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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
漆 ―王国脱出―
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死神少女は賢者と聖女を壊す

【聖都跡地】

ファントムクロウを通じてリリノアがエミリアの置かれた状況を伝える。


「王族殺害未遂って貴女一体何したのよもうっ。」

「んー………えと……。」


エミリアは歯切れが悪い。さすがに第二王子を半殺しにしましたとか言えるわけがない。


「いいわ、深くは聞かない。とにかく今そっちに王国の第三騎士団が向かってるの。」

「第三騎士団………。」


クリスティアナの顔が青くなった。

王国の騎士団は何度か見かけたことがあるが、中でも第三騎士団は悪い意味で印象に残っていた。

団長を始め粗暴な輩が多いのを覚えていた。

クラークに連れられ訓練の見学に赴いた際は露骨に邪な表情を浮かべクリスティアナを見てきた。

さすがに王子の前で手は出されなかったが………思い出すだけで身震いしてしまう。

態度はともかく強さは王国騎士団に相応しいものだ。


「いい?よく聞いて。第三騎士団の連中は強いけど馬鹿ばかりだから、エミリアちゃんさえ見つからなければなんとかなるかも。港まで来てくれれば帝国まで連れていけるのだけど………」


聖都から港町へ行くには王都かシルフの森を通り抜ける必要がある。

森は迷いやすく、王都は危険でしかない。


「重要なのはエミリアちゃんが見つからないこと。幸い王国の連中はエミリアちゃんの仲間に関しては何もわからないみたいだし。」

「リリノアさんは来れないの?」

「実は冒険者ギルドにもエミリアちゃん捜索依頼がでてたの。だから私とセリカは手助けできない、ごめんね。」


リリノアは申し訳なさそうに言う。

確かに王国の冒険者が逃走を手伝うのはさすがに不味いだろう。


「ん、じゃあ港へ行けばいいの?」

「そうね。後で私たちも帝国へ向かうからそこで落ち合いましょう。」


そう言い残すとリリノアのファントムクロウは軽く鳴いて飛び立った。


「お姉様、第三騎士団を回避する良い方法が。」

「ん?」











【ブランウェル王国 マルティアナ平原】

五人はシルフの森を通って港へ向かうことにした。

聖都の門は石像がぶち破った為、中央部分が人型にくりぬかれていた。


門の影からエミリアがおずおずと出てきた。

いつもの格好ではなく、以前ナタリーが着せたゴシックロリータな黒いドレスを着ていた。

元々実年齢未満の容姿のエミリアはこのドレスでより一層幼く見える。

やはり着なれないからか顔を赤くしながらフリルの付いたスカートをおさえた。


「本当に………この格好じゃなきゃだめ?」

「勿論!これ以上無いくらいかわい………完璧な変装ですわ!」

「うぅ~………」


すっかり俯いてしまったエミリア。


「大丈夫だよ!エミリアすっごい可愛いから!」

「えへへ、お姉ちゃーん!!」


元気づけようと遠慮なしに両サイドから抱きつく二人。

その光景を暖かい目で見つつも羨ましそうなクリスティアナ。


「で、どこへ行くつもりですか?」

「んぐょぇっ。」


エミリアの服を持ってどこかへ行こうとしていたナタリーのローブを掴む。スワンプフロッグが潰れたような声が上がった。

蛙声を出したナタリーは半ば興奮気味に詰め寄る。


「だってお姉様の脱ぎたてですわよ?!」

「脱ぎたてとか言わないでください。」

「お姉様の温もりが絶対に残ってますっ。こんな機会今後絶対にないですし楽しもうかと」

「聖女パンチ。」

「うぐぅっ」


聞いていられなくなったクリスティアナはナタリーの柔らかいお腹に一撃。エミリアの服を奪い取った。


「貴女に持たせたら危険です。これは私が預かります。」

「ぐっ……そんな無慈悲な………。」


クリスティアナはうずくまるナタリーを無視し、改めてエミリアの服を見つめた。

さっきまで着ていた服………。確かに少し温もりを感じた。ナタリーが興奮するのも無理はない。


「クリス………やっぱりそれ返して?」


いつの間にかエミリアが近くに来ていた。

背中に抱きつくレイラとハンナを気にせずクリスティアナを見上げていた。



ゴスロリエミリアの上目遣いはクリスティアナには破壊力が高すぎた。


「あああああっ!!」

「クリス?!」


何を思ったかクリスティアナは瓦礫に頭を思い切りぶつけた。


「エミリア…………それはだめですよ………。」


振り返ったクリスティアナの額から血が流れていた。どうやらギリギリで理性を保ったようだ。

迫力ある画にさすがにエミリアは後ずさる。


「申し訳ありません、これは向こうに着いたら返しますね。」

「うぅ~………意地悪。」


エミリアの服は収納魔法でクリスティアナの空間に消えていった。









クリスティアナの理性がなんとか欲望に勝ち、一行は森へ向け歩き出した。


ちなみにグリムリーパーはハンナが持っている。

意外にも稲妻は起こらなかったため主人の味方かどうか判別できるのかもしれない。






五人が数十人の兵士を連れた騎士団に遭遇するのはそれから数分後のことであった。

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