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439.一日目が終わって、二日目に





「――それじゃ、報告会を始めようか」


「実力」代表ベイルと、同派閥オレアモ。

「合理」のカシス。

 そしてクノン。


 二級クラス育成計画。

 その一日目が終わった翌日。


「実力の派閥」の拠点である古城前に、四人が集まっていた。


 まだ午前中だ。

 午後になったら、育成計画二日目となる。


「ベイル先輩」


 と、クノンは挙手した。


「まず正式名称を決めませんか?

 レポートを書く時、四人共通のタイトルにすると整理しやすいでしょう?


 ちなみに僕の中では、暫定で育成計画って呼んでるんですけど」


 二級の生徒に魔術を教える。

 そんなの、四人とも初めてのことだ。


 こうして報告会をする理由も。

 初めての試みだから、だ。


 情報を共有するためである。


 ならば、やはりレポートを書くのがいいだろう。


 これも貴重な記録になる、かもしれないから。


「賛成だ」


 と、オレアモが頷く。


「私は家庭教師みたいなもの、と思っていた」


 家庭教師みたいなもの。

 まあ、確かにその通りである。


 でも厳密には家庭教師ではないから、正確とは言い難い。


「二級クラス育成計画でいいんじゃない? 字面でなんとなく内容がわかるし」


 カシスがそう言うと、オレアモも「そうだな」と頷く。


「じゃあそれでいいか」


 反対票なしということで、ベイルが宣言した。


 二級クラス育成計画。

 これから一週間弱に及ぶクノンらの活動は、そういうものである。


「じゃあ話を進めるぞ。


 昨日、一日目は何をした?

 ざっとでいいから教えてくれ。


 名前も決まったし、詳細はレポートにまとめようぜ。うまくやりゃ単位になるかもしれねぇし」


 単位。

 ここにいる全員、今年度の単位は大丈夫……の、はずである。


 集めたのは「合理」代表ルルォメットである。

 彼は単位取得状況を加味して、このメンバーを揃えたのだ。


 来年提出すれば、来年度の単位になるのだろうか。


 ……まあ、その辺のことはいいか。





「一日目はやっぱりそんな感じか」


 奇しくも、四人とも似たり寄ったりだった。


 一日目は魔術の話をした、と。


 何の魔術が得意か。

 それで何ができるか。


 主にこの二つを中心に、話し込んだそうだ。


「考えることは一緒、ってことね」


 カシスは続ける。


「魔術戦って、手札をどう切るかだもんね。

 どんな手札を持っているか知らなきゃ教えようがないし」


 その通りである。


「カシス先輩、仲良くやってます? やれそうですか?」


 クノンは少し心配していた。


 カシスと、風属性の生徒三人。

 ファーストコンタクトの印象が、あまりよくなさそうだったから。


「フン」


 カシスは得意げな顔で言った。


「いい男の話とキライな奴の悪口ですっごい盛り上がっちゃった」


 ……まあ、気が合ったのならいいのだろう。


「まあ僕はそこまで心配してませんでしたけどね。

 普段は素っ気ないあなたは、本当は面倒見がいい人だから。なんだかんだ言ってもね」


「面倒見、ねぇ……」


「今日も素敵だしね。髪の輝きが天使の輪のようだ。神々しいね。見えないけど」


「素敵で天使で神々しい、ねぇ」


 ――紳士力の差だろうか。


 ルルォメットの時と違い、カシスの反応は鈍い。

 呆れていると言ってもいいかもしれない。


 クノンは強く思った。


 己の紳士力を磨く必要がある、と。


「ああ……それよりだ。

 君たちは魔術戦をちゃんと学んだことがあるのか?」


 オレアモは、カシスとクノンを交互に見る。


「独学ね」


「僕も独学ですね」


 カシスはわからないが。

 クノンは、師ゼオンリーとの魔術戦を繰り返して磨いてきた。


 彼は何も教えてくれなかった。

 あくまでも魔術戦だけをしてきた。


 まあ、「あれはダメ」「あの攻めはなんだよだせぇな」「意味のある魔術を使え」等々。

 胸に刺さるダメ出しはたくさんされたが。


 だから、自分なりに考えてやってきた。


 まさに独学である。


「独学か。それも気になるな。

 二人が魔術戦をどういう風に考えているのか、軽くでいいからレポートに書いてくれよ」


 と、ベイルが言った。


 まあ、それは構わないのだが。


「ベイル先輩とオレアモ先輩は?」


 クノンが問うと、オレアモは「二級クラスで」と答えた。


「私は二級の授業で学んだ。二級から特級に上がったんだ」


 そういうパターンもあるか、とクノンは思った。


 魔術戦の授業。

 かなり興味がある。


「俺も独学だな。まあ師匠とはよくやり合ったから、見ながら覚えた的なやつだな」


 なるほど。

 ベイルの師は、彼と同じ属性だったのだろう。


「……今日のところはこんなもんか」


 細かい部分、詳細は、レポートで書くことになるだろう。


 だから今はざっとでいい。


 この感じだと、育成にして行き詰まりはなさそうだし。


「たぶん明日からは濃い話が聞けるだろ。期待してるぜ」


 そう。

 一日目で、必要な情報は聞き出せた。


 そこから導き出した答え。

 個々の生徒に合わせた育成メニューを考えるのだ。


 つまり、魔術戦の本格的な訓練は、今日からになる。

 








 約束の時間、校門前でデュオと落ち合った。


「昨日は盛り上がったな」


「そうだね」


 昨日は遅くまで話し込んだ。


 アゼルの夕食の時間まで。


 これ以上はさすがに……ということで解散となったのだ。


 明日も学校だから。

 さすがに泊まるのはまずいだろう、と。


 クノンは徹夜してでも、と覚悟したのだが。


 話すことも、まだ尽きていないし。

 まだまだ話せることがあるし。


 ちなみに、アゼルは今日も先に帰った。

 客人、要するにクノンらを迎える準備をするから、と。


 一緒に帰ればいいのに。

 そう思わなくもないのだが。


 まあ、色々考えることがあるのだろう。

 王族だけに。


「なあ、アレの練習したんだけど」


「できた?」


「なんとなくできてる感じだな」


 やはり腕はいいんだな、とクノンは思った。


「『砲魚(ア・オルヴィ)』の中に氷を混ぜて威力を増す、か。

 ……特級ってヤバイこと考えるもんだなぁ」


 ――デュオは、「砲魚(ア・オルヴィ)」……放水の魔術が得意だそうだ。


 クノンが見た限り、確かに上手かった。


 曲げたり。

 何本も出したり。

 十本くらいなら同時に操作もできる。


 得意と言うだけのことはあった。


 ただ、現状の二級クラスでは、決定打に欠けるそうだ。


砲魚(ア・オルヴィ)」は初級魔術。

 水属性にとっては基礎の魔術となる。


 それだけに、相手が中級魔術を出すと、どうしても防がれるのだとか。


 防御の隙を掻い潜って当てる。

 そんな器用なことをして、序列上位に食い込んだらしいが。


 ここから先は器用なだけでは難しいかも。

 そう悩んでいた。


「放水の速度と、氷の鋭利な形。

 これらを調整すれば、服も人体も簡単に刺さるよ。


 デュオくらい上手ければとんでもない脅威になると思うよ」


 ――デュオに教えたのは氷線だ。


 クノンがジオエリオンと戦った時に放ったアレだ。


 あの勝負、デュオも観戦したらしいが。


 傍目にはよくわからなかったそうだ。


 どんな魔術をどう使っているのか。

 クノンも狂炎王子も、原型がない魔術を使っていたから。


 まあ、一度見たくらいでは、全てを看破するのは難しいだろう。


「でも氷入れると曲げづらいな」


「それは訓練次第だよ。僕も練習してできるようになったからね」


「そうか……頑張ろうかな」


 ぜひ頑張ってほしい。

 彼やアゼルがどれだけ伸びるかは、重要な研究データになるのだから。





 今日も屋敷の前で待っていた老執事に案内され、中へ。


 そして今日もテーブルが用意され。

 昼食が並べられていた。お菓子とか。肉とか。


 アゼルはまだ来ていない。


「――よろしければご自由にどうぞ。お茶を淹れますね」


 クノンらが座り、老執事がお茶の準備をして。


「……問題はアゼルだよなぁ」


 クノンは呟いた。


 実は、昨日からずっと悩んでいるのだ。


 デュオの育成方針は粗方決まった。

 だが、問題はアゼルである。


「やっぱり三ツ星ってすごいんだね」


「そうだな。羨ましいよな」


 同じ二ツ星同士だけに、デュオとはわかりあえる。


 だが、アゼルは三ツ星だ。

 魔術の才は別の話として、あの魔力量は憧れる。


 ――アゼルは、使える魔術が非常に多い。


 膨大な魔力があり。

 それゆえに、たくさんの訓練を行うことができる。


 何をどう使用するのか。

 手札が多いからこそ、迷ってしまう。


 まあ、嬉しい方の迷いだが。


 なんでもやりたい放題できる魔力がある。

 ならば、あれやこれや考えつくし、色々と試してみたくもなる。


 惜しむらくは、時間がないことだ。


 一週間では足りない。

 だからこそ、軸として使う魔術を一つか二つ選ぶ必要がある。


 そして、魔術戦で使えるようにするのだ。





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― 新着の感想 ―
どうせなら、"二級クラス育成計画(水魔法が最強!)"を入れちまえば良いのに!笑
沢山スキル合ったとしても、一点特化した使いやすいスキルを連打した方が楽だし強い事はよくある
時間や手間をかけて獲得した知識を他者に教えるのは、普通なら惜しんだり躊躇ったりしそうなもの。 なのにクノンやカシス達が最初から全くそんな素振り無く、むしろ育成への好奇心しかないような心境になれているの…
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