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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
壱 ―姿無き英雄―
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死神少女は死神と呼ばれる

【ブランウェル王国 レイド山 山頂】

レイド山の山頂にはフレイムドラゴンの巣がある。

レイド山最強の名を欲しいままにしてきたドラゴン。


真夜中…………最も危険な場所である領域に少女はいた。



ドラゴンの頭骨と思われる物……それも二つに何やら話しかけていた。


「お父さん……お母さん……私、あの人に付いていくことにしたよ。ずっとここで人間さんを相手にするのはすっごくいやだった。…………おねえ……ちゃん………はいつも寂しそうにしていた。だから私がお姉ちゃんを守ってあげるの。多分喜んでくれると思うな。」


頭を撫でてもらったことを思い出してにやけてしまう。

最後に撫でてもらったのは何年前だろうか。


「お父さん、お母さん。私行くね。今度は私がお姉ちゃんを守るんだ。」


少女の身体は輝きだし、どんどん大きくなる。

やがて一頭のドラゴンになると


「グオオォォォォォ!!!」


雄叫びをあげ、と自身の領域から飛び立つ。









さようなら








名残惜しそうに振り返りつつ、あの人の場所へ向かう。


途中で人間の姿に戻るのを忘れない。

お姉ちゃん以外には隠さなければならないことだ。



そしていつもの場所でまた会いに………















【ブランウェル王国 ガンダル村】

夜が明けて、エミリアは宿のおばちゃんに心配させた事を謝っていた。


あの後、近くの湖で身体と衣服を洗っていたのだが下着に染み付いた返り血がどうしても落ちず、ずっと格闘していたのだ。

結局夜明けまで頑張ったが落ちず、どうせ見えないし次の町で買い替えればいいと開き直ることにした。

お陰ですっかり寝不足だ。


勿論そんなことをおばちゃんには言わない。

森で迷子になったとだけ伝えた。




今日で宿を引き払うことを伝えるとおばちゃんは寂しそうに「また来てほしい」と言ってくれた。

本当はもっと居たかったが流石にあの子供たちがエミリアのことを喋ったはず。

冒険者が来る前にさっさと村を出ていくことにしたのだ。






その前にエミリアは鍛冶屋へ向かう。


「来たな。例のブツは出来上がってるぜ、鞘はサービスだ。」


プレートナイフ…………板のような刀身を持つ特殊なナイフだ。

攻撃を受け止める事に特化しており切れ味や威力は二の次、とにかく耐久力を重視している。

とはいえ普通に斬ったり刺したりも可能である。その代わり普通のナイフより一回り大きい。


「エビルベアの切り裂きにだって耐えられるはずだ。俺が言うんだ間違いない。」


髭もじゃは満足そうに頷いている。


「久しぶりにいい仕事ができたぜ。またの利用をまってるぞ。」

「ん、ありがとう。」


ぺこりとお辞儀をする。











村の広場に貼ってある王国地図を見る。

次は…………東にある少し大きい町にでも行こうか。






村の出口に赤髪少女はいた。

少し様子がおかしかった。


「…………どうしたの?」


赤髪少女は黙ってエミリアをじっと見ていた。


そして



「わ………私も、連れてって!」




予想外の言葉だった。


「……誰かと勘違いとかしてない?」

「お姉ちゃんがいい!」


勘違いではないらしい。


「お父さんとお母さん心配するかも。」

「もう言ってきた。」


了承済みだった。


「昨日の見たでしょ?私の悪いところ…………一緒にいるときっと何度も見ることになる。後悔すると思うよ?」

「お姉ちゃんのおかげで、私も皆も助かった。だから今度は私が助けたいの。後悔なんて絶対にしない。」


頭を押さえる。

この子にはまだ将来がある。悪い風に育たなければいいのだが。


「わかった。じゃあ一緒にいこ?」

「うん!!」


手を繋いで村を出た。

心なしか胸が暖かくなるのを感じた。

こういうのは良い、気分がよくなる。

ガンダル村を出た二人は次の町へと向かった。


















時は遡り、昨日の夜


人拐い盗賊アジトに到着した冒険者はその惨状を見て絶句した。

盗賊全員が息絶えていた。

特に二つの死体は酷く、身体中を刺されたもの、顔が無くなっているなど残虐な殺害方法だった。

冒険者の一部は吐いてしまった。


リーダー格の冒険者は子供たちを保護し、ひとまずギルドへ帰還することにした。

すると、口々に


「お姉ちゃんが一人でみんな倒した。」

「青いお姉ちゃんが助けてくれた。」

「強いお姉ちゃんはスーパーヒーローだ。」

「小さいお姉ちゃんが悪者を退治した。」


と、まるで一人の少女が全員を殺害したと言うのだ。

信じがたいことだが嘘を言っているとは思えなかった。


すると冒険者の一人が


「たった一人の女の子が盗賊全滅か……まるで死神みたいだな。」


冗談のつもりだったがわりと洒落にならない。

あぁ、願わくば敵として出会わないことを願おう。

普段好き勝手に行動する彼らもこの時ばかりは考えが一致した。

一章完結しました。

主人公、ほとんど喋りませんがどうか見守ってあげてください。

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