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帝国の衰退

四章も様々な人物が登場します。

混乱しない様に頑張ります!

 

 「くそっ!教皇め!忌々しい!」


 これが彼の最後の言葉である。


 皇帝ベルヘルム二世はプラハだけでなくウィーンまで奪われる事になった。これは帝国の弱体を知らせになり、東小三国を見捨てた事により周辺諸国に反感をもたらす。


 ただでさえ飢饉で食料状態が悪い中、昨年のフランク王国侵略失敗、植民地を失うと立て続けに事態は急変する。周辺諸国よりの貿易が止まる。理由は飢饉や不作などあれど、教会に狙われるのは困るのである。


 限られた食料の備蓄が減る中起こる事は。

急激な物価の上昇(インフレ)が各中都市圏で起こった。すると続き職務放棄(ストライキ)や店ヘの襲撃が頻繁する。特に飢饉の被害が酷い北部ブレーメンやリューベックを含めたハンザ同盟地区では、内戦が始まり出した。


 肝心のロンメル元帥はリンツより動けず国の動乱を指揮出来なかった問題もある。ウィーンに攻め倦ねるのは、この自国の混乱が秋に始まった事が大きい。


人は至極正直な生き物である。

通常なら厳しい冬に備え備蓄を行う時期に。

来週の食料すらもわからない。

食料はどんどん値が上がり手に入らない。

ならば冬に飢え死ぬしかない。


…農民もまた。生きる為に必死であるのだ。



残念な事だが、この数年で停滞していた皇帝の政治や戦略にも不満が出ていたのであった。何より植民地を失った事が大きい。


黒死病(ペスト)という疫病と。蝗害(こうがい)による飢饉。無駄になった春の侵攻。そして十字軍に植民地を奪われる。


黒い年(ニグルアンノス)の裁き受けたバイエルン帝国。

既に全盛期の勢いも兵も居なくなっていた。

 

会議で話される議題はやはり食料の確保と混乱している都市の安定化。そしてできる事なら植民地を作る事。

植民地にはなんといっても巨大な海軍力が不可欠であった。残念な事に。。帝国は海運力を求めるならば新兵器を作れと。この方針が今を招く。



―――そして思いがけない事が

竜玄歴1208年 二月に起こる―――



  首都ミュンヘンにて会議場が爆破された。


   一棟屋根が吹き飛ぶ威力である。


  犯行声明もなく、組織犯行の疑いが強いが。

   原因はわからなく闇に消えた。


(いわ)く北部キール軍港の水兵が反乱軍として爆破した。

曰くイルミナティが皇帝に裁きを与えた。

曰くハンザ同盟より以来でケルン魔術組合の権力回復に暗殺。

曰く東側キエフ大公国より工作員が暗殺を企んだと。


どれも正しくあり、間違えであると思う。

が、その爆破後大量の火薬が使用された断片が見つかり、魔術師の犯行は消えた。真実はわからない。


少なくとも皇帝ベルヘルム二世含めた多くの重臣が亡くなった。その中にはシュタウフェンベルク伯爵の名もあった。

帝国は古老宰相オットー・ビスマルクが引き継ぐ事になるが、皇帝の名を名乗る事はなかった。

帝国の衰退が始まり、以降五年間混乱を迎える。


 ミュンヘンにはまだ雪が残る頃。

二人の男が歩き南ヘ向かっていった。


「ア()フレッド、おめでとうと言うところか。さて次は何処に向かう?国に戻るのか?」


「いや東に向かいます。プラハ国へ」


「何かあるのか?」


(あるじ)がいると噂に聞きます。是非とも会いたいと」


「ほぅ。ストックホルムで会う前、何してたんだ?」


「執事です。ただの側仕えにすぎません」


「勿体ない生き方などするな。其方の知識はこれからだぞ?その主とやらは仕えるに足りるのか?」


「はい。命の恩人で・・大切な人のお子です」


「・・実験は続ける様に。私も一度見てみたいのでついて行く。まぁ気分転換のついでだ。ビールが旨いと聞くしな?」


「何から何まで助かります。アレッソ・リンドブラッド。美味しいビールを飲みに」


「あぁ。美味しいビールを飲みに」


 アルフレッドと名乗る男は中年で髭が長く。リンドブラッドはそれより若く髪が女性の様に長かった。

お互い白い白衣の上に防寒具を着けて深くフードを被る。見慣れないような油紙で包まれた鞄を腰にぶら下げ、チラチラと舞う雪に染まりながら。

二人並んで白い道を歩いて行く。


――ゆっくりと 新雪が足跡を消していった 


    爆破事件の翌日の事である



□□□


「「本当なのですか!トランポ様!」」


「えぇ。兄君はプラハの大聖堂で眠っておられます」


「あぁ。。無事であればよろしいのですが」

「私達の事を忘れていたと・・?」


「ハッハッハ。それはないでしょう。妹君が夜グズグズしてると話た時心配そうにしておりました」


「もう!グズグズなどしませぬ!」

「何歳の話です!泣きませぬ!」


「そうだったぶひ?」


「……時々ぶひぶひ言っておりますが。豚の精霊でしたか」

「おおそれは上手い事を。流石クリル♪」


「聖女様に言われ癖に。。うぅっ」


 久しぶりに笑顔で笑う双子は更に女性らしく成長していた。晩餐はリュフォーリルと共にしているが、会話らしきものはなく。

笑顔がこの所消えたと聞いていたが、今の話を聞くと頃大丈夫と思う。相変わらず自由が少ない王宮であるが致し方あるまい。


 トランポ公爵は十字軍と共に行動した事で罰せられると思ったが、特にお咎めはなかった。女王と対峙した際微妙な顔をされたが、十字軍の活躍を目の前で見ている、また黒死病(ペスト)の対応はこの国にとっても他人事ではない。

既にアメディア小国で発生していた。

敢えてシューリヘトの事やバートリ夫人は隠し、帝国側とブタペストなど都市の状態を報告をするに至る。


「・・ご苦労であった。トランポよ」


「はっ。リュフォーリル様もお変わりなく」


 何か口をだそうと葛藤する様子を見せるが・・会話はそれだけあった。考えても分からぬ。時期が来るのを待つとするか。


 そうして久しぶりに双子の様子を見に訪れての事だった。シューリヘトが無事とはいい難いが、消息がはっきりした事、救う機会がある事を伝えた。


「シュー兄がそんな事に巻き込まれていたなど…」

「トランポ様、アテネに来たなら教えてくだされば宜しいのに。。」


「兄君も考えての事。いずれ会う機会があるでしょう。それまで神国を守ってくだされ」


「はい。トランポ様も御自愛くださいぶひ♪」


「そうだぶひ?」


 二月同じくジェノヴァに向かう。レグナム神国は寒いだけだが、あの辺りはまだ雪が積もっている。暖かいフードを着け。大剣を背負いガレー船に乗り込む。


「ではシュー様を起こしに行こうか」


「はっ!私もできる限り。色々と助かりました」


「これはそなたのものであるぶひ?探しておいた。受け取れヴァシリキよ」


 双剣の一対を差し出されヴァシリキは感動した。貴族に繋がりの薄いトランポ公爵であるが、商人の繋がり強い。初めはプラハに残り警備をと進言したが、船の移動で方位の分かる『緑の風見鶏』の航海力は必要だ。倉庫街に一室用意し匿われていた。


「トランポ様。。この恩は必ず!」


 ヴァシリキは風の魔法も使い器用である。武器も選ばず十字軍の際は槍を使っていた。しかしもとより双剣使いである。


 緑の縁が光るそれほど長くない双剣は。

コルフ近岸のアルバニア双頭の鳥の紋章が刻まれてある。

ヴァシリキに取っては思いの深い代物であった。


「礼はシューリヘト様にぶひ。まずはジェノヴァまで案内を頼もうかの?では帆を広げよ!逆風であるが押されるでないぞ!」


「「ヘイ!よし出港だ!」」


また一つ。船が集合地へ向かい帆を広げた。

晴天の冬空。二月半ばの頃である。


――運命の神モイラが糸、紡ぐクロートの導きを。


「皆!北西より風を45度に傾けよ!船は軋むが落ちるでないぞ!面舵一杯三廻しで波を切る!」


「「ヘイ!姉御!」」



 「誰もが怖がる~♪ 酒を飲み干せ〜♪」


水夫達が誰ともなく歌いだす。出港は楽しく気分も上がるが、イオニア海は東地中海最も魔獣が多く安全な航路ではない。


 帆が全開に開き水飛沫を上げ船は走りだす。

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