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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
漆 ―王国脱出―
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妖精は死神少女のために

【ブランウェル王国 シルフの森】

一仕事終えたエミリアは泉からあがった三人と合流する。

あの短時間で二つの死体ができあがったことを彼女らは知らない。ハンナは自慢の嗅覚で気づいているかもしれないが、何も言わないということは気を使っているのだろう。


「全く貴女という人は………」

「ちょっとした悪戯心というやつですわ。」

「ごめんなさーい。」


クリスティアナは水かけ戦争に発展させたナタリーに不満そうだったが、何だかんだで自分も楽しんだので不問とした。


「行きましょうエミリア。少々ゆっくりしすぎました。」

「もういいの?」

「気を使わせて申し訳ありません。もう大丈夫です。」

「ん、ならいっか。」


五人は再び港町へ向けて進み始めた。

まだまだ森は続くがそれでも進むしかない。








そんなエミリア達を見守る小さな影がいた。


「あ、おねーさんだ~。」


桃色の髪にちょこんとたったアホ毛がトレードマーク。

シルフの森の妖精、ティカルだ。


「ひび割れが少なくなってる。会いたかった人に会えたんだね。」


以前会った時よりもエミリアの魂がきらきら光っているように見えた。

ナタリーとクリスティアナに会えたことがやはり一番だったらしい。


ティカルの後ろからいつも着いてきてる取り巻き三人が飛んできた。


「あ、ティカルのお気に入りじゃん。」

「ずいぶん魂きれーになったねー。」

「すっごい剣持ってるねー。」


各自好き勝手言ってるが何だかんだ彼女達もエミリアが気に入っている。


「今回は姿を見せなくていーの?」

「そうだね~。おねーさんの魂は取り敢えずは安心になったからね~。」


遠目から見たエミリアの表情は分かりづらいが、なんとなく嬉しそうに見えた。

そこに入るのは流石に気が引けたのだ。勿論エミリアならティカルを受け入れるだろうが。


「行こっか。そろそろ悪戯好きな妖精の出番かもだよ。」

「はーい。」






本当はおねーさんに着いていきたい。

でもこれ以上おねーさんには負担をかけたくない。それに私は妖精、森から離れられないの。

だからせめてここにいる間はおねーさんの力になってあげる。








シルフの森には昔から悪戯好きな四妖精が住んでいるとされている。

悪戯の内容はお菓子類の盗み食い、幻覚を見せて元来た道を戻らせるなど。


森を穢す者には攻撃的になり、風の刃で身体中を切り刻んでいく。

エルフなど森の住人を傷つけようものなら木の巨人が押し潰しに向かう。


最も危険なのは妖精やお気に入りを虐めたら森から永久に出られなくしてしまう。

そして……………。






「おい…………なんなんだよあれは!?」

「見るな!!正気を失うぞ、走れ!!」


冒険者はエミリアを探しにやってきた。

だがハンナとナタリーにより仲間を二人失い逃げ出した。

しかし悪戯妖精………ティカルの怒りに触れた冒険者は森に閉じ込められた。



ズズズと何かを引きずるような音が彼らの背後に迫ってくる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


冒険者の一人は振り向いてしまった。

そして理解してしまった。


見てはいけないものだと。


彼は発狂し走り始めた。





ティカルは『掃除屋』を向かわせたのだ。

彼女達妖精はある程度力があると領域内の魔物を操ることができる。

だが魔力をかなり使い、最悪その場から動けなくなることもあるため滅多にこの力は使わない。




「ウワァァァァァ!!」


『掃除屋』は発狂した冒険者を処理する。

彼がその場を通るだけで冒険者は跡形もなく消え去った。


『掃除屋』はその場に留まる。


狩りは彼の本分ではない、だが彼は焦らない。








ここは妖精が作り出した空間。あの冒険者に逃げ場は存在しないのだから。

名称:ズ=グ

系統:不明

全長:不明

ランク:S


古くからハンターに『掃除屋』と呼ばれ恐れられている存在。

あらゆる森に生息するがいずれも目撃例は皆無。彼の放つ音のみで存在が知られている。

生物の死に敏感で、感じとると即座に付近に身を潜める。魔物が食事を終えると残った遺骸を全て彼が平らげる。自分からは獲物を探すことはなく、遺骸のみを食事とする。

この為、彼が生息する場所には遺骸が魔物や人間問わず一切残らず遺品回収は不可能となる。

その容姿は誰も知らないが、ベテランハンターによると『根拠はないが見たら発狂する、だから誰も知らないんだ』だとか。




『魔物生態報告書』 著:アリス・ヘッセンベルク

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