誕生日会という名の家族晩餐 四歳
夢を見ていた。
暗闇中でギギギという破壊音。火も見え叫び声も泣き声も聞こえる。…地震でどれだけの人が被害に合ったんだろうか。
―――いや違う
これはこっちの世界。
穏やかな島の生まれ育った僕の島が。
赤く燃え上がっていた。
人々は丘を登り避難へと領主に向かい走り出す。
次の瞬間爆音と共に屋根が吹き飛ぶ。
見上げた先には黒い固まりが‥殺戮を始め‥
!;!ンン!ハァッ。。!!ガバッ!
「大丈夫ですか?何かお身体にご異変はないですか!?」
目の前にはフューリが心配そうに覗き込む。ああ夢だった。。。どっちが夢なのか?
「……ごめん。フューリ心配かけたようだね。倒れたのか」
「…無事そうで安心致しました。先程奥方様も心配に訪れたのですよ」
「今、何時頃が聞いていいかい?」
「もうすぐ伍の刻ですわ。昼食は抜けましたが。何かお持ちしましょうか?」
「いや、水を貰えるかな?」
ホッと安心したようにフューリは奥方様に連絡を、といい部屋から出ていく。部屋の外にいたのか、側使えの小さいメイドが水を持って心配そうに見てくる。
「いきなり倒れられていたので。。心配しました」
「ソムにも心配かけたね。大丈夫。そろそろお兄様は来られるかな?」
「そのご様子ですと、晩餐会は大丈夫そうですね。はい、お兄様お二人方はすでに到着しております」
部屋に戻ってきたフューリはぞろぞろと家族を連れていた。ヒュン
「まぁ。シュー!倒れたのですね。今日は誕生会と言うのに…大丈夫かしら?」
「相変わらずひ弱いな。シュー」
「ん。少し大きくなったか?」
「母上、ラインストーン兄様、リアコタス兄様ご心配お掛けしました」
二人の兄は年が離れており今年16歳と14歳だ。がっしりとした騎士団に入っているラインストーン兄様は目つきが鋭く背も高い。リアコタス兄様は母上に似て、垂れ目で愛着が湧く。見た時に再び記憶が戻ってくる。
僕の受け答えがしっかりしている事に皆驚いていている。
頭を撫でてラインストーン兄が褒めてくれた。
「ほぅ、しっかり話せる様になったではないか。安心したぞ」
「ええ。先は安心ですね。今から躾をしておく事はけして遅くはありません。貴族院で嫌ほど理解できました」
リアコタス兄は今貴族院に通っている。冬の間だけなのだが、そこでの生活に思う事があるようだ。
「それでシュー。其方は何をしたのですか?洗濯していたソムが、部屋から光るのを見ていたと。。」
「母上、申し訳ございません。『魔法』を使ってみようとしたときに、手から光が溢れ……失敗しました」
「シューが『魔法』だと?その年でか?」
「なるほど。魔力切れによる失神か」
あらら〜母上は手を頬に当て困りましたね、と表情を崩した。兄二人も無謀な事を、など話しているので魔法を使う事は簡単な事ではないかな?実際できなかったし。
「分かりました。後で話をするので、少しゆっくりお休みしていなさい。晩餐まで時間もありますし。フューリ、何かあれば呼んで頂戴」
そう母上が答える事で皆部屋から出ていく。確かにまだ少しだるい感じが抜けない。。ゆっくりしておこう。
窓から見る景色はギラギラとした日差しになっていた。このソファから見る景色は初めてなのに。どこか赤く映された夢を思い出し吐き気がした。
―――夢なんだろうか?
□□□ 晩餐会
「うむ、皆揃ったな。我が三男シューリヘトが無事四の年を迎える事ができた。ゲルットヒルムの成長に感謝を」
「「感謝を」」
八名の大きなテーブルにつく家族に誕生日を祝われ、僕は久しぶりに嬉しかった。領主カルツァ・オズベルタス・レグナムの挨拶と共に始まった。
食事は豪勢であり、それでも魚貝が中心となるのは島国独自の料理だと思う。エビやカニ、海鮮スープとフリットなど料理が並ぶ。いつもであれば屋敷内に側使えも少ないが、さすが領主の父上、取り巻きだけに10名近くの人が増える。席の後ろには護衛騎士もおり、家族水要らずとはなりそうもない。
「そしてリヘトよ。何か欲しいものはあるか?たまにの機会だ。遠慮せずに頼むが良い」
ん。。年は50代だろうか。父上というより叔父様の様な感覚である父はどうも親近感が薄い。たださすが領主、威厳があり怖い。
「今は特に必要なものはございませんが。。そうですね。字を書けるものがあれば欲しいです」
「ほう。其方字を書けるのか?」
「いえ、読み書きはできません。ただ知識を習得したいのです」
空気がまたキーンっと変わった。うぅ。。こういう時は何か間違えた事を言った時だ。周りの側使えの視線がイタイ…魔法の事をいえばよかったのかな?貴族キライ…
「なるほど。『知識』と来たか。リュフォーリルの子だけある。解った、追って神官を送ろう」
神官。。。先生みたいなものかな?とりあえずお礼を。
「ありがとうございます。父上」
「シュー坊が四歳とは嬉しゅうございますね。領主様」
「そうだな。難産でありすぐに倒れ病弱なリヘトが元気に育ったのは側使えを含めボリネスク、其方達の苦労のおかげだ」
「ありがとうございます。領主様」
やはり家族と言うより、領主一族の影響が大きい様だ。例え4歳といえども父上と言うのは良くなかったか。婆ちゃんフォローしてくれたんだね。しかし僕ってそんなに病弱だったんだ。。確かに体力もないし身長も低い。母上は第三夫人であるし、レグザは多数ある島国の内の一つ。この国は広く、その頂点に父上はいるのだ。
食事をしながら他愛もない話から兄達の近況報告に移っている。ラインストーン兄は騎士としての魔獣退治、(魔獣!?)リアコタス兄は貴族院での他国情勢の話している。どちらも緊張をし、言葉選んで話し合いを進めている。・・僕の誕生日はついでみたいだったようだね。
「母上、母上、魔法は難しいものでしょうか?」
「あらシュー。そうねぇ。まだ少し早いかしら?まずは魔力操作を覚えないと」
「ほう。リヘトは魔法にも興味があるのか?」
「今朝何かしようとしたらしく。。倒れてしまったの。困った子ね」
「好奇心は増えた方が良い。この島はいい島だしもう暫く自由にすると良い。洗礼式まで自由に使え」
「ありがとうございます。旦那様。後でクリル、リリルとも合ってくださいませ。シューよりも元気に育っております」
幼い娘の話しがでると領主も嬉しそうだ。確かに一番下の姉妹はかわいいし孫を見る気持ちなんだろう。表情が柔らかくなるのを感じた。
当然の事ながら僕は長話に疲れ眠たくなる。4歳の体力は。。
大人の会話に口を出す訳でもなく、ボーッとしていた。単純に体力が着いてないのだ。眼をしばしばしていると
「あらシューは眠たいようね。今日はお疲れだっわね。アレフレッド。寝室までよろしくお願いします」
「畏まりました。では領主様。家族の皆様、失礼致します」
僕はアレフレッドに抱えられつつ、この国で合った人の顔や名前を頭に入れ込みながら、頭がぐるぐる回る。ん〜寝てばかりだね。こっちに来て。
漆の刻を告げる音が聞こえたころに眼を閉じていた。
しばらく毎日投稿していく予定です。
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