属性調査 その三
めちゃくちゃおひさな投稿です。待っててくれた皆様。ありがとうございます。一話〜八話まで大幅に改稿したので、最初にそっちを見てからこっちを見た方が「あれ?」とならずに済むかも。面白かったと思っていただければ、ブクマまたは評価、よろしくお願い致します(*^ω^*)
薄暗い講堂の中へと入れば、ガヤガヤとうるさくはないが、それなりに賑やかに話し声がそこかしこで聞こえてくる。
講堂の中央は何やら柵で囲んであり、生徒が間違って入ることがないよう教師達が数人そこにいた
「ほんじゃ、各自適当なところに自由に散らばってろー。始まる時はDクラスからクラス順で呼ばれるからなー」
気怠そうに欠伸をしながら、少女は入り口へと戻ろうと歩き
「どこに行くのです?ソフィア先生?」
どこから現れたか、紺色のシンプルなドレスを身に纏った女教師が少女ーーーソフィアの首根っこを掴んでいた
「うげ」
「一年担当の教師は全員講堂にいる手筈でしたよね?何故出て行こうとするのです?」
薄暗い空間でも分かるくらいの黒い笑顔を浮かべる教師に対し、ソフィアは悪びれもせずにへろっと答える
「いやぁ、こんだけ教師がいるし、そこに新参が一人いても何もする事ないかなーと思い」
「いいえ?やる事は沢山ありますよ。気力も体力も有り余っているソフィア先生には一番大変な、陣に魔力を注ぐお仕事をやってもらいましょうかねぇ」
「えっ」
「と言うわけでAクラスの皆様。少しこの教師をお借りしますね。もう少しで始まるので、呼ばれたらちゃんと来てくださいね。」
「あエミリー先生、私自分の仕事思い出したので今からそっちにーーー」
「そう言ってまたサボるのでしょう?逃しませんよ。」
「あ〜」
ズリズリとエミリーに引きずられ、ソフィアは人混みの中に消えていった
残されたAクラスの面々は、自由にしろと言われてもどうしろと・・・と言った感じで佇んでいた。
「・・・どうしましょ」
ボソリとクレアが呟く
「とりあえず、もう少し前に行きましょう。ここじゃあ呼ばれても聞こえないか、なかなか辿り着けないかのどっちかーーー」
「ああっ!クレア様がいらっしゃるわ!」
唐突に、黄色い歓声が上がる
「えっ!?クレア様ですって!?」
「あの『アルフィード戦記〜黎明の灯火〜』の主人公のモデルであるクレア様?!」
「幼少期に数々の改革を成し遂げた鬼才のクレア様!?」
「大輪の薔薇の如き美しさと噂されるクレア様!?」
誰か一人が気付けば、芋蔓式に歓声が飛び交う
あっと言う間に、クレアと横にいたアシェルとエレノアは、人だかりに流れに流されて見えなくなっていった
レオも他のAクラスの面々も、何となく向こうに散らばって行き、気付けばエマはポツネンとその場に佇んでいた
「・・・・」
キョロキョロと辺りを見回しても知り合いなど居るはずも無く、諦めたように溜息をついた後、近くの壁に寄りかかった
「賑やかだな・・・」
薄暗く人でごった返す講堂の中でも、友人との馬鹿話で笑い合ったり、ヒソヒソと秘密の話でもしているのか、ニンマリと企んでいる様な笑いをしていたり、教師陣が準備をしている姿をキラキラした目で眺めていたり、
戦場では見ることなど出来るはずもなかった光景に、遠い目をして耽る
(私は、学園でやっていけるのか・・・?)
一抹の不安が、エマの胸をよぎる
あまりにも離れている。
戦果を讃えて笑い合うこともあった。
だが、それ以外では皆、何処か影があった
戦友と呼べる者達ならいた。
だが、同じ趣味や世間話だけで笑い合えることは無かった
同じ釜の飯を食った同期もいた。
だが、翌日には爆発に巻き込まれて肉塊に変わった
戦場の殺伐とした空気なんて勿論ない。
日夜悲鳴や誰かの頭がひしゃげる音なんて、聞こえる筈がない。
「・・・居心地がいい・・・」
これが平和なのかと、ぼんやり思考する
それと同時に、えも言われぬ不安も込み上げる
私ここにいていいのか
私はこの平穏を甘んじて受け止めてもいいのか
私はーーー
「君は、あの輪の中には入らないのかい?」