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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
漆 ―王国脱出―
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死神少女の嫌いなもの

【ナーガ海 貨物船】

エミリアが寝ている部屋に船員が二人入ってきた。


「誰?」

「お嬢ちゃん、ちょっと来てほしい。」


徐にレイラの腕を掴むと部屋の外へ連れ出そうとした。


「いやだっ!なにするの!?」

「すまんなぁ船長のためなんだ。」

「大人しくしてな~?」


二人がかりで暴れるレイラを押さえる。

じたばたするも今の姿では成人男性二人には敵わず大人しくなった。


「いいこだ、ちょっとの間静かにしてもら………!?」


船員の一人がレイラを部屋から出した直後、腹から剣が生えてきた。

背中から剣……グリムリーパーを串刺したのは寝ていたはずのエミリア。グリムリーパーを抜いて船員を蹴り倒すともう一人の船員の首をはねた。


「お姉ちゃん!!」


解放されたレイラはエミリアに抱きついた。

エミリアはレイラを抱きかかえ………一度部屋に戻った。


「レイラ、ちょっと待ってて。」


そう言うとエミリアは部屋から出ていった。

後になってレイラは気づいたが、いつもより声が高かったそうだ。



………そして普段見せない笑顔。

レイラが以前盗賊に叩かれて以来の笑顔だった。








「いろいろ聞きたいことはるけど、私と一緒にいた三人をどうするつもり?」


エミリアは廊下で倒れた船員を尋問していた。

仰向けにして、不釣り合いな大型の剣を右肩に当てている。いつでもこのまま突き刺せるぞと言うように。


「船長のためなんだ、俺は屈しない……ぎゃあ!!」

「船長ねぇ。奴隷商人かなにかなの?」


解答が気に入らなかったエミリアは船員の右肩を切断、今度は左肩に当てる。


「そんなわけないだろ!!あの人は今まで真面目にうぎゃあ!!」

「身の上話はいい。」


左肩を切断したエミリアは今度は右膝に当てる。

どんどん気が短くなってきている。


「お、お姉ちゃん………。」


さすがにレイラは気の毒になったのかドレスを掴んで止めた。


「ん、ごめんね。見たくないよね。」


エミリアは軽くレイラを撫でると船員の頭に剣先を当てた。


「あまり長引かせないで、この子に嫌われるから早く教えて。」

「いづづー!!!?」


船員には剣先が僅かだが刺さった。

エミリアの怒りに呼応したのかグリムリーパー赤く光る。




エミリアがちょっと押し込んだところで船員は白状した。


船長が多額の借金を負わされたこと、その為にエミリアと同じくらいの少女を十人拐っていること。




「ふっ。」


話を聞き終えたエミリアは用は済んだと言うように船員の首をはねた。


「お姉ちゃん。」

「ん?」


先程からドレスをぎゅっと掴んでいるレイラ。

そっと頭に手をやるとレイラは腰に手を回した。


「嫌いになんかならないよ、お姉ちゃんのこと大好きだもん。」

「そっか…………ありがと。」


レイラの好感度は予想以上に高かったらしい。






「んー………。」


感知能力を頼りに三人を探すが関係ない場所ばかり当ててしまう。

こうしている間にエミリアは多くの扉と船員を刻んでいた。

時々反撃されたが例外なく肉塊になった。


「お前は………!」


港で見た船長に見つかった。

レイラを庇うように前に出て剣先を向けた。


「逃がすわけにはいかないんだ!」


その声に反応するかのように船員が集まってきた。


「帰らせてくれるんじゃないんだ。」

「悪いとは思ってるさ、だがこっちも後がないんだ。」

「私たちよりも家族が大事?」

「うっ…………だがここまできたら引き返せないんだ!大人しく捕まってくれ!」


多少は良心が痛んだようだが、今さらやめることはできないようだ。

船長の声を合図に船員達がエミリア達近づいてくる。





「じゃあ、死んじゃえばいい。」


グリムリーパーを横に凪いで船員の首をたくさん飛ばす。

船長は躊躇なく仲間を殺した少女に思わず戦慄した。

次々と首が飛び、血が流れ、小さな地獄ができあがる。

そして残りが船長エリックになった。彼はすっかり腰を抜かしてしまった。


「嘘つきは嫌い。」


エリックに剣が突き刺さる。

悲鳴に構うことなくエミリアは続けて突き刺し、斬りつける。


一通り斬るとエリックは動かなくなった。

グリムリーパーを振って血を払い落とす。


「っ!?」

「逃がす…………わけには…………いかないんだっ!」


エリックがエミリアの足を強く掴んできた。

逃がすまいと細い足に爪が食い込む。


「お姉ちゃんから離れろ!!」


と、レイラが火力高めの炎魔法をエリックに当てた。

瞬時にエリックの体が燃え上がる。


「あづっ!」

「あ、ごめんなさい!!」


エミリアの足にもちょっと当たったようだ。

そのおかげで拘束から解かれた。



申し訳なさそうにしてるレイラをあやすエミリアはどこかすっとしない。

人を殺してもいつもなら感じない胸の痛み。

エミリアには理解することができなかった。





下へ降りられそうな扉を見つけたエミリアはそれを切り捨て無理やり中に入る。


そこには大きな檻があり少女達が囚われていた。


縛られた三人も見つけた。



「………すぐ助ける!」


グリムリーパーを檻に叩きつける。

普通の剣なら刃こぼれしそうな行為だがそこは元聖剣、鉄製の檻を簡単に切断してしまった。


エミリアは全員分の縄を切って檻から連れ出す。


「怪我はない?」

「ありません、船長は?」

「死んだよ。」

「そうですか………。」


遅かったようだ。

クリスティアナとしては然るべきところで奴隷商と共に裁いてもらいたかったところ。

だがエミリアの怒りに触れた時点で彼らの運命は決まったようなもの、クリスティアナは考えないことにした。


ナタリーとハンナは他の少女を助けていた。

と、エミリアがばつが悪そうに聞いてくる。


「クリス。ちょっと聞きたいんだけど。」

「何でしょう?」


クリスティアナは何となく嫌な予感がした。

そしてそれはだいたい的中してしまう。




「この船どうやって動かすの?」

「………………はい?」




エミリアは向かってくる船員を全て殺していた。


航海士も、操縦士も。




この船には知識のない少女10人が取り残されていた。

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