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第1話 違和感だらけの世界に生まれて

割と短めで完結します。

 青空の下、初夏の清々しい風が吹いている。


「フフ…今日もいい天気ね。外でランチをするには絶好の日和だわ」


 ここは広大な緑の敷地に覆われた学園、王立アカデミー『フローレンス』の敷地内。

この学園に通う私は校舎の裏手にある小高い丘の上を目指して歩いていた。


右手には自宅から持参してきたバスケットが揺れている。


私の様に自宅からランチを持参し、尚且つ外で1人食事をするような生徒は恐らく誰もいないだろう。

何しろ、この学園は子息令嬢だけが通うことのできる名門校なのだから。



 けれど私はこの学園…いや、今の自分が置かれている環境に生を受けて18年も経ちながら、未だに馴染めずにいた―。



****


 私、アリーナ・バロー(18歳)はバロー伯爵家の長女としてこの世に誕生し…驚くべきことに、生まれた時から言葉を理解し、周囲の者達を驚かせた。


「素晴らしい!この子はきっと天才に違いないっ!私たちの言葉をもう理解しているなんて!絵本とおもちゃどちらが良いと差し出せば、迷わず絵本を指さしたのだぞ?!」


「まぁ、あなたったら…でも、長男のカイゼルに比べると本当に育てやすい子だわ。おむつが濡れても泣くことなんてないのよ?濡れているときは自分でおむつを指さして教えてくれるし、1人にしておいても全然平気でいられるのだから」


お父様とお母様は大喜びしているけれども、絵本とおもちゃなら断然に絵本の方が良いに決まっている。

それにおむつが濡れているからって、見境なく泣くなんて恥ずかしい真似が出来るはずがない。何しろ自分で自由に動けるのなら自分で交換したいくらいなのだ。


1人にしておいても全然平気?

いえ、むしろ一人にして下さい。赤ちゃん言葉とおもちゃで構われても私はちっとも嬉しくない。


それよりも早く母乳とおむつから解放されたい…。



と言うわけで、私は生まれて僅か10カ月と言う異例の早さでおむつを外すことが出来た。




また、離乳食ではこんなこともあった。


それは私が生後5か月になった頃の出来事だった。


「は~い、初めての離乳食ですよ~」


母が父と共に、初めての離乳食を持って部屋を訪れた時のことだった。


その時私はあまりにも退屈だった為に、天井からぶら下げられたシャンデリアの蝋燭の数を数えていた。


「は〜い、アリーナちゃん。初めてのお食事ですよ〜」


母が満面の笑みを浮かべて私の口元にスプーンを持ってきたのだが…。


「アイテ(貸して)」


母が手にしていたスプーンを握りしめると、自ら口に運んだのだ。


「キャアッ!」


驚いた母が手を離したすきに、スプーンを奪って私は自らテーブルの上に置かれたお皿から離乳食をすくって一心不乱に食べ始めた。


「ンマッンマッ!(美味しい、美味しい!)」


「「…」」


流石にそれらの行為は、父と母をドン引きさせてしまったのは言うまでも無かった。


こんな調子で私は周囲の人たちが驚くほどの早さで、天才?ぶりを発揮していった。

しかし…私がとったこれらの行動には全て意味があった。

それは誰かにいちいち世話を焼いてもらうのがいやだったからであり、出来ればこの違和感しか感じない世界で、出来るだけ1人になりたかったからだ。



そして、私のそんな努力?が実を結んだのか…5歳になる頃には完全に私は周囲から孤立していたのだった―。


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