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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
陸―聖都の伝説―
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死神少女は襲われる

【聖都ラ・ブランダス】

大聖堂地下にてクラークは祭壇の台座に突き刺さる剣に近づく。僅かに白く光る剣からは神々しい何かが感じ取れた。


剣に近づくにつれ心臓の鼓動が激しくなっていく。あれを抜いたらどうなるのかくらいはわかる。だが体が言うことを効かない、クラークの意志とは関係なく歩いていく。


黒い靄と別れてからこの現象は起きていた。あの靄がクラークに何かをしたらしい。

あれは最初からこれが目的でクラークに近づいてきたのだ。もう彼は抵抗することができなくなっていた。




祭壇の剣は無情にも引き抜き始める。

引き抜くときに巨大な電撃がクラークを襲った。聖女の結界による効果で剣を引き抜こうとする者に致命的な電流を流す。

だが彼の体はもはや言うことを効かず、電撃を無視して剣を抜いた。


直後地鳴りが起き、クラークは思わず伏せた。


剣が刺さっていた場所から禍々しいオーラを放つ煙のような物が出てきた。それはどんどん大きくなっていく。やがて煙は正面の石像へ吸い込まれていった。



再び地鳴りが起きる。今度は先程よりも規模が大きく、地震に近い。

クラークは立っていられなくなり転倒した。




地響きと共に巨大な石像が動き始めた。永年封印されていたかのように腕を大きく回している。


「時ハ来タ、今コソ我ガ力ヲ示ス時!」


邪神ズウェン、その封印は実にあっけなく解かれてしまった。


「マズハ貴様ヲ我ガ眷属ニシテヤロウ。」


クラークにもはや抵抗する力はなく、ズウェンが出した黒い煙に包まれた。




「シカシ動キニクイ、人間ドモハ我ガ復活ヲ予期シテイタノカ?」


ズウェンは地上へ向けて壁をよじ登り始めた。

真上は大聖堂、地上はパニックを起こしていた。








「そんな………結界を突破された?!」

「……下に大きな気配を感じる。早く逃げた方がいい。」


エミリア達は部屋から飛び出る。先頭をハンナ、続いてレイラ、ナタリー、クリスティアナ、最後にエミリア。



大聖堂のホールには神官達が集まっていた。

クリスティアナがラーグネスを見つける。


「大神官様!!結界が…………!!」

「えぇ、わかっています。同時にかなり邪悪な存在が現れました。」

「………。」

「クリスティアナ、奴に見つかったら先ず君が狙われる。エミリア殿と一緒に逃げるべきだ。」

「……大神官様は残るつもりですか?」

「大神官が仕事するのはこんな時くらいしかない。邪神復活の報は世界に届けた、あとは奴の足止めさ。」


ラーグネスは覚悟を決めたような顔をしていた。


「クリス。」

「………どうかご無事で。」


エミリア達は大聖堂から脱出した。


突然ホールに大きな穴が開いた。そこから巨大な石の手が出てき、続いてあの邪悪な笑みを浮かべた石像…………ズウェンが這い出てきた。


下位と思われる神官は怯え始めた。

目の前に魔物なんて比ではない邪悪な存在が現れたのだ。


「忌々シイ人間ドモメ、面倒ナ体マデ用意シテイルトハ!」

「気に入っていただけましたか?貴方が憑依しやすいように作った自慢の石像は。」


邪神は実体を持たない。当時の邪神は巨大な悪魔のような見た目だったが、あれは全く関係のない大悪魔の体だった。邪神封印の実行者であるプルームは万が一に備え動きにくい入れ物を作らせた。自分の目の届かない世に邪神が復活することを恐れていたのだ。

そして今日邪神は復活した。その際に邪神は無意識に石像へ体を憑依させたのだ。


「ダガ我ガ力ハ既ニ目覚メテイル。誰一人ココカラ逃ガサン。」


邪神が両手をあげると上空に魔方陣が現れた。

そこから黒い魔物…………変異態が降ってきた。


「ガルルル」

「キエェェ!!」

「グアォ!」


黒い魔物は逃げ惑う人々に襲いかかった。











大聖堂を脱出した一行は黒い魔物に追い付かれ迎え撃っていた。


「キリがないなぁ、親玉なんとかするしかないんじゃない?」


ハンナがブラックウルフをマチェットでズタズタにしながら言う。

レイラとナタリーは一緒に炙っていた。


「しかしあれに弱点なんて想像つきませんわ。」

「いえ、心当たりならあります。」


皆に守られるように後ろにいたクリスティアナは語る。


「以前全体像を見たのですが、頭の後ろ部分に大型の魔力石が嵌め込まれてました。あれを倒せるかはともかく動きは止められるかと。」

「面倒くさいなぁ。なんであんな石像つくったのさ。」

「そのおかげで邪神の力がかなり制限されてるようですが、復活した後のことは考えてなかったようですね………。」


石像の体を手に入れた邪神は先程から魔物の召喚を続けたり歩いたりはしているが、他に魔法を使うような様子は見られない。


「相手をするしかないですわね………お姉様、面倒ですが参りましょう。」


放置をするときっと帝国まで影響が及ぶ。

今ならなんとかできるかもしれない。ナタリーはひとまずエミリアがどうするか聞いてみる。嫌だったらそのままとんずらするつもりだ。


「お姉様?」


しかし愛する姉の返事はない。


「お姉ちゃん………?」

「え、どこ行ったの……………?」

「お姉様………そんな………。」


四人の顔が一気に青くなった。


「まさかまだ大聖堂に………っ!?」


直後大聖堂が崩れていった。

四人は悲鳴をあげた。













「いっづ……………」


エミリアは邪神が這い出てきた時、出てきた穴に落ちていた。

背中を打ち付けた彼女は動けずにいた。だがそれ以上にまずいことにすぐ気づいた。


この場に殺気を放つ気配が一つ。



「また会ったな、今度は俺が勝つ。」


黒い靄を漂わせたクラークが現れた。








死ぬかもしれない。

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