目標達成グラフ
目標達成グラフというのを、園川宏は買ってきた。自分の達成したい目標をグラフ用紙の枠に書くと、AIを搭載したグラフ用紙が具体的な指針を示してくれるのだ。
例えば十キロダイエットしたいと、枠に書きこむとする。するとグラフが、今の体重八十キロから七十キロに落とすには、今日はこうしなさい明日はこうしなさいと、具体的な運動や食事を指示してくれて、三ヶ月後には十キロのダイエットに成功するというものだ。もちろん指示を適切に聞いた場合である。
園川がどういう目的で買ったかというと、一流大学に合格したいからである。と言って彼の成績は、一流大学を目指せるほどのものではない。むしろ下位の方なので三流大学もどうかという学力である。
しかし園川は自分は、やればできる男だと自分を信じていた。よく漫画やドラマにあるような、劣等生でも努力すれば一流大学に合格できるという、そういうことが自分にもできると信じていた。
グラフ枠に一流のT大学に合格すると書いた。確率はゼロパーセントと出た。他の一流大学に変えても同じだった。AIが園川の能力を、察して判断したらしい。
三流大学なら三十パーセントの合格率があるから、そこを目指したらどうかとAIからのアドバイスがきた。園川はそれでは納得できなかった。一流大学の方が、仕事も結婚も世間体も何かと有利だという拘りがあったのだ。
頼む、魂を賭けるよともう一度グラフに書いてみた。AIも根負けしたのか、ハードなスケジュールを出してきた。
睡眠時間は一日二時間で、食事や風呂トイレの時も常に勉強しろというスケジュールだった。さすがに彼も唸ったが、グラフの指示ならこの通りやれば合格できるのだろうと頑張ることにした。
園川の身体はかなり悲鳴をあげていたが、学力は上がってきていた。ようし、一流大学の入試を受けるぞと意気込んでいた矢先、病に倒れ帰らぬ人となった。
園川の魂は抜け出て、田中三郎という男として生まれ変わった。田中は生まれつき知能指数が高かったので、大して苦労せず一流大学に合格できた。しかし何故か一流大学に入ることのみに、強い拘りを持っていたため入っただけで燃え尽きて中退してしまった。その後も不遇な人生を送った。