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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
玖 ―私の居場所―
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死神少女の願い事

【ベルセイン帝国 ハーベリア城】

謁見の間には中央に通路のように真っ直ぐ玉座まで赤いカーペットが敷かれ、エミリア達三人はその上を歩いていた。

玉座に座る皇帝ハワードの隣には宰相クリックス。近影とその他重臣が控えていた。


他にも部屋の隅、カーペットから少し離れた所に兵士が配置されていた。


思わず圧倒されそうな雰囲気だが三人は気にせずカーペットを歩く。


やがて中央辺りで立ち止まるとナタリー、クリスティアナが頭を垂れ跪く、少し遅れてエミリアも真似をした。



「改めてよくぞ帰還した。賢者ナタリー、聖女クリスティアナ、稀代の英雄エミリアよ。」


エミリアは何か返事すべきか迷ったが二人が首を上げないので黙っていることにした。


皇帝がまずナタリーとクリスティアナに労いの言葉をかけた。


この時エミリアは初めて知ったのだが、ナタリーはエミリアが見つからなかった場合は帝国に戻らないつもりでいたらしい。

そして万が一王国内でエミリアの死体を見つけた場合は世界に永遠の冬が訪れていたそうだ。

重臣達が少し怯えているのが見える。


あとでナタリーに「めっ!」することが決まった。


クリスティアナは聖女の力がまだ使えるため、有事の際…………帝国に危機が迫った時には力を使うことになった。

所謂軍事利用だが平時は好きに過ごしてもいいらしい。


最も帝国が危機に陥るような場面は今のところ想定はされていないのだが。




「エミリア・ルーベンス。」

「はい。」


顔をあげると特徴的な髭の男性、多分一番偉い人。


「お主、長らく森で一人で暮らしていたのは事実か?」


頷くと周囲がざわつき出す。


エミリアの実家で起きた『事件』をこの場にいる者は知っていた。


帝国の将軍夫妻、使用人数名が一夜にしてこの世を去った不幸な出来事。


そして皇帝の言う森とは帝国と王国の境目にある黒の森…………少女がたった一人で生きるには過酷な場所だった。


「…………大変だったな。」

「………。」



思えばエミリアの人生はあの『事件』がきっかけで変わってしまった。




一夜で全てを失い、気がつくと森にいた彼女は本能を頼りに数年生きてきた。




魔物を狩り、慣れてきたら盗賊を襲い、奪った金で身なりは整えられた。


最初はうまくいかず、酷い目にも遭った。



しかし以前は感じなかったぽっかり空いた穴、何とも言えない虚無感だけはどうにもならなかった。






自分の居場所が欲しい。


誰かと一緒に過ごしたい。




それだけを求めて生きていた。








「さてエミリアよ。」


ハワードに名前を呼ばれハッと現実に戻る。


「話は概ね聞いている。邪神討伐の上、誘拐犯の撃退までしたそうだな。」


二つ目のはアデーレのことだろうか。

撃退…………といはうよりは殺害したのだが、ブリュンヒルデがエミリアの手柄にしたらしい。


「そなたにも何か褒美を取らせようと思う。どうだ、望む物を授けよう?さすがに皇帝の座はやれぬが。」


ナタリーとクリスティアナは既に何かを貰ったらしく、二人とも紙のようなものを抱えていた。


ところがエミリアは褒美の意味がわかっていないらしく首を傾げていると横からクリスティアナが助け船を出した。


「エミリア、今一番欲しい物は何ですか?」

「欲しい物……………あっ。」


エミリアがハワードに向き合う。






「私には大事な人がいる。村で会ったレイラ、助けてから一緒にいるハンナ、親友のクリス、そして妹のナタリー。皆で暮らせる場所が欲しい。私の故郷、リネに五人でくらせるお家が欲しい。」



ハワードは満足気に頷いた。

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