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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
捌 ―帝国血に染まる―
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狂気の歯車

【ベルセイン帝国 城塞都市ジェスト】

夜、町の食堂で夕食となった。

お金はナタリーとクリスティアナの貯金、エミリアが殺害してきた者からの強奪物で意外と余裕がある。

エミリアが出してきた金額の量にクリスティアナは思わず眉をひそめたが再開前にやらかしたことなので不問となった。


エミリアの隣に誰が座るのかでまた一悶着あったが公平にじゃんけんで決められた。(勝ち残り二名)


結果、ハンナとクリスティアナが両隣に座ることになった。

ナタリーは凄く悔しそうにジュースをガブ飲みし始め、隣に座るレイラが困った顔をした。


ちなみに勝負に勝ったクリスティアナは終始顔を赤くしたままうつむいていて食事どころではなかった。

ハンナのように肩をくっつける度胸はまだない。



一般市民でも食べられる、決して高くはないものだったが五人は満足できたようだ。

気の許せる者同士一緒にいるというのは良い。それだけで安心できるものがある。


「っ!」


寝泊まりする指令部へ帰る最中、エミリアが突然振り返って何処かを睨む。

反射的にレイラがエミリアの服を掴んだ。

エミリアが睨む場所には一見何もいないように見える。


「どうしましたか?!」


騒ぎに気付いた門番の兵士がやってきた。


「………大丈夫、何でもない。」


兵士は気を効かせてエミリアが入るまで彼女が睨んでいた場所を注視し続けた。










あの時感じた視線は殺気、それも間違いなくエミリアに向かっていた。

彼女には心当たりがありすぎて何からの報復とか全く検討がつかない。



まだ二日間はこの町に居なければならない。










魔法学園時代の生活習慣が抜けないナタリーは日の出と共に起床する。まずは軽い魔法を使って今日の調子を確認。日によって魔法の具合が僅かに変わり、それに応じて使う属性魔法を使い分けるのだ。

そしてエミリアの寝顔をじっくり堪能してから活動を開始する。


次にハンナが起きる。狩人の彼女も母からの仕込みで日の出ぐらいに目覚める。本来なら走り込みの外に罠の様子見や新たな罠の設置を行うのだが住むべき所が無いため走り込みだけやっている。

一日でも体力作りを怠ればファングすら倒せなくなる。亡き母の教えだ。


だいたいクリスティアナとレイラはほぼ同時に起きる。

レイラの着替えを手伝ってから自分も寝巻きから着替える。いい加減目立つので以前来ていた村娘服をチョイス。こっちの方が動きやすい。


そして四人が目覚めて三時間後、ようやくエミリアが起きる。が、寝坊助の彼女が簡単に起き上がれるはずもなく、四人が手伝うことになる。


どこかの貴族に仕える侍女のように着替えまで手伝う。

この時ナタリーの興奮が極まるためクリスティアナが聖女パンチ(鳩尾)で何処かに閉じ込めておく。無論レイラやハンナには適当な理由をつけてごまかす。純真無垢な二人にシスコンの闇を見せたくないのだ。


着替え終えても未だ夢うつつなエミリアは足元がおぼつかず、誰かの力がないと真っ直ぐ歩けない。


「お姉ちゃんっ、行こう?」

「んみゅ~ぁ……。」


普段頼れる彼女が滅多に見せない無防備な瞬間である。














エミリアとナタリーは町にいた。何やらクリスティアナがレイラとハンナに教えることがあると、『スライムでもわかる帝国式教育』を携えていたのだ。

エミリアとナタリーは夕方くらいまで外出していてほしいと言われ、ぶらぶらと歩いていた。


「ナタリー、これ。」


そういえばとスカートから黒い球体を取り出す。


「何ですの?」

「デカ物……クリスのゴーレムの核。」

「核………活動は停止してますが、かなり上等な物ですわよ。これをクリスティアナ様が………?」


ナタリーはこの球体がクリスティアナが持っていたことに驚いていた。

ゴーレム生成にはある程度の魔力と錬金技術があれば一般人でも造り出すことが可能だ。ただ戦闘に使う場合は少なくともなんらかの上級魔法を使いこなせないとゴーレムに攻撃手段を組み込むことができない。


「これを直せる?クリスには内緒でやってほしいんだけど。」


エミリアがどこか期待する雰囲気で聞いてくる。


さて、実は困ったことにナタリーは錬金術が苦手なのだ。

強力な魔法が使えれば戦闘には困らないだろうし、何より姉の力になれる。その思いだけで賢者に登り詰めた。だがまさかこんな形でエミリアから頼まれるとは思わなかった。


「承りましたわ、お姉様。」


だが断れるはずがなかった。エミリアの前では基本イエスマン……イエスウーマンのナタリーに拒否の選択肢は存在しないのだ。


「ありがとうナタリー。」

「ただ時間がかかりますわ。錬金術は何分しろ………久しくやってませんから。」

「構わないよ。待ってるから。」



今から錬金術の教本を読み漁る必要があった。











アルバン・ホリガーはその醜い顔から酷い虐めを受けていた。

盗みは序の口、体を殴られたり蹴られたり、酷いときは川に落とされたこともあった。

友達は勿論いない。親には迷惑をかけたくない。

誰にも頼ることができなかったアルバンはやがて成長し家を出た。運のいい事に彼は大きな町の食堂で料理人になることができた。

食堂の店主、他の料理人や看板娘はいい人で醜い顔の彼に優しくしてくれた。客でやって来る冒険者は時々からかってくるも過去の虐めと比べれば対したことはなかった。

ある日、彼はかつての虐めっ子の男が少女を連れている所を目撃した。咄嗟に隠れた彼は虐めっ子が結婚し子供を授かったことを知った。

アルバンは男が自分にしてきた仕打ちを思い出していた。そんな男が子宝に恵まれることにどうしようもない怒りが芽生えてしまった。



気がついたら彼の目の前には息をしてない男性と女性、泣きじゃくる少女がいた。

彼は一線を超えてしまった。しかし彼は女性と少女の悲鳴を聞いた時、言い知れない快感を感じ必要以上に痛めつけた。


泣き叫ぶ少女を見て彼はその場を立ち去った。



仕事場に戻った彼は問題に直面した。

食堂の看板娘を見ると彼女の悲鳴を聴きたいという衝動に駆られてしまった。

彼女は自分に優しくしてくれる店主の一人娘。手を出したら自分は終わりだ。


看板娘だけではない。年頃の少女を見ると泣き叫ぶ声が聞きたいという欲求が出てきてしまう。







彼が多くの少女を暴行し、町から逃げる時に一人の女性に出会う。更なる深淵に踏み入れることになることも知らずに。

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