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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
肆―ひび割れの魂―
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死神少女と小さなおまじない

【ブラウェイン王国 シルフの森】


エミリアはテントで寝かされていた。

レイラとハンナの手によって全身包帯だらけで、見た目は完全に砂漠の魔物になっていた。


「…………。」


服は全部血塗れだったため下着含めて洗い、干してあった。


同性しかいないとはいえ、脱がされるのはどうも苦手だった。

特にいろいろ大きいハンナがいるから尚更だ。


「今のエミリアを見てるとマミーを思い起こすなぁ。」


マミーとは砂漠のアンデットだ。

水を求めて徘徊しているが水が弱点だという。

レイラはお腹に頭を乗せて寝ていた。

そしてエミリアの頭には白い光がまだふよふよ漂っている。


「しかし僧侶さんの魔法でも傷が治りきらないなんて、無茶にも程があるよ。」

「……必死だったから。」

「まぁ私がその立場でもやるかもね。」


ハンナは包帯まみれのエミリアの胸に顔を埋めた。


「最近やってなかったしお願い。」

「………いいけど。」


実年齢は上だが心はまだまだ子供の二人。

やれやれ手のかかる子供だとエミリアは少し微笑む。




「ねぇ、せっかくだしあの薬使おうよ。リーフさんがくれたさ。」

「え?勿体ないよ。」


先日もらったエルフの薬は人間のあらゆる病や傷を治すとされていた。

小瓶だが二回に分けて飲める。


「いやでも」

「善意でくれたんだし、使わなきゃ損だよ。はい口開けてー」

「あ、ちょ、むぐっ」


ハンナは強引に薬を飲ませた。


「えほっ、えふっ……もぅハンナぁ……。」


エミリアはハンナを睨む。

ハンナはエミリアのことになると少々強引に物を進める。

全くの善意なのだろうが。















翌朝


エミリアは随分調子が良かった。

昨日飲んだ薬が効いたのか身体中の痛みがさっぱり消えていた。

エルフの薬は本物だ。レイラかハンナが重傷を負った時にでも使おうか。


スヤスヤ……


次なる問題はエミリアの身体に乗ってる手の平サイズの少女をどうするかであった。









「おねーさん、やっと見えるようになったんだねー。」

「これでお話できるー。」

「やったやったー!」


着替えたエミリアは寝ている二人を起こした。


が、ハンナは周りをきょろきょろしている。

……どうやらハンナには見えてないらしい。


エミリアの前にはとても小さい女の子が三人浮いていた。

これが妖精なのだろう、薄い羽も生えてるし。


「エルフの薬を飲んだからかなー?」

「少しだけ魔力が入ってたからその影響かも?」

「おねーさん魔力全然ないからびっくりしたよー。」


ぐさっとくるが事実だ。


「あ、やっと見えるようになったんだねー。」


もう一体青い服を着た妖精が来た。

他の妖精より僅かに大きいからリーダー格だろうか。

短い桃色の髪の毛一本だけがぴんと立っていた。


「あたしは妖精のティカル。この子達は妖精AとBとCだよー。」

「ティカルちゃんひどーい。」

「自分だけネームド気取りー?」

「所詮私たちはモブってことー?」


ティカルと名乗った妖精はエミリアに近づく。

他三名は意味のわからないことを言っていた。

エミリアはティカルに気になっていたことを聞いてみる。


「ねぇ、妖精って気に入った人間でないと見られないよね?私の何が気に入ったの?」

「んー、おねーさんの魂すっごい綺麗なんだー。」

「魂?」

「うん、あたしたち妖精にしか見えないのー。妖精が気に入るのは魂がきれーな人。」

「綺麗な魂……」


エミリアは今までしてきた残虐行為を覚えていた。

そんな自分の魂が綺麗なのだろうか?


「ねぇ、妖精さんは何て言ってるの?」

「んー……何だか気に入られたみたい。」

「お姉ちゃんって惹かれるタイプなのかな?」


レイラは言葉がわからず、ハンナに至っては白い光にしか見えないのだった。


「ティカル、昨日私に力を貸してくれた?」


ティカルはエミリアの頭に乗っている。

お気に入りスポットになってしまったようだ。


「身体強化魔法の『ブレイブハート』だよー。」


昨日エミリアがオークの集団を相手した時、時々身体が軽くなるのを感じていた。

薄々妖精が何かしたのだろうとは思っていたが。


「あの魔法、本当は10分は持つんだよー?でもおねーさんは何故か1分で効果が切れちゃうからさー。かけ直すの大変だったんだからねー。」


体質なのか補助魔法の対象となっても影響するらしい。

つくづく魔法に縁がない。

おかげでいらない場面でダメージを受けてしまった。


「えへへー。本当はおねーさんについていきたいんだけどー……私たちはこの森から出ると消えてしまうの。」

「そうなの?」

「私はちょっと強いから出られるけどー……二日くらいで消えちゃうかも?この森のおかげで私たち妖精は存在できるようなものだしねー。」


シルフの森には妖精にとって大事な場所なのだろうか。

ティカルは再びエミリアの顔の前に来た。


「おねーさんは私たちのとっておき。だから私たちがおまじないをしてあげます。」

「おまじない?」

「疲れがとれやすくなるかな?おねーさんすっごい無茶苦茶だからねー。」


ティカルは目を閉じて両手を広げた。

彼女の身体が光り始め、スコシズツ光が大きくなる。


やがて光はティカル以上の大きさになるとティカルから離れ、エミリアの身体に入った。


エミリアの身体は少しだけ光り、元に戻った。


「えへへ、おまじないをかけても無茶苦茶はあんまりしちゃだめだよー?」

「えと…………うん、ありがとう。」













エミリア達はその後、ティカル達と別れ森の出口を目指した。



やがて森を抜けるとそこは広大な平原。

そして向こうに見えるのは巨大な町。




ブラウェイン城がある『王都ミゼリオナ』。

少女三人は王都へ向かう。

そこに何が待っているのかは、誰にもわからない。

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