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第九話「激突」

「【ハリケーン・サイクロン!】」


 先に動いたのはフィールだった。わたくしに向けて右手を突き出し、巨大な竜巻を召喚した。


「【グラウンド・ウォール!】」


 対してわたくしは地面から巨大な土の壁を出す。


 フィールの放った風の魔法がアルティの土の壁にぶつかり、衝撃が広がった。土の壁は風を弾き返し、嵐の勢いを一時的に封じ込める。


 わたくしは息を整え、次なる行動を考えた。フィールの力は想像以上に強大であり、彼女との戦いは容易ではないことを痛感している。しかし、決して諦めるつもりはない。彼女を倒さなければ、被害がこれ以上に広がってしまうことが容易に理解できるだからだ。


 わたくしは自分の使える魔法を考える。フィールの魔力属性から風魔法が得意ということが理解できるため、土の魔法を使って攻撃することが有効だろう。アルティは右手を突き出し、土の上級攻撃魔法を放つ。


「【グラウンド・ダッシャー!】」


 わたくしの地面から巨大な岩の棘が次々と突き出し、それがフィールへと向かっていく。フィールはその場で軽やかに身をかわし、攻撃を仕掛けてきた。


「【ウィンド・カッター!】」


 フィールの手から風の刃が放たれ、わたくしへと向かって飛んでくる。しかし、慌てることなく避けて反撃した。


「【ストーン・シャワー!】」


 わたくしの手から複数の石のつぶてが放たれ、フィールに向かって飛んでいく。彼女は風の壁を作って礫を防いだが、わたくしはそれを予想していた。わたくしはすかさず別の魔法を唱える。


「【グラウンド・チェーン!】」


 わたくしの地面から岩の鎖が飛び出し、フィールに向かって飛んでいく。予想外の攻撃に反応が遅れたのか、彼女は岩の鎖により、体が縛られる。


「しまっ――」

「油断したわね!」


 身動きが取れなくなった彼女に、わたくしはトドメの一撃を食らわせようとしたその時――


「かかりましたわね」


 不意にフィールは不敵な笑みを浮かべ、魔法を唱えた。



「【ヴェノム・サイクロン】」



 * * *



「なっ!?」


 彼女の地面から紫電色の魔法陣が描かれる。これは実験書に記されていた魔法陣だ。


 その魔法陣の中心から激しい風が吹き始め、その中心にフィールが浮かび上がる。彼女の身体からは紫色の毒気が放たれ、サイクロンと共に螺旋状に広がっていく。


「【ヴェノム・サイクロン】は私の最後の切り札よ。これで形勢逆転ね」


 フィールの声が響き渡る中、わたくしは困惑しながらも懸命に立ち向かう方法を考えた。毒気が充満するサイクロンは非常に危険であり、触れてしまえば解毒方法の無い猛毒に侵されてしまう。それだけは避けなければならない。


 わたくしは自分の魔法の知識と直感に頼りながら、次なる行動を選択する。


「【アクア・バリア!】」


 周囲に水のバリアを展開し、毒気から身を守る。完全には守れないが、時間稼ぎにはなった。これで落ち着きを取り戻し、フィールとの戦いを続ける決意を固める。


「フィール、私は諦めないわ!」


 声がサイクロンの中に響き渡る。わたくしは集中力を高め、次なる魔法を思い描く。


「【アース・エレメント!】」


 手のひらから緑色のエネルギーが放たれ、地面に根を張るように広がっていく。その力によって周囲の土や岩が操られ、巨大な土の腕がフィールに向かって揺れ動いた。


 フィールは身をよじりながら巧みに土の腕を避けていくが、その機会を逃さずにわたくしは次なる攻撃に移る。


「【ストーン・プレッシャー!】」


 手から強力な衝撃波が放たれ、地面が揺れ動く。フィールはバランスを崩して一瞬の隙が生まれた。


「今だ!」


 わたくしは迅速に魔法の言葉を唱え、地面から突如として巨大な岩の柱がフィールを包み込むように現れる。


「【ストーン・プリズン!】」


 柱がフィールを締め付け、彼女の身動きを完全に封じ込めた。しかし、そのままでいるわけにはいかない。もうジーニアスや村人たちが毒に侵されてから時間がかなり経っている。早く解毒方法を聞きださなければ死んでしまう。


「フィール、これで終わりよ! 死にたくなかったら解毒法を教えなさい!」


 手を前に突き出し、いつでも魔法を放てるように詠唱をしながら解毒方法を訊きだす。魔法を作った彼女なら治し方は分からないにせよ、心当たりくらいならあるはずだ。


「あなたって本当に甘いわね。こうやってわざと引っかかれば近づいてくるってわかってたわ」

「なんですって?」


 わたくしは驚きを隠せなかった。いつの間に誘導されたのか、わたくしの足元にはジーニアスが引っかかったのと同じ罠の魔法陣が敷かれていた。


「しまっ――」




 魔法陣から【ヴェノム・サイクロン】と同じ毒の風が舞い上がり、わたくしの体を包み込んだ。不意を突かれせいで、その風をもろに吸い込んでしまう。



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