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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
捌 ―帝国血に染まる―
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帝国に潜む影

【ベルセイン帝国 城塞都市ジェスト】

「まぁ、皇帝陛下がわたくし達に?」

「うむ。是非とも会いたいと仰っている。」


ヴィクターに呼ばれたエミリアとナタリーは皇帝ハワードが二人に会って話がしたいことを伝えていた。

父エリオット・ルーベンスの忘れ形見、それの長年行方不明となっていたエミリアが現れたのだ。色々話したいことがあるのだろう。


「迎えの者は三日後に到着予定だ。それまでこの町でゆっくりしていくといい。」

「ありがとうございます。」


ちなみにさっきからナタリーしか話していない。

エミリアはこういう目上の人との話し方を知らないのでナタリーが代わりに受け答えしているのだ。

勿論事前にヴィクターから許しは得ている。

ナタリーもエミリアの僅かな表情の変化で返答を変えている。


「ところでエミリア殿、その剣はどこで?」


ヴィクターはエミリアが抜き身で腰にぶら下げているグリムリーパーが気になっていた。

少女が持つには不釣り合いに大きい、立派な剣が鞘にも入ってないとなると盗難の可能性もある。

……間違ってはいないが。


「聖都の地下で見つけたの。そこから私が使ってる。」

「聖都の地下?ということは………。」


聖都の地下にある剣は一つしかない。

そして今、彼女の手にあるということは聖剣の主と認められた証拠。


「なるほど。しかしエミリア殿なら納得だ、邪神を倒しただけのことはある。」

「まぁ、もう知られていたのですわね。」

「と言っても陛下を中心に高位の人間くらいに知らされているだけだ。民には人物像と名前は公開していない。目立つのは嫌いだろうとの配慮だそうだ。」


父エリオットは結婚を期に目立つことをやめ、山賊や魔物討伐の戦果は全て仲間の物にして自分はその場所にいなかったかのようにしていた。

名が売れて家族に危害が及ぶのを防ぐためだ。

この為エリオットは世間ではちょっと強い人とだけ認識されていた。

ただハワードと家族にはバレていたが。







三日間というのは意外と長い。


時間潰しの方法を皆と相談してみようと二人はエミリアが寝ていた部屋へ戻ることにした。


「あの、お姉様。」

「?」


ナタリーが手を出してきた。


「久しぶりにその………繋いでいきませんこと?」

「……?いいよ。」


提案に乗り手を繋いでいく。

こんなの何年ぶりだろうか、町へおつかいに行って以来か。


普段はレイラと手を繋いでいるため遠慮していたナタリーだが、今くらいは愛する姉を独り占めしたかった。


皇帝に帰還の報告をしたら故郷で一緒に暮らすつもりだ。

勿論エミリアの性格上レイラやハンナも誘うことも予想できる。彼女が望むのならナタリーは受け入れるつもりでいる。エミリアの考えがナタリーの行動規準になるのだ。






【ベルセイン帝国 ハーベリア城】

帝国の象徴であるハーベリア城。

執務室にて皇帝ハワードは宰相クリックスから報告を受けていた。


「では迎えは予定通り三日後に送ります。」

「うむ、そうしてくれ。」


エミリア帰還の報せを受け、すぐにでも会いたいと思ったが彼女は長年安息の地にいない。まずはゆっくり休んでもらうことにしたのだ。


「スタンピードはヴィクター将軍や冒険者達のの奮戦により、被害は魔導人形3体に収まったようです。」

「流石だな。魔導人形の補充は後日送ろう。」


二つの良い報せにハワードは満足げに頷いた。

心配事が一気に二つもなくなり大分気が楽になったようだ。


「さて、次は………………」


ハワードが一枚の書類を出す。

『少女連続誘拐事件』と書かれてある。


「彼女らのために一刻も早く解決しなければならない。」









帝国のとある町に少女はいた。

今夜は大好きな兄の誕生日、彼のためにプレゼントを買った帰りだ。


すっかり暗くなってしまい少女は家へ急いだ。

距離を縮めるために人通りの無い裏路地を進むことにした。


灯りが全く無い道を進むのは戸惑われた。こんな場所は走って通りすぎるに限る。

スカートをはためかせ路地を通りすぎる。



「えっ?!」


一瞬、人が立っているのが見え立ち止まってしまう。

こんな場所に?もうほとんど道が見えないのに?


だがその場所に人影はなかった。


見間違いだということにして再び走る。



「んむぅ!?」


突然少女は口を布のようなもので抑えられた。

暴れて抵抗をするが何故か眠気が襲いかかってくる。


「む………ぅ……。」


少女は力なくその場に倒れこんでしまった。







翌日、その場には少女が兄にあげるはずだったプレゼントと茶色の靴が残されていた。

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