる事のない想いが、淀みとなって俺の心に溜まっていく。心が全て暗く染まってしまいそうな程に、俺の心は日に日に沈んでいった。

 だから、俺は彼女にとって最低な決断をした。彼女を深く傷つけると知っていたのに、俺は選んだ。


 相模に協力してもらうと、決めた。


 それは、美しく咲き誇っていた桜が散りきった、春が終わった日の事。


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