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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
陸―聖都の伝説―
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死神少女は闇剣を少し使いこなす

【聖都ラ・ブランダス】

足を失った邪神は腕を振ることしかできない。

だがそれだけで石像は近づけなくなってしまった。

腕のリーチは意外にも長く、ほぼ全方位をカバーしていた。




そこへ近づく小さい影はエミリア。

等身の高い邪神は小さな人間を見失いやすい。


背の小さいエミリアは動かなければほとんど見えない。

瓦礫に身を隠しながらエミリアは邪神に近づいていく。

邪神の腕が頭を掠めていく時は流石にヒヤヒヤする。




邪神の背後に回り込んだエミリアは背中からナイフを刺してよじ登り始めた。

石像やフレイムドラゴンの攻撃で邪神の体はひびだらけになっていた。



「ヌッ!マタ懲リズニ来タカ!」


背中を這い上がるエミリアに気づいた邪神は追い払おうと手を払う。

と、待っていたと言わんばかりに男性の石像が殴りかかった。


「エェイ邪魔ヲスルナァ!!」


邪神が石像の相手を始めた。その間にエミリアは邪神をよじ登っていく。

石像が殴る度に邪神が大きく揺れ、エミリアはその場で踏ん張る。石像もまた無感情に邪神を攻める。




地上からはエミリアがよじ登っていく様子がよく見えた。

邪神が揺れてエミリアが落ちそうになる度にナタリーがギャーとらしくもない悲鳴をあげハンナが苦しそうに耳を押さえた。ナタリーの高音の悲鳴はアウトらしい。

その間にも魔物は三人に襲いかかる。

聖騎士より弱そうだと思われているのかもしれないが、個人の戦闘力は全員聖騎士を越えている。


耳鳴りに悩まされながらもハンナはハーピィを打ち落とす。

ナタリーが五月蝿いのでクリスティアナも聖魔法で魔物を駆逐する。


「かの邪悪なる者達を消したまえ。『ホーリーレイ』!」


クリスティアナの後方に光の球が出現した。

光球は円状に隊列を組むと前方に向けて光線を照射し始めた。


射線上の黒いウルフは光線に貫かれ、肉片と化した。

聖属性魔法は聖女自身を守るためのもので、通常の魔法よりも威力は段違いだ。

それ故にクリスティアナはあまり使いたがらない。あまりにも残酷だからだ。


「うぅっ………。」


大量の肉片を見てクリスティアナは吐き気を催した。

彼女はこういったものを見慣れていなかった。






エミリアが邪神の頭に着いた所でいよいよ邪神は激しく暴れるようになった。

頭のエミリアを落とそうと両腕をぶつけようとする。


が、エミリアの意図を汲んだのか二体の石像は邪神の両腕を拘束した。


…………今がチャンスか。


エミリアは邪神後頭部にある魔法石の前に立つとグリムリーパーを構えた。






「二度とここに来るな。」


魔法石にグリムリーパーを突き刺した。

魔法石は激しい光を放ち出した。


「グギャアアアアア!!!」


邪神は石像に捕まっているにも関わらず大暴れをする。

揺れる足場に耐えつつエミリアはグリムリーパーをさらに魔法石に差し込む。

グリムリーパーが一際赤く光り出す、すると魔法石の光が薄くなっていく。


「ナンダ?!力ガ抜ケテイク?!」


どうやらグリムリーパーは邪神の魔力を吸いとっているようだ。

エミリアは更にグリムリーパーを深く突き刺す。


「わっ!?」


邪神が乗っていた足場が崩落し、エミリアは突き刺さったグリムリーパーにぶら下がった。

が、みしみしと嫌な音が聞こえてきた。




やがてグリムリーパーは魔法石をくりぬき、エミリアと共に落下した。


今日だけで何回落ちただろうか。

エミリアはグリムリーパーを大事に抱えて目を閉じ、衝撃に備えた。













「ぐへぇ。」


何か柔らかいものに落ちた。

声から察するにハンナが下敷きになったらしい。


「間に合ったぁ………げふっ。」

「ハンナ、ありがと。」


咳き込んではいるが案外彼女は大丈夫そうだ。

ハンナから降りてスカートについた砂をはらう。



「ヌアァァァァ!!コンナ子供二我ガヤラレルナドォォ!!」


邪神は激しい雄叫びをあげる。

魔法石を失った邪神の身体は動きが鈍くなり、やがて完全に停止した。


頭部から煙のようなものが見えた。

邪神を押さえていた石像も動きを止めた。











「終わったの?」

「多分?」

「お姉様ぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ぐふぅ!?」


エミリアにナタリーがいつかのように突撃した。

疲れきったエミリアは反応が遅れ、腹にまた一撃もらう。今度は気絶しない。


「あぁぁぁお姉様!!こんなに可愛らしいお姉様が邪神を討伐するだなんてっ!!」

「ナタリー、ちょっ、おちつっ。」


エミリアはナタリーに抱きつかれ、頬擦りされた。

慣れないことにエミリアはもがくことしかできない。ハンナはおぉーと何か感心してる。


「お馬鹿。」

「いだっ!」


ごつんとナタリーを殴るのはクリスティアナ。

レイラは彼女が背負っていた。


「一番の功労者になんてことをしているのですか貴方は。」

「お姉様分を。」

「エミリアは疲れてるのです。そこを気遣い、労うべきなのです。」


クリスティアナはもみくちゃにされたエミリアに近寄る。

なぜか服が乱れておりクリスティアナの顔が赤くなる。


「エミリア、まずは聖都を代表してお礼を。………まさか貴女が邪神を倒すとは思いませんでした。」

「ん、あれがいるとクリスとか困ると思ったし?」

「貴女らしいですね。」



「聖都はもう機能しません。邪神も消えたことですし、私もお役御免となるでしょう。」

「ん?あぁそっか。」

「エミリア、どうでしょう。その………私も貴女と共に行かせてくださいませんか?」

「ん、いいよ。断る理由ないし。」

「クリスティアナ様、別にお姉様なら言わずともお許しになると思いますわよ?」

「癖のようなものです。」


邪神が消え聖都が崩壊したことでクリスティアナは聖女としての役目を果たす必要が無くなった。

遠慮のなくなったクリスティアナはようやくエミリアと共に行動することにした。








「なんだ、もう終わっていたのか。」


振り返るとそこには黒いマントを纏った大物感漂う青年がいた。

背後にも人間とは思えない人物四人、更に数十人の異形の兵士らしきものが控えていた。




魔王デスロードと四天王、魔王軍がやってきたのだ。

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