第十一話「消えたフィール」
「何これ!? 地震!?」
地面が揺れ、大きな岩が崩れ落ちる音が響き渡る。島全体が激しく揺れ動いているようだ。
「これは、島が沈んでいく前兆よ」
フィールの言葉にわたくしは驚きを隠せなかった。このままではわたくしたちは島ごと沈んでしまうのか?
「どうして!? いったい何が起こっているというの!?」
「それは答えられないわ。ただ、何かしらこの島の秘密に関連していることかもね」
この島の秘密だって!? いったい地震と何の関係が……ってそれよりも――
「ジーニアス!」
わたくしはフィールを置いて一心不乱に走り出す。毒に侵された彼がこの地震から逃げられるわけがない。もし家屋の下敷きになってしまったら、自力で脱出は不可能だろう。命だって危ない。
わたくしは不気味な笑みを浮かべるフィールを置いて、ジーニアスの元へ走った。
* * *
「ジーニアス!」
ベルセウス王の城に駆け込み、彼の眠っている部屋の扉を乱暴に開ける。地震により、家財道具などが散乱しているが、城は無事だった。城とは呼べない一軒家だが、作りは頑丈だったようだ。
「アル……ティ……」
顔色が青くなり、息も絶え絶えのジーニアス。でも生きている。間に合ったというべきか、今ならまだ魔法で回復できる状態だった。
「ジーニアス! 今すぐ治療するからね!」
すぐさま覚えたての解毒魔法を使用して彼を治療する。即効性のある魔法なのですぐに効果があった。
ジーニアスは目を覚まし、すぐに起き上がる。彼の顔色も戻り、息も落ち着いているようだった。
「アルティ、ありがとう。助かったよ」
ジーニアスは感謝の言葉を口にし、アルティを強く抱きしめた。
「ちょっ、ちょっとジーニアス……」
突然抱きしめられたので、心臓が大きく跳ね上がる。喜びの表現のために抱き着いてきたのは分かるが、いきなりは止めて欲しい。
「村人たちは?」
熱い抱擁からすぐに解放され、ジーニアスは言葉を続けた。ちょっとガッカリしたのは内緒だ。
「みんな無事ですよ。ここに来るまでに治療しましたので」
「そうか、よかった~」
緊張が解けたのか、そのままベッドに倒れ込む彼。自分も苦しんでいたというのに村人の心配とは、やっぱり優しい人なんだな。
「それにしても、さっきの地震は何だったんだ?」
ベッドに横になったまま、ジーニアスが疑問を投げかける。
「それがわかりませんの。この島の秘密に関連していることかもねって、フィールが言ってましたけど」
わたくしは、フィールが説明したことをジーニアスに伝えた。
「秘密って、何だろう? この島にそんな話あったかな?」
ジーニアスは興味津々の様子だ。
「それがわかればいいんですけど……」
ジーニアスの言葉に、私は考え込んでしまった。確かに、この島には何か特別な秘密が隠されているのかもしれない。しかし、私たちはその秘密を知る手がかりを持っていない。
「ジーニアス、私たちがこの島の秘密を解き明かすには、情報が必要だと思うわ。今はそんなことよりもフィールよ」
「フィール? 始末したんじゃないのか?」
わたくしはジーニアスに、殺しはせず、拘束して東の森に置いてきたことを伝えた。
「なるほど。奴が何か情報を持っている可能性があるんだな。そこに案内してくれないか?」
「ええ、分かったわ。ついてきて」
ジーニアスを連れて東の森へと向かった。
* * *
ジーニアスと私は東の森へと足を進めた。フィールがこの島の秘密について何か知っている可能性が高いと感じたからだ。
森の中は静かで、木々のざわめきが響いている。進むにつれて不気味な雰囲気が漂ってくるが、ジーニアスと共に足を運ぶ。
しばらく歩いた後、フィールを拘束した場所に到着した。しかし、そこに彼女の姿が無かった。
「フィール!?」
彼女の名前を呼んで周囲を探すが、見当たらない。
「逃げたのか?」
少し不安になりながら周囲を注意深く探索すると、地面についた足跡が目に入った。足の大きさからして女性の物だ。
「きっとこの足跡はフィールのだわ! 追いかけてみましょう!」
急いでフィールの足跡を辿りながら進む。途中、森の奥深くまで足を運ぶが、フィールの姿は見えなかった。
「あの女、なかなか手ごわいな」
「彼女は何か重要なことを知っているのかもしれません」
「その可能性は高いな」
ジーニアスも同意し、探索を続ける。すると、遠くから不気味な声が聞こえてきたのでその方向へと足を向けて走った。
声の元に辿り着くと、そこには崖に背を向けたフィールが立っていた。彼女は不気味な笑みを浮かべ、何かを囁いている。
「フィール!」
わたくしが声をかけると、彼女は笑みを深めた。




