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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
漆 ―王国脱出―
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死神少女は再び森を行く

【黒の森】

五人の少女は暗い森を進んでいた。

時折現れる魔物を蹴散らしつつ確実に帝国へ向かっていく。


「怪我はない?」


エミリアはナイフを回しながら皆を心配する。

たった今も飛びかかってきたファングの群れを斬り裂き、焼き付くし、凍らせたところだ。


「怪我人ゼロですわ。」

「ん、よかった。」


戦闘はエミリアとハンナが前衛、レイラとナタリー、クリスティアナが後衛だった。

最初はエミリアが単身で前衛を務めようとしたが全員から猛反対されハンナが付き添うことになった。

……レイラが半泣きでお願いしたのが一番効いた。




「シルフの森はそうでもありませんでしたが、かなり魔物が多いですね。」

「さすがは黒の森ですわね。魔物の巣窟と呼ばれているだけのことはありますわ。」

「ナタリー、無理はしないで。さっき結構魔法使ってたよ。」

「大丈夫ですわ。あれは消費魔力が少ないものですから。」

「ならいいけど………。」


ナタリーは自分の魔力量と相談しながら魔法を使っている。こんな場所で魔力切れを起こし動けなくなったら賢者の名が廃る。

とはいえナタリーの魔力量は元から規格外なのでそうそう切れることはないのだが。



ハンナが道中見つけた木の実を食べ腹の足しにする。

肉を焼いている余裕はなかった、エミリアはなんとなく急ぐべきだと思ったのだ。


「そういえばお姉様、手袋をしていますわね。」

「あれ?昨日までやってなかったよね?」


エミリアはいつの間にか黒い革手袋をしていた。


「うん、前までやってたんだけど失くしちゃって。さっきの村で買ってきた。血で汚れたくないし。」


エミリアは敵の血を浴びることを酷く嫌う。

黒の森に入ってから魔物の首を切り裂いてるが自分に血はかかっていない。

白いブラウスは全く汚れていなかった。


「それに手袋あったほうがナイフ使いやすいし………」


手を保護しているため以前のように器用にナイフを使えるようになったようだ。

外蓑は帝国で調達するなので手元のナイフは十本程度、足に巻き付けたナイフホルダーに入っている。

なおナイフを取り出す度に太ももが出る関係で四人は戦闘中エミリアを直視しないようにしている。

下着は不思議な聖女的力で見えないようになっていた。





【ベルセイン帝国 城塞都市ジェスト】

黒の森に隣接しているこの町は都市というよりも要塞だ。

二重の城壁に囲まれた町は帝都並の発展を遂げ帝国の主要都市の一つになっていた。

外側の城壁には等間隔に弩砲や大砲が設置されており敵を寄せ付けないようになっている。

二重の城壁に挟まれるのは通称『戦闘街』と呼ばれる地区でこの場所には人は住んでおらず全ての家屋は障害物や簡易的な陣に使われる。

内側の城壁に囲まれる地区に一般人が住む居住区が存在する。城壁にはこちらも弩砲、大砲が設置されている。


かつては王国との決戦用に莫大な費用で建造された都市は現在地、黒の森の魔物から帝国を守るための重要拠点となっていた。




「では保護対象殿はこちらにやってくるというのか。」

「はい。陛下の密偵からの情報なので間違いないです。」


赤い軍服に身を包んだ壮年の男性はこの町の防衛を一任されているヴィクター・ランダートだ。

元々は冒険者だったが優れた指揮と戦闘力を認められ皇帝ハワードからこの地を任された。彼と組んでいたパーティメンバーもこの町の防衛隊長をしていた。


「保護対象であるエミリア様の他に賢者様、聖女様、他二名の少女が行動を共にとっているとのこと。」

「五人か………黒の森は広い、迎えを出すわけにはいかないか。ランドルフを呼んでくれ。」

「はっ。」


一人になったヴィクターは城塞都市と黒の森が描かれた地図を広げた。

スタンピードの前兆が出ている以上迂闊な行動はできない。


「大砲は使えぬな、攻撃範囲が広すぎる。魔導人形二体に重装兵………む、入っていい。」


ノックと共に緑の三角帽子を被った青年が入ってきた。

ヴィクターと共に組んでいたランドルフ・セロンだ。若いが魔法使いとしての腕はナタリーに次ぐと言われている。


「ヴィクター、悩み事?」

「ああ。例の保護対象エミリア嬢が黒の森からこの町に来るそうなんだ。」

「森から?タイミングが悪いなぁ。」

「そこなのだ。正確な位置が分からない以上迂闊に範囲の広い砲撃はできない。スタンピードの対策、どうしたものかな。」


二人はうんうん唸りながら地図とにらめっこを始めた。






二人きりの会議は三時間に及び、早速兵士達に指示が伝達された。


ちょうどその時黒の森がざわめき始めたのであった。

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