死神少女は警備する
【ブランウェル王国 シルフの森】
エミリア達五人は再び港町へ向けて森を進んだ。
とはいえこの森は世界最大級の広さ、迷わずに進めても森を抜けるのにあと一日くらいはかかるだろう。
彼女らは追われている身でありながら殺伐女子トークを交えながら歩いていた。
邪神殺し、竜、賢者、ハンター、聖女といった面々はそこらの冒険者では太刀打ちできない戦力だった。特にエミリアという存在はそこにいるだけで彼女達を安心させ、心にいくらか余裕が生まれていた。
「はぁっ……はぁっ……。」
「クリス休む?」
「申し訳っ………ありませんっ………。」
「朝から歩きっぱなしですものね。」
五人の中で一番スタミナの無いクリスティアナがへばってきた。
法衣が汗で張り付き気持ち悪そうだ。
「あそこで休もう?」
エミリアが指差す方向には泉が見えた。
三人の少女が泉で水のかけあいをしている。
クリスティアナを綺麗にするはずだったが、何を思ったのかナタリーとハンナが水をクリスティアナにかけてびしょ濡れにしたのだ。
怒ったクリスティアナが二人を相手に水のかけあいを始めだした。
その後びしょ濡れになった衣服をその辺の木にかけてバトル再開して今に至る。
そんな光景をハイライトが消えた瞳で眺めるのが切り株に腰かけたエミリア。
視界に入る自分にはない山を懲りずに妬んでいる。実はナタリーにエミリアも一緒にと誘われたが断固拒否。
女性らしい体つきの三人に未だ子供体型を晒すのはどうにも抵抗があった。なのでレイラの世話を理由にこうして妬みつつ眺めているのだ。もげればいい。
「むぃ~~~。」
ちなみにレイラは膝の上でいいように顔を弄くり回されていた。本人がとくに嫌がる素振りを見せないため頬っぺたが伸び縮みしていく。
竜とは思えないもちもち肌にエミリアはすっかり虜になっていた。
「レイラ………もちもちすぎ。」
「うぇ~?」
頬っぺた弄りをやめて今度は抱き締める。
小さな体からちょっぴり暖かさを感じた。
いつもより大胆なエミリアにレイラは少し驚いた。
「誰にも邪魔なんかさせない…………皆私が守る…………。」
「お姉ちゃん………。」
レイラを抱き締める力が少し強まる。
自分たちは追われる身、それで離れ離れになるのが怖いのだ。
「っ。」
突然エミリアが森の方に顔を向けた。
レイラを離すと立ち上がる。
「ごめん、ちょっと待ってて。」
エミリアがどこかへ向かおうとする、がレイラが袖を掴む。
「レイラ?」
「私もお手伝いする。」
「んー…………。」
これからエミリアがやろうとすることをレイラはなんとなくわかった。エミリアとしては見せたくないのだが。
「じゃあ………一緒に行こうか。」
「うんっ。」
仕方なくレイラを連れていく。
三人の水遊びが終わるまでには事を済まさなければ。
その冒険者の男二人はエミリア捜索の最中、偶然にも泉にやってきた。
そこには夢のような光景が広がっていた。
水浴びをしている美少女達は冒険者達に気づいていない。
無防備な彼女らに見ているこっちが恥ずかしくなる。
ふと、近くの木に三人の物と思われる衣服を見つけた。男が邪な表情を浮かべた。
気づかれないようにその木に近づいていく。
少女の楽しそうな声が聞こえる。
やがて男が衣服のかかった木に近づいた時だ。
突然凄まじい力で肩を引かれ、倒された。
目を大きく開いた少女が男を見下ろしていた。
助けを呼ぼうと男が叫ぼうとするがエミリアが即座に首を絞めだす。その小さな体からは想像もできない力が男の首を絞めていく。
ふと、右の方に仲間が木に縫いつけられているのが見えた。少女には不釣り合いな大きな剣が突き刺さっている。
呼吸ができなくなり、意識を失っていく男は気づいてしまった。
俺たちは敵にしてはいけない奴を敵に回してしまったと。
何かが折れる音がした。
「レイラ、お願い。」
「うん。」
レイラは躊躇なくお願いを聞いてゴミを処理した。




