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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
漆 ―王国脱出―
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死神少女と森の大悪魔

【黒の森】

黒の森は日が射さないため正確な時刻はわからない。

早朝に出発したのだからお昼にはまだなってないだろう、お腹もまだ減っていない。


「うぅ……。」


少し前からレイラの様子がおかしくなった。

疲れているだとかそういった物ではないらしいが

時々苦しげにうめき声をあげるのだ。

小さい手が震えながらエミリアの服を掴む。


「レイラ………具合悪いの?」

「わかんない………熱くて……苦しい………。」


こんなレイラは今まで見たことなかった。

ひとまずエミリアはおんぶしていくことした。


「まさかとは思いますが………」

「クリス?」


クリスティアナは何か心当たりがあるようだ。

少し言いづらそうだがエミリアのすがるような目に負けた。


「エミリア、レイラは人の姿をしてますが魔物です。」

「うん。」

「私たちがいる黒の森は何百年か前に降臨した邪神の影響を最も受けたとされています。当時放たれた瘴気が未だに森の魔物達を侵食、そして時折暴走させ近隣の集落を襲うようになります。これがスタンピードの起源と言われています。」

「……じゃあレイラも暴走しちゃうの?」

「いえ、今はレイラの理性が魔物の本能部分を抑えているようです………」


そう言うとクリスティアナはレイラの髪を撫でた。


「あまり森に長くいてはレイラの負担が強くなります。さっさと抜け………」


その時である。

多種多様の魔物の雄叫びが一斉に聞こえてきたのだ。


「これは………!?」

「うへぇ………。」


四人は何が起きたのかすぐに理解した。

エミリアの探知能力が多数の魔物が接近していることを伝える。


「全部相手は………無理、レイラがもたないっ。」

「こうなったら強行突破あるのみですわ!」


ナタリーが早口で詠唱すると全員の体を青いオーラが覆った。

遅れてクリスティアナが祈りを捧げると彼女を中心にドーム状の光の障壁が展開された。

障壁に触れた魔物は弾かれるように吹っ飛んでいく。


「『速く走れる魔法』ですわ!」

「そう簡単に通しはしませんよ。」


四人は走り出す。光の障壁はクリスティアナに追従していく。


「グゲッ?!」

「ギャインッ!!」


障壁にぶつかった魔物は全て弾き飛ばされていく。


「気持ちいいねこれ!!」

「過信は禁物ですっ。あまり受けすぎると維持できなくなりますからっ。」


そう言っている間も障壁は多数の魔物を弾き飛ばす。


「あれ?お姉様!?」


ナタリーが横を走っていたエミリアが何故か後ろにいることに気づき、再び魔法をかける。


「一時間はもつわたくしの魔法が………これは………。」


ナタリーはエミリアの真横に行くと肩に触れた。


「理由はわかりませんが、すぐに切れるのであればかけ続けるのみですわ!」


彼女はエミリアに直接魔力を流し続けスピーダーを無理矢理続けさせるつもりだ。



「ナタリー、無理はしないで。」

「このくらい余裕ですわ。」


実際この行為は高い魔力を持つナタリーだからこそできること。普通の魔法使いでは連続して補助魔法を使うと頭痛が激しくなるらしい。




「グギャアォォォォ!!」

「今のは…………エビルベア?!」


雄叫びと共に大型の魔物が立ちふさがった。

それは以前エミリアと竜化レイラが倒した魔物。


「ガアウッ!!」

「ちょっ………あんなでかいの見たことないよ?!」


ただし以前よりもずっと巨大な個体だった。


「障壁を受け止めた?!」


クリスティアナの展開した障壁で弾くどころか受け止めたエビルベアは明らかに普通ではなかった。


エビルベアと戦い慣れてるはずのハンナは明らかに狼狽えていた。


「嘘でしょ?!毒が効いてない!!」


ハンナが集めた数十匹分の毒液に浸した毒矢を物ともしていなかった。


「雷よ、我が声に応え、我が敵を殲滅せよ。『サンダーボルト』!」


エビルベア目掛けて多数の雷が落ちる。

雷は他の魔物も巻き込み倒していく。


「これは………変異態というやつですわね。」


エビルベアは焦げてはいるがまだ立っていた。

怒ったエビルベアは障壁を殴り始めた。


「これは………っ!?」


障壁にヒビが入り始めた。

彼女の出した障壁はドラゴンの攻撃に耐えられる代物、目の前にいる魔物はそれを凌ぐ破壊力を持っている。


「レイラ、ちょっと待ってて。」

「うん………。」


見てられなくなったエミリアはレイラを降ろすとナイフとグリムリーパーを取り出した。


「くぅっ…………。」







「むぅ…………。」


エミリアは困っていた。

障壁越しに変異態エビルベアを斬っているがあまり手応えがないのだ。

レイラの為にもさっさと倒したい。


「ごめん、矢が尽きた。」

「そっか………じゃあレイラお願い。」


ハンナはクロスボウの他にマチェットを持っているが武器としてではなく採取や解体を主に使用している。マチェットでの戦闘はほとんど経験がなかった。


「あぁっ、こんなことがっ………!」


障壁のヒビが更に大きくなりクリスティアナが慌て出す。


「まだ倒れない。」

「さっさと死んでくださいましっ!!」


ナタリーの口調が荒れ始めた。

自慢の魔法を何発も耐えられているのだ、無理もない。



やがてその時がついに訪れた。


「ぁっ……………。」


障壁が完全に破壊された。

同時にクリスティアナがその場に倒れてしまう。


「グギャアォォ!!」

「クリス!!」


エビルベアが吠えながら倒れたクリスティアナに向かい爪を振るった。




「づっ!!」


直前エミリアが飛び込んだ。

小さな背中に深い爪の跡が刻まれた。



「この下郎…っ!!」




「全てを滅ぼせ!!『メテオストライク』!!」




黒の森上空に巨大な魔方陣が現れた。

中央に黒い穴が開くと同時に轟音が鳴り響き始めた。


そして穴から巨大な岩………隕石が落ちてきた。








黒の森の一端が焦土と化した。










「いづ………。」

「お姉様………ご無事ですか?」

「私は大丈夫………。」


クリスティアナはエミリアに庇われ無傷だった。

………代わりにエミリアの背中はひどいことになっていたが。


「けほっ…………賢者さん、ちょっと無茶苦茶じゃない?」


隕石の爆風に巻き込まれた五人は怪我こそないが何故か着ている物がボロボロになっていた。


「あぁ申し訳ありません。ついかっとなって。」





「ねぇ、あれ。」


エミリアが指差す方向に光が見えた。


「森から抜けられるかもしれませんわ!」



気を失ったクリスティアナを背負いエミリアは再び歩き出した。


だが血を流したエミリアに向かって魔物が集まり出していた。

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