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あっさり系
衝撃だった。
すぐ目の前を彼女が歩く。
ゆらゆら揺れる、しゅるるんと緩やかに、縦に巻かれた長い髪。
手を伸ばせば、指先が触れそうな、そんな距離。
幾重にも、ミルフィーユみたいに、デニッシュみたいに、ミルクレープみたいに、釣り竿のリールみたいに、繊細な髪がくるりと綺麗にまとまって層を成してうねり、振り子のように彼女の背中で行ったり来たりを繰り返す、美しき螺旋。
想像する。
伸ばした人差し指に、くるくると巻き付け、指を引く。
しゅるるんとほどけ、またくるくる指に巻き付け、また指をすっと引き抜き、しゅるるんと解けていく。
紐を通したコインで眠気を誘う暗示のように、はたまたピアノを弾く時のメトロノームのように、揺れ動く縦ロールをじっと、ただじっと見詰めた。
あの髪の毛に包まれたなら。
あの髪の毛に巻かれたなら。
そんな妄想を、布団にくるまり日々繰り返す。
だからこそ、衝撃だった。
「お前、髪はどうした!」
「縮毛矯正」
ここで読み終わればあっさり系で。
最後まで読むとやや濃いめに。