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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
伍―邂逅―
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炎竜の過去

今から200年以上前、レイド山に新たなドラゴンが誕生した。

人懐こい魔物らしからぬ性格だが、両親は子竜に厳しさと優しさを与えながら育てた。


子竜はやがて自分で獲物を仕留められるようになった。

ブレスはまだ下手だが接近戦では負け知らず。

小さくてもドラゴン、たいていの魔物では歯が立たなかった。


邪神が降臨して数日後、父竜は邪神と戦い散った。

泣きわめく子竜を母竜があやす。

お前はドラゴン、強い子。

父のためにもっと強くなりなさい、と。

子竜は泣きながらも、強くなると約束した。







母竜に甘えていたときにその人間はやってきた。

小さい人間が二人いて、黒い頭と青い頭だった。

黒い人間は母竜を悪いドラゴンだと言い攻撃した。

子竜は岩影に隠れ母竜が立ち塞がる。

母竜は黒い人間にブレスを放つが避けられ、剣で斬られていく。

青い人間は黒い人間に何かを言っていたが無視された。




やがて母竜は力尽き息絶えた。

黒い人間は満足したのか山から下りた。


青い人間は母竜に寄り添う子竜に近づき


「ごめんね…………あんなのがいてごめんね…………。」


ただただ泣きながら謝った。

頭を撫でてくれたその手は母の温もりを感じた。













子竜は成長した。

身体が大きくなり隠れることができなくなった。

百年近く一人ぼっちの子竜は母の温もりが欲しくなった。

時折空に向かって咆哮をあげる。


これだけで魔物が逃げ出すほどに子竜は強くなりすぎた。





ある日人間が数人やってきた。

撫でてくれないかと頭を出したら攻撃された。


手にもつ物は母を倒した物に似ていた。

瞬間、母が殺された場面が脳裏をよぎる。

まだ殺されたくないと子竜は尻尾を薙ぐ。


二人が吹っ飛び一人が怯えた表情を見せ方。

飛んだ二人は怯えた一人を連れて逃げ出した。

子竜は唸り声をあげ眺めた。

また来るのだろうか。

痛いのは嫌だなぁ、と子竜は身体を丸め寝る。




その日から人間の襲撃が始まった。

子竜はあの撫でてくれた人間の手の感触が忘れられず、人間が来る度に頭を出したが決まって斬られた。

その度に一撃いれて退散させた。

子竜はただ甘えたいだけなのだが、言葉の通じない人間には頭をだすドラゴンは恐怖の対象でしかなかった。




人間の襲撃が始まり数年、子竜はとうとう一人の人間を殺した。

尻尾の攻撃でなかなか退散せず、ブレスを放ったら黒焦げで動かなくなったのだ。

一緒に来ていた人間は仇を討つために猛攻撃をしかけた。

子竜の身体が傷つき始め、再びブレスを放つと残りの人間も息絶えた。



子竜は空に向かい悲しげな咆哮をあげた。


もうこんなことは嫌だ。

どうして皆痛いことをするの?

私がドラゴンだからいけないの?





泣きつかれた子竜は目を閉じた。



人間と同じ姿なら痛いことをしないのかな。



そんな事を思いながら。












翌日、子竜は身体に違和感を感じた。


いつもより目線が低い。

尻尾や羽の感覚を感じない。

唸り声がいつもより高く出た。



そして人間のような手、身体は広いひらひらに覆われていた。



女神の気まぐれか、子竜は人間の赤い髪をした少女の姿を手にいれた。





人間の姿をしていくつかわかった事があった。


空を飛べない。

岩を殴るとすごく痛い。

ちょっとしたことで怪我をする。

声が綺麗。


「んぅ…。」


身体のいろいろな場所が柔らかい。

何かを念じるとブレスとは違う炎を出せる。






数時間後、やってきた人間に保護された子竜は人間としての生活を学んだ。


心優しい老婆が子竜……彼女に人間としての生活を教えた。

言葉も話せるようになり、村の人間とも会話ができるようになった。



しかし数年後老婆は他界してしまう。


その時に老婆は


「貴方はきっと人間ではないのでしょう?ううん、いいの。貴方は私の大切な娘。だから聞いて?正体を明かしてはダメよ、本当に大切な人にだけ教えなさい。きっといい人が現れるからね?」


老婆は成長しない少女を人外だと察していたのだ。

そんな少女を最期まで育ててくれたのだ。





赤髪少女はうまいこと村に馴染んでいた。

夜にドラゴンとして山に戻ることで誰にも正体をバレずに過ごした。


大切な人ってなんだろう?

赤髪少女にはよくわからなかった。

母や老婆のように一緒にいて安心する人間のことだろうか?


赤髪少女は身体を丸めて眠る。

いつか来てくれるだろう大切な人を思いながら。
















やがて二人は出会う。






「お腹いっぱい?よかった。」


美味しいパンをくれた。

頭を撫でてくれた。

一緒にいて安心する。







「皆、おうちに帰れるよ。」


たった一人で痛い思いをして、


「ありがとう、お姉ちゃん。」


私を助けてくれた青い髪の少女。





私はレイラ。

名前をくれた大切なエミリアお姉ちゃん。

エミリアお姉ちゃんが助けた大切なハンナお姉ちゃん。


ドラゴンの力を二人のために…………

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