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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
捌 ―帝国血に染まる―
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死神少女と吸血妃の城

【ベルセイン帝国 巨大湖の町レキノ】

「んぅ……………?ここ………どこ?」


何か寝心地が変だと目覚めたレイラがいたのは別の部屋だった。寝ていた部屋にも豪華な装飾はあったがここは明らかに格が高そうだ。

なんだか落ち着かず部屋をうろついてみる。


「お目覚めになりましたか。」


どうやら近くに侍女が控えていたらしい。レイラの声に気付いて部屋に入ってきた。


「侍女さん、ここどこ?」

「申し訳ありません。レイラ様を主アデーレ様が大層気に入ってしまいました。故に部屋を変えさせていただきました。」

「ん?…………うーん。」


寝起きというのもあり今一状況が飲み込めず首を傾げる。

ちなみに今は日も昇ってない真夜中、フレイムドラゴンは昼行性で本来は寝ている時間帯だ。


「我らが主のお気に入りになった方には必ずやっていただくことがございます。レイラ様にも是非ご協力いただきたいのですが。」

「わたしに?何をすればいーの?」

「それは………」


侍女は懐から短剣を取り出しレイラに向けた。


「ひっ?!」

「貴女の血が欲しいのです。主は生き血を好む方、特に人間ではないレイラ様の血を欲しがっております。」


侍女が近寄ると同時にレイラが後ずさる。


「あっ………?」


気づいたら壁際にまで追い込まれていた。

侍女は構うことなく近づいてくる。


「さぁ、大人しく」

「いやあぁぁぁぁ!!」

「うっ?!」


レイラが叫ぶと侍女が炎に包まれた。無意識に魔法を使ったようだ。


「あああああ!!熱い!!熱いよぉぉ!!」


火達磨になった侍女はらしくない口調で部屋を走り回る。

窓に向かうとガラスを突き破り、落下していった。


「やぁぁぁぁぁ!!!」


水飛沫がレイラのいる部屋にまで届いた。


侍女が断末魔をあげて下に落ちた直後、部屋の外から沢山の足音が聞こえた。


「どうしよう…………お姉ちゃん………。」










エミリアは機嫌が悪かった。

寝ている時、気配が部屋に入ってきたのを感じ取れた。

問題はそれがエミリアに近づくと針のようなものを腕に刺そうとしたことだ。

思わず斬ってしまった。

正当防衛ということでアデーレに報せておくべきだと思う。用もないのに起こされて若干イライラしているし、文句くらい言っても許されるはず。




部屋を出ると違和感を感じた。


「…………一人いない。」


向かいの部屋のレイラがいないことにすぐ気づいた。








ハンナとクリスティアナを起こしてレイラ捜索のお手伝いをしてもらうことにした。

二人はすぐに起きてくれたが………


「ナタリー起きるかな。」


エミリアの記憶ではナタリーは一度眠ると朝日に照らされるまで何があっても起きない。

そして用もなく起こされるとエミリア同様非常に不機嫌になる。魔法学園時代の出来事は全てクリスティアナの耳に入っていた。


「いやでもエミリアが声かければ案外起きてくれたり?」

「そう?」

「そうですね、可能性はあると思いますよ。」


物は試しにとエミリアが扉の前に立つ。


「ナタリー、起きて。」


扉を叩きながら呼び掛けるが物音すら聞こえない。

ふぅ、とエミリアがため息をはく。


クリスティアナはこのあと何が起きるのかわかり、然り気無く障壁を展開した。




「助けてナタリー!!」

「お姉様いま参りまぶごっ!?」


エミリアが叫ぶと扉を蹴破ったナタリーが障壁に弾かれ倒れた。


後頭部を強打したナタリーはぐぉぉと少女らしくない呻き声をあげながら起き上がる。


「大丈夫?」

「大丈夫ですわ……。」

「全く、エミリアのことになると考え無しになるんですから。」

「当然ですわ、お姉様の助けあるところに参上するのが妹の役目ですわ。」

「はぁ。」


クリスティアナはこれ以上言うのをやめた。

おそらく自分も同じことをすると思ってしまったのだろう。


「ところでお姉様、わたくしの力が必要ですの?」

「ん。レイラがいなくなった。」

「レイラちゃんが………?!」


ナタリーは事の重大さに気づき体が震えた。


「ここは怪しさ満点です。効率は落ちますが皆一緒にいるべきでしょう。」

「ハンナ、お加減はどう?」

「んー……お昼よりはいいけど………」

「無理をしない方がいいです。」

「私が先頭行く。ハンナはレイラの声が聞こえたら教えて。」

「あーい。」













【ベルセイン帝国 ハーベリア城】

「皇帝陛下。例の誘拐事件ですが主犯格を絞り込めました。」

「ようやくか。何年も逃げおって、今度こそ引導を渡してくれる。」


帝国ではここ数年少女のみを狙った誘拐事件が相次いでいた。

当初からハワード自らの指揮で捜査していたが全く進展がなかったのだ。

クリックスから書類を受けとり内容を見るとハワードは頭を抱えた。


「…………クリックス。」

「はい。よりによってあの女が。」

「今から騎士団を送っても半日はかかる………。」




誘拐事件の主犯格はアデーレ伯爵夫人と書かれていた。


「だが何もしないよりはいい。騎士団にアデーレ伯爵夫人を捕らえさせよ。」

「はっ。」


クリックスに命じた直後、扉がノックされた。


「入れ。」


入ってきたのは一人の侍女。

彼女は皇妃付の侍女だった。執務室まで来るのは珍しい。


「失礼いたします。皇妃殿下からお手紙を預かってます。」

「む?」


手紙を受け取り読んでいく。





『前略


私の友達アデーレが少女誘拐事件の主犯格だと知りました。

しかし貴方も知ってるでしょうけど今アデーレの城にはエミリアちゃんがいます。友の蛮行にエミリアちゃんまで巻き込みたくはありません。

なので勝手ながら私がアデーレを捕まえてきます。

迎えに騎士団でも寄越してください。

心配はしないで、私は死ぬつもりはないですし、そう簡単にやられるほど弱くはありませんから。


皇妃ブリュンヒルデ・ベルセイン』


ハワードは卒倒した。


「皇帝陛下?!皇帝陛下ぁぁぁぁ!!?」











「急ぎましょうジークリンテ、これ以上友の愚行を許してはならないわ。」

「ギュワァァァン。」


青いドラゴンと共に鎧を着た女性が夜空を駆けていった。



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