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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
肆―ひび割れの魂―
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ひび割れた綺麗な魂

【ブラウェイン王国 シルフの森】

その日、ティカルと彼女の友達の妖精はドラゴンが降り立った場所へ向かっていた。


この森にドラゴンは住んでいない。

そんな場所へ突然飛来した巨竜に妖精たちは騒ぎだした。


ティカルは好奇心が強い妖精だ。

そんなティカルについてくる妖精達もまた好奇心の塊だ。

どんなおっかないドラゴンなのか一目見てみよう。

そんな理由で危険地帯へ飛んでいた。



やがてドラゴンの降り立った地に辿り着いた。

しかしドラゴンは何処にも見当たらない。

あれだけの巨体が短時間で姿を消すとは思えない。


周囲を見て回ると三人の少女を見つけた。

寝ている少女を守るかのように二人は周りを見渡していた。

同時に寝顔も堪能していた。




「見てあの子。あんなにきれーな魂見たことなーい。」


ティカルがエミリアを指差す。


「ほんとだー。見ているだけで癒されるねー。」

「すっごーい。」


ついてきた妖精AとCが口々に。


「あれ?でもヒビが入ってるよ?」


妖精Bは気づいた。

エミリアの魂は今までに見たことのないくらいに綺麗だ。

それと同時に多数の亀裂が入っていた。

かなり深いものもあった。


「こんなに綺麗なのにもったいないなぁ。」


妖精たちには知能を持つ生物の魂が球の形で見える。

白く輝く綺麗な魂もあれば、黒く淀んだ魂もある。


魂とは生物という入れ物次第で白くなったり黒くなったりする。

そんな魂にひびが入っていると、生物として壊れかけているということ。


エミリアの魂は白く光っていながら亀裂が入っている。

人間として壊れるということは人によるが、多くの場合はただひたすら死を求め始める。



この人間は死にたがっているのだろうか?

しかしそれに寄り添う二人を見る限り考えられない。

こんなに慕っている二人を置いていくだろうか?

綺麗な魂ならあり得ない。



ティカルは非常にこの人間が気になった。

こんなに綺麗な魂は今まで見たことがない。

そして亀裂が入り人間として壊れかかっている人間を憐れんだ。


本当はいけないが、ティカル達はエミリアの魂に干渉することにした。

といってもただエミリアの周りで飛び回ったり髪で遊ぶだけ。

これで少しだけ気を紛らして亀裂の広がりを防ぐのだ。

この時、赤い髪の少女が視える子だと気づく。

自分たちを視ることができるのならばと彼女を利用する。

彼女はきっと自分たちが何をしているのか話すだろう。



見てわかるレベルではないが、亀裂が少しだけ治った。





オークとの戦いを見てティカルは理解した。

この人間は死にたがっているのではない、無駄を嫌っているのだ。

その証拠に的確に生物の急所を狙い戦いを終わらせていた。


オークを殲滅してハイタッチする三人。

あの少女もほんの少しだけ笑っていた。





あの目は見たことがある。

寂しさを紛らせている目だ。



少女はきっと誰かに会いたがっているのだ。



彼女の魂は大事な人と離れ離れになったからひび割れたのだろう。

誰なのかはわからない。


ティカル達はエミリアの頭をもふる。

不思議なくらいのふわふわは病み付きになりそうだった。














これはまずい。


エミリアといた二人がオークに連れ去られた。

問題はそれによって魂に深刻な亀裂が入ったのだ。

もし二人に何かあったらきっと彼女は壊れてしまう。

綺麗な魂は壊れてしまうとその反動がすさまじい。

それこそ世界を敵に回すレベルで彼女は…………



きっとこの少女は助けに行くだろう。

ここまで来たら仕方がない、少女の手助けをしてあげよう。

幸いティカル達は補助魔法が使える。

悪戯用に習得したものがこんな場面で使うことになるとは思わなかった。






オークの集落で早速身体強化魔法をかけた。

エミリアの身体が少し赤く光り魔法がかかったことを表した。

今まで以上に素早く動き、鋭い一撃で始末していく。


エミリアが二体のオークを倒し、次の獲物に向かい突進する。


「あっ?!」


エミリアが突然つんのめり、オークに殴られた。

彼女の赤い光が消えていた、ティカル達の補助魔法が1分ももたず切れたのだ。

これに慌てたティカル達は何かの間違いだと再び魔法をかける。




エミリアはどういう訳か補助魔法を1分弱で解けてしまうことがわかり、三回切れてから手助けを止めた。

切れるたびに体勢を崩し、殴られる姿を見てられなかった。






やがてオークキングを倒したエミリア達の前に姿を表したティカルはおまじないをかけた。



ティカルは嘘をついた。


あれには確かに疲労回復の効果がある。



本命は魂の強化だった。

ティカルの目の届かない場所でエミリアの魂を崩壊させないためのものだ。

個人的な私情もあるが、エミリアを世界の敵にさせないためもある。


余程のことがないかぎりは大丈夫なはずだ。









「綺麗な魂のエミリアおねーさん。きっとあなたは凄い人になると思う。もしかしたら異界人を越える勇者さんになれちゃったり?えへっ、私は応援してるからねー。」

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