「あー、味方さん右から来てると思うわ。私グリーンだからちょっと周り見させて貰うねぇ。」
カチカチとキーボードを押しながら画面をくまなく見ていく。
「右に2枚…多分グリーンと、あれはシルバーかな?あそこに居るよ‥っと。」
カチリとマウスをクリックして標的の印を味方に伝えていく。
今彼女がやっているゲームは、【colour(CL)】と呼ばれる、世界中で人気のFPSである。
このゲームは1チーム3人でチームを組み、colourの文字通り、色の名前が当てられたキャラクターを自身で操作しながら敵を倒していく、オンラインバトルロイヤルゲームであり、このゲームの面白さは、キャラクターによっても戦闘能力が違ったり、武器や地形を把握し、それらを駆使しながら自分のチームを1位にすることであるーーーーと言われている。
「ほい、1枚落とした。2枚目50くらい入ってる。」
カチャカチャと鳴る音と共に、画面上では彼女の操作するキャラクターが敵にダメージを入れていく。
程なくして、《You are champions!!》と言う文字が画面に表示される。
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[090:キタァー!!!]
[105:ナイス!]
[121:ないすぅ]
[159:さすがAi]
[194:ナイチャン!]
[243:上手すぎ]
[341:強すぎて笑える]
...
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「ふー、良かった。勝てたね。グッドゲーム!」
マウスとキーボードから手を離し、パチパチと拍手をする。
モニターには彼女に対する称賛のコメントが流れている。
「いやー、良かったね。途中ちょっと危なかったけど。味方さんもナイスだったよね?」
先程持って来た麦茶のパックを手に取り、ストローでぷつりと穴を開ける。
少しぬるくなった麦茶を啜ると、ずっと話していたせいで渇いた喉をじんわりと潤すのが分かる。
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[548:Aiに勝てる奴いるの?]
[611:今日RENとヨシ姉は?]
[645:ソロチャンさすがすぎ]
[722:Aiに打ち勝てるのヨシ子くらいだろ]
[731:今のはヨシ姉でも無理だろ]
[748:今日は3人でやらないんですか?]
[756:Aiさん好きな食べ物なんですか]
[760:この前Aiと敵で当たってボコられた]
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「あー、今日は3人でやらないかな。明日の夜やる予定。好きな食べ物はプリン。」
カチリ、ともう一度ゲームをスタートさせる。
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[843:明日の夜!?]
[912:最高の週末]
[932:楽しみすぎるー!!]
[941:プリン好きなの?]
[943:RENに電話しよ]
[964:プリン食べたくなった]
[981:今度プリン送るわ]
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「RENに電話は無理だな、寝てるよ多分。おっ!プリン送る時は事務所に頼むよ!最高の差し入れだー!あ、loversのAi宛って書いてね。じゃないと誰か食べるからさ。」
コメントにクスクス笑いながら対応していく彼女の名前は、愛香。
Aiと呼ばれる彼女は日本のプロゲームチーム、loversの一員で、プロゲーマーである。