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猫又異国探検記  作者: 八又音子
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第1話

初投稿です!誤字脱字などあれば報告お願いします!

 私は猫である。名前は雨。好きなことは、日向ぼっこと食べることだ。

 

私はニホンという国で生まれ、心優しいニンゲンに拾われた。名前の由来は単純で、雨の日に私を拾ったからである。


 そんな私はあまり体が強くなく、優しいニンゲンに見守られながら、病で寿命よりだいぶ早くポックリ逝ったのだ。


 しかし目が覚めてみると、全く見覚えのない場所に立っていたのである。


 私は困惑していた。これがニンゲン達の言う天国なのであろうか。


 何はともあれ今の私はどこも痛くない。ならばここを歩いててみるのも有りだろう。そうして私は、日本とはまた違ったニンゲンの街を探検することにした。



 薄暗い道を歩いていると、ふとガラスが目に入った。そういえば今の私はどのような見た目をしているのだろうか。


 気になった私は少し駆け足でガラスに近づいた。


 私は鏡やガラスに写っている猫が自分自身だと理解している。鏡に写っている自分を違う誰かと勘違いするようなお馬鹿さんではないのだ。


 なので今、ガラスに写っている猫が私だということは理解している。しかし誰が自分の尻尾が増えていると思うだろうか!


 最初はよかった。顔の形も目の色も毛色も何も変わっていないことに満足し、そっと息を吐くまでは。


 その後、もしかしたら気づいていない変化があるかも知れない、ともう一度顔をあげてふと目に入ったのは、ゆらゆらと揺れる2本の尻尾。


 私は驚き、ただガラスの自分を見つめていた。本当に驚くと声が出ないのは、猫も同じなのである。


 どれくらい時間が経っただろうか。ふと我に返った私はとりあえず尻尾を1本にしようと考えた。


 なんせ、世の中に2本の尻尾を持った猫は存在しない。そんな中で私が歩いてみろ。好奇心旺盛なニンゲンは私をどうするかわかったもんじゃない。


 ひとまず探検は後にして、ガラスを目の前に思いついたことをひたすら試していくことにした。


 幸いなことに人が居ないので、ニンゲンには見せられないような顔をしながら、ひたすらいろんなことをした。


 そもそも猫はニンゲンよりはるかに弱い存在だ。なのでニンゲンには擦り寄っていかなければならない。プライド? そんなもの私にはない。それに世渡り上手な猫は猫生を楽しく、快適に過ごせるのだ。


 だからこんな姿をした私を見たらきっと美味しいゴハンをもらえないだろう? この考えを頭の中で、昔よく会話をしていた野良のクロに言ったら、流石だなと呆れられた気がした。



 それから思いつく限りいろいろやってみたが、一向に尻尾が減ることはなかった。眠くなった私は、とりあえず目を瞑り、次に目が覚めた時に尻尾が無くなっていますようにと願った。



 意識が浮上する。少しぼーっとして意識を覚醒させてから、改めて自分の姿を確認してみる。するとなんと! 尻尾が1本になっているではないか! やはり猫の中でも私は特別なのだ。エッヘン。


 目の前の課題が解決した途端に私のお腹は空腹を訴えてきた。そりゃあそうだ、昨日は丸一日何も口にしていなかったのだから。


 とりあえずニンゲンに会いに行こう。そしてゴハンを貰おう。私の猫生はほとんど飼い猫として過ごしたので、野良として自分で食料を獲る術など知らないのだ。それに万が一ここがとても強い猫のナワバリならば喧嘩は避けられない。私はか弱い猫なのだ。


 次の目標を決めたところで、今一度尻尾の本数を確認して、私は薄暗い道を飛び出した。



 何も考えずに飛び出した先に広がっていたのは、やはりニホンとは違う場所だった。建物だけでなく、歩いている人の服装や髪の色なんかがニホンとはまるで違っていた。


 ここがどこなのかも気になったが空腹には抗えない。私は自慢の嗅覚を頼りに、美味しそうな匂いのする方向へと足を進めた。


 てくてくと歩いていると、匂いに近づいていくほどにニンゲンが多くなっている。もしやこれがニンゲン言う観光地、と言うやつなのかもしれない。


 つくづく思う、景色なんて見て何がいいのか、と。そんなの見てもお腹なんて膨れないだろうに。やはりニンゲンは奇妙な生き物である。


 だんだんと増えていくニンゲン達に内心うげと顔を歪ませながらも歩いた先にあった美味しそうな匂い。それはひとつのカフェと呼ばれる場所だった。


 ちょうど私が通れるくらいの隙間があったのでお邪魔する。


 店の中は外とは違い、あまり人は多くなく、とても静かな場所だった。嫌いじゃない、これが私の感想だ。



 入ったはいいものの、次に何をしようかと考えていると、あるニンゲンが私の存在に気が付いた。その人はとても驚いた様子で、少し考えてから誰かを呼んだ。


 それから少しして、人の良さそうなニンゲンが出てきた。ソイツは私のことを見て、何か懐かしむように頭を撫でてきた。


 ソイツの撫で方は悪くなかった。人見知りである私が、ぐるぐると喉を鳴らしてしまうほどだ。まあ、撫で方は認めてやらんこともないだろう。



 少しの間撫で続けたニンゲンは、少し待っててと言い残し、店の奥に消えていった。


 割とすぐに戻ってきたその手には、何かが入った器を持っていた。どうやらミルクのようだ。


 私は喉が渇いていたのでロクな確認もせずに口をつけた。


 ある程度マシになるまで飲んでから、改めてニンゲンの顔を見る。飲み始めた時から視線がすごかったのだが、先に飲むことにしたのだ。喉の渇きには誰だって抗えないものだろう?



 ニンゲンは私の視線に気がついたのか、わざわざしゃがみ込み目線を合わせてくれた。


 これらの行動で私は確信した。このニンゲン達はいいニンゲンだ。


 飼い猫時代、野良達の話を聞く限りあまり良いニンゲンはいなかった。野良はあまり好かれていないらしい。私はあまり警戒せずにそっと見上げる。


 もう一度私を軽く撫でた後、人間は奥に引っ込んでいった。どうやら誰かと話しているらしい。どうせ何を言っているかなんてわからないが、一応耳を立てる。


「あの子、昔飼っていたシピ(わがまま娘)に似ていないかしら? 私たちのことも警戒していないみたいだし、拾ってあげるのはどう?」

「いや、でも、前にもう猫は飼わないって決めたじゃないか。僕は反対だよ」


 どうやら、私を拾うか否かを話しているらしい。ダメもとで聞き耳を立てたら、言葉が理解できるようになっていた。これも尻尾が2本になったからか? ちなみにシピという猫は知らない。私は雨なのだ。


 まだ会話は続いていたので、また聞き耳を立てる。


「でもここじゃ見かけない顔だわ。もし貴方が買い出しに行った時にあの子が死んでしまっているのを見たら? 外は危険だから、どんな不幸が起こるかわからない。短い人生なんだから、少しでも平和なところで過ごしてほしいと思うの。それにさっき確認したけど、性別もシピと同じみたい。これは運命だと思わない?」

「確かに……。わかった、ならまずは名前を決めよう。何かいい名前はあるかい?」

「なら、ミネット(猫ちゃん)はどう?」

「良い名前だね、なら早速彼女に挨拶をしに行こうか」


 決まったらしい。拾うことにしたようだ。



 これは私にとっても好都合だった。外で危険に怯えながら寝ることをしなくてもいいのはとても大きい。それにここがどこだかも全くわからないし。でもさっきの会話を聞いた感じ、ニホンではなさそうだ。


 私の目標は、あの時に拾ってくれた飼い主にもう一度会うことだ。しかし今いる場所が異国となるとこれは前途多難だ、とため息をつく。猫だってため息くらいつきたい時もあるんだ。



 私を拾うことにしたニンゲン達、ジャンヌとルイというらしい彼らは、私をそっと抱き抱え優しく微笑んだ。



 先ほどの恩もある。いつかは旅立つが今はここにいても良いだろう。この体でできることは少ないが、客寄せくらいはできるだろう。これが猫の恩返し、というやつだ。



 そして私は、よろしくとの意味を込めて一言泣いた。


「にゃう」

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