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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
弐―死神と竜と狩人と―
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死神少女は街道を行く

弐之章開始です。

よろしくお願いします。

【ブランウェル王国 キューズル街道】

夕暮れの街道に一人の青髪少女と一頭の赤い巨龍が対峙していた。

圧倒的な巨体を持つドラゴンは少女を見下ろす。

少女も臆することなくドラゴンを見上げる。


ドラゴンは唸り声をあげ顔を少女に近づける。








少女はドラゴンの顔を撫でた。

ドラゴンは心地よさそうに目を細める。


少女…………エミリアは初めてドラゴンを撫でた。















「思ったより大きいね。」

「あんまり見せるものじゃないんだけど…。」


人型に戻った赤髪少女はエミリアに自分の事を明かした。

証拠に本来の姿である竜型に変身して見せたのだ。

まさか臆することなく撫でられるとは思わなかったが。


「お姉ちゃん、怖くなかったの?」

「うん…ちょっとびっくりしたけど、正体はわかってるし。」


表面上は平静を装っていたが、流石に動揺したようだ。

レイド山最強に君臨していたのは伊達ではない風格があった。

本人は不満そうだが。


「そういえば名前は何て言うの?」

「名前?……うーん。」


フレイムドラゴンである彼女はただ種族名でしか呼ばれたことがない。

神竜クラスであれば固有の名前を持つようだが。

だがいつまでも呼び名がないのは不便だ。

ドラゴンと呼ぶのは論外。

赤髪少女は期待の眼差しでエミリアを見つめる。


「うーん……フレイムドラゴン……レイドラ………レイラ?レイラでどう?」

「レイラ………うんっ!私はレイラ!!」


種族名を略しただけだが赤髪少女……レイラは嬉しかった。


「えへへ、お姉ちゃんから名前もらっちゃった。」


よっぽど嬉しかったのかその場で回る。

白いワンピースがふわりと舞い上がる。


「レイラ、夜になる前に行こうか?」

「うん!」


二人は手を繋いで街道を進む。

手を繋いで歩くのは何年ぶりだろうか、二人目の妹ができたみたいだ。


妹…………ナタリーは元気にしているだろうか。

魔法の才能があるからと離れていったが確かお姉ちゃん子だったはず。

エミリアの姿が見えないとすぐ泣き出してしまうくらいだ。

まぁあの子は優秀だ、うまくいっているだろう。

でも死ぬ前には一度顔を見ておきたいな。














結局夜になったので街道から外れた場所にテントを張った。

レイラのお陰で火起こしに苦労することもなくなった。

ちなみに獲物は竜化レイラが尻尾の凪ぎ払いで仕留めたグリーンバードだ、小さいからと襲ってきたのだが相手が悪すぎた。

多少地面が抉れたが関係ない、後で偉い人か凄い人が何とかするだろう。


「美味しいね、お姉ちゃん。」

「ん。悪くない。」






子守唄を歌ったらレイラはすぐ寝てしまった。

周囲の気配を探りつつエミリアも就寝する。


寝ていても近づく物体を察知はできるが、できればレイラには気づかれたくない。

しかし昨日はほとんど寝ていない。

エミリアもすぐ寝てしまった。


















「お姉ちゃん、起きて。」

「…………んぅ~。」


翌朝、レイラはエミリアを揺すって起こしていた。

朝に弱いエミリアは身体の小さいレイラには強敵だった。

竜化してもいいのだがテントがダメになってしまう。


「んみゅぅ…………。」

「もぉ~。」


レイラは起きる気配がないエミリアに呆れる。

しかしその表情はどこか嬉しそうだ。



誰かと一緒にいることがこんなに楽しいとは思わなかった。

私に楽しみをくれてありがとう。

だから……もうちょっと寝かせてあげようかな。

ずっと、一緒に居られたらいいな。




















【ブランウェル王国 霧の森】

深い霧に覆われた広大な森。

森の奥深く、まるで人目を避けるかのように建てられた小屋がある。

この小屋にはかつて王国では名の知れた魔物ハンターが住んでいた。しかし不幸が重なりこの世から去っていた。


ある程度の生活環境が整っていた為、小屋は時折やってくる冒険者が休憩所として利用されるようになっていた。






今までは。




「頼む……助けてくれぇ!!」


「私とお母さんの場所、踏み荒らさないで!!」






成長したハンターの娘は、親子の領域を侵す冒険者を許さなかった。

母の使っていた大鉈を得物に、魔物ではなく、人を狩っていた。

左手には小型の改造クロスボウが装着されていた。手の動きで矢を発射する特別製だ。



「知らなかったんだ……まだ人が住んでるだなんて……!!」

「許さないんだから……私の思い出に踏み込んだあんたは絶対に許さないんだから!!」




黒い熊型の魔物、エビルベアの毛皮を被ったそれは霧の森にて多くの人間を狩り始めた。

非力な一般人も、冒険者も………



いつしか『霧の人食いハンター』と呼ばれた彼女は今日も森を駆ける。



全ては母との思い出を護るために………


「…………お母さん、私負けないよ。」

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