死神少女は王国を敵に回す
【聖都ラ・ブランダス】
真っ黒な剣………グリムリーパーを持ったエミリアからの殺気は明らかに膨れ上がっていた。
目の前の男を倒す、それ以外何も考えていない風にも見える。
「武器を手に入れたからといってお前が殺されることに変わりはない。」
クラークは構え突っ込む。エミリアは避けるそぶりをせず、じっと見ている。
クラークが間合いに入った時、ただならぬ寒気を感じた彼は後ろに飛び退く。直後エミリアは回転し凪ぎ払った。凪いだ跡に赤く残光が見えた。
「なんだそれは………聖剣の光ではないぞ?!」
「………。」
エミリアの目は大きく開かれており、体はゆらゆら揺れていた。
「頼りになりそうな子………あんたを最初の餌にしてあげる。」
剣と剣がぶつかる音が響く。
銀色の剣と黒い剣は光と闇を連想させる。
赤い残光は黒い剣の異常性を表している。当たればただでは済まされないだろう。
「化け物が………俺が討伐して首を持ち帰ってやる!」
鍔と鍔がぶつかり合う。負傷しているエミリアは少し苦しそうだ。
鍔迫り合いしたクラークはエミリアを突き飛ばすとそのまま突進した。
「死ね!!」
「ぐっ………」
クラークの剣はエミリアの腹を深く突き刺した。
次の瞬間クラークの首が掴まれた。
「放せっ…………どこまでも邪魔をっ!!」
首を絞めてるエミリアを引き剥がそうとするが、爪まで食い込ませている。
力を入れるほど深く食い込んでいく。
グリムリーパーがクラークの首の後ろに当てられた。
「俺を殺すと王国を敵に回すぞ………」
「…………構わない、あんたが一人居なくなったところで」
エミリアをクラークが突き飛ばした。反動でクラークは尻餅をついた。
「ごほっ………」
エミリアが血を吐いた。腹には剣が突き刺さったまま、そのままクラークに近づいていく。
「なぜ死なない………本当に人間なのか?!」
「何言ってんの?私は人間、まだ死ぬわけにはいかないの。」
グリムリーパーを振りかぶり…………ぶんまわした。
クラークの右足が切断された。
「ぎゃぁぁぁ!!」
「おぉ。」
思った以上の威力に思わず感心。
苦痛にのたうち回るクラークをエミリアは見下ろす。その表情は無。
「痛いよね、ほっぺぶたれたクリスの気持ちわかった?」
グリムリーパーを再び構えるとクラークを切り刻んでいく。血しぶきが飛び散り、絶叫が響く。
エミリアは気にせず解体していく。
やがてクラークの体は右腕と首を除き全て切断された。
「あんたなんかどうでもいい、でもクリスはあんたを殺すなって言ってたしこれで勘弁してあげる。」
よろよろ揺れながらエミリアはその場から立ち去る。目指すはさっき目についた魔方陣。
多分上に戻れるだろう。
ふと上を見上げていたら穴が暗くなる。
大量の瓦礫が落ちてきた。大聖堂が崩れ落ちてきたのか。
「あー…………。」




