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「どう、したって……こんな、ことに……」
少年は目を見開き、恐怖の表情を浮かべていた。
彼女が軽く首を傾げ、さらりぱらりと髪が揺れる。
彼女の正面にふらふらと歩き出て、彼女の両肩に手を置く。
「一体……何があったんだ? どこのどいつがこんな酷いことを」
驚き、恐れ、憐れみ、怒りと、負の感情が入り乱れ、彼女を揺さぶると、肩より短くなった髪がさらりぱらりとまた揺れた。
「どこって……いつも行く美容院。で、いつもカットしてくれる美容師さん。お母さんに頼んだら矯正してもいいよってお金出してくれたから」
少年が腹の底から叫ぶ。
「美容師ぃー! 母親ぁー!!」
彼女は困惑していた。何故か少年が精神不安定になっている。しかも、母親に憤っている。今なだめておかなければ母親に危険が及ぶかもしれない。彼女は少年との対話を決意する。が、その前に、肩の骨と骨の間に少年の指がどんどん食い込んでくる。
「木村くん、あの、痛いから、肩の手を離してくれる?」
少年ははっとした。
いつも以上に彼女との距離が近く、また後ろではなく、彼女の目の前に立っている。
ぱちりと目が合った。木の実のようにまるっこくて大きな目。瞳の中にはちっちゃな光の粒がキラキラ散らばって、太陽を見たときみたいに眩しくて、ずっと見ていられなくなった少年は視線を下に向けた。
「木村くん? あの、手を……木村くん大丈夫? 熱ある?」
少年の顔が赤くなった。両耳まで真っ赤になった。
角度にして下方向に45度、少年の視線の先にあるもの、それは白いブラウスの布を被った、優しい丸みある2つの膨らみ。
とどめとばかりに彼女の手がおでこに触れた。桃か苺か林檎か、彼女のほわりとした息が少年の鼻や頬にかかり、緊張から呼吸のリズムが崩れ、彼女のふわり甘い香りを大きく吸い込んでしまう。
ぶつん、少年の意識が途絶えた。