夏の終わり―告白―
――最近君を見て思う。もう自由にしないと駄目だって――
「ずっと好きでした。俺と付き合ってください。」
緑が生い茂り、それによって神秘的な雰囲気を醸し出す校舎裏。
陽が沈む時間が近いというのにまだ暑さを残す日差しの中で俺――坂口 昴はこれまで溜めていた気持ちを吐き出した。
俺の言葉を聞く彼女――遠野 菫は、大きな瞳を驚いたように見開き、可愛い彼女の顔は苦しそうに、悲しそうに歪められている。
その表情が見えたのは一瞬で、すぐに彼女は顔を伏せた。
俯いたことで、暗めの茶色で肩程まである髪が彼女の顔にかかり、少し長い、いつもは左に流している前髪が下りて彼女の表情を隠す。
そんな彼女の小柄な体は、いつも以上に小さく見えた。
少し顔を上げ、俺の後ろを縋るような瞳で見る。俺の後ろには、『もう』誰もいない。
そんな彼女の仕草一つ一つがどんな気持ちから作られているものか、俺は知っている。
「……よろしく、お願いします……」
そう表情が見えないまま呟いた彼女の言葉に、鈍い痛みが嬉しさに伴って心に響いた。
それは、夏の終わりが近づいていたのに心まで焼けてしまいそうな程暑い日の事。