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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
漆 ―王国脱出―
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死神少女と森の珍客

【ブランウェル王国 シルフの森】

「オォ~~?」



ハンナが食糧を採りに行っている間に四人は珍客と遭遇していた。


それは足と胴体のみの魔物、顔と呼べる部分には大きな口だけが存在した異質な存在だった。

体は何やら液体のようなもので覆われている。


「何ですのあいつは………?!」

「皆下がって。」


エミリアが三人の前に出て身構える。

以前過ごしていた森では見たことない魔物だ。

エミリアの後ろに下がった三人も魔法で助ける準備。


「オォ~~~~。」


魔物はゆっくりとエミリアに近づき、目の前にまでやってきた。

ところがエミリアは攻撃する気配がない。

どうしたのかと三人は気が気でない。魔法を使おうにも魔物と近すぎて巻き込んでしまう。

想像したくない未来がやってくるのか、それとも………。


「オォ~?」


魔物は大きな口をエミリアに近づけた。まるで香りを確かめるかのように身体中を探っていた。

ナタリーの激怒ゲージが貯まってきている。


「オォ。」


満足したのか魔物は何処かへ去っていった。










「大丈夫ですかエミリア。」

「ん。」


魔物が去ったのを確認して三人がエミリアの元へ集まる。


「なんか敵意を感じなかった。単に餌と見られなかったのかも?」

「草食なのでしょうか?なんだか不思議な魔物でしたね。」


魔物の考えることはわからない。敵意を剥き出しにしていない魔物を刺激するのはよくないとエミリアは手出ししなかったのだ。






しばらくするとハンナが戻ってきた。

魔物が去っていった方向だ。


「みんな大丈夫?!変なの来てなかった?!」

「変なの………さっきの魔物のこと?」

「来てたの………?無事ってことは何も手出ししてないんだよね?!」

「う、うん。」


見たことのない迫力にエミリアは流石にたじろいだ。










「ゾゾレイル。私たちハンターは『叫び食い』って呼んでる。」

「さけびぐい?」


ハンナの採ってきた木の実やキノコを食べながら四人は先程遭遇した魔物について聞いていた。

紫色のヤバそうな色合いの木の実を齧ってハンナが話す。毒はない。

周りをきょろきょろしてまた話を続ける。


「あいつは動くものを何でも口に入れて丸飲みにしちゃうの。獲物の叫び声がまるであいつが叫んでいるように見えるから叫び食い。」

「ハンナ様、こちらを。」


ナタリーがハンカチを渡した。

袖で口についた紫を拭おうとしたらしい。


「んぐっ。でね、あいつは音を頼りに獲物を探してるの。洞窟とか暗い場所に住んでるわけでもないのに。だからエミリア達が動かなかったことで餌と認識されなかったんだろうね。」


偶然とはいえエミリアの行動は正解だったらしい。

もしあれで攻撃を仕掛けていたら今ごろは胃袋の中だろうか。


「エミリア、次は倒すみたいなこと考えないでよ?あいつには剣とかが一切効かないんだから。」

「んー?どういうこと?」

「あの体は粘液で覆われてて、あらゆる衝撃を吸収するの。たちが悪いことにあの粘液は色々なもの溶かしちゃってさぁ………。」


ハンナはそれから黙ってしまった。表情から察するにひどい目にあったのだろう。

多くのハンターは魔法が使えない。

そんな彼らにとって武器が通じない魔物は最悪の相手だ。




エミリアは相棒のグリムリーパーを眺めた。

元聖剣もあれに溶かされるのだろうか。

そうなったら何もできず食べられていたのかもしれない。











同じ頃、エミリア捜索の為にとある冒険者パーティーがシルフの森を訪れた。

男四人で組まれた彼等はつい最近Cランクに上がったばかり。それなりに危険なダンジョンも潜ったし、多くの魔物とも戦った。


「オォ~~~?」


そんな彼らの前には胴体と足しか無い魔物が現れた。

大きな口を冒険者に向け何やらもごもごしている。


「リーダー、どうする?」

「俺たちは無敵だ!やるぞ!」




勝負は数分で決した。

ゾゾレイルが詠唱を始めた魔導師にタックルし、怯んだところをそのまま丸呑みしてしまった。

ゾゾレイルに物理技は効かないが魔法は効く。唯一の対抗手段を失った冒険者。

丸呑みにされた仲間を救おうと剣や矢で応戦。だが体を覆う粘液に阻まれ魔物は無傷、更に剣は溶かされてしまった。


「リーダー、逃げた方がいいって!!」

「馬鹿野郎!仲間を見捨てられるか!!」


リーダーと呼ばれた冒険者はウォォーと叫びながら予備の剣で斬りかかった。

だがこの剣も溶かされてしまい、とうとうリーダーは胃袋の中に入れられてしまった。


残った二人は助けを求めながら逃げ出した。

魔物は声に反応して追いかけてくる。











結局その日、四人は帰ることができなかった。

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