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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
参―見守る者―
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死神少女と海からの使者

【ブラウェイン王国 港町スレイル】

「…………今夜は荒れるか。」

夕方、船の甲板にいたフェイズは呟く。


「寄港している船に伝えておけ。今夜は荒れる、船を繋ぎ止めておけと。」

「へいっ!!」


水夫に伝え沖合いを見つめ今朝会った少女を思う。


「俺の間違いじゃなければ……王国は……」


港町には黒い雲が近づいていた。












宿に戻ったエミリアは動けずにいた。


というのもレイラが膝を、ハンナが胸を枕にして眠ってしまったのだ。

セリカに連れられ二人ともはしゃぎすぎて元気を使い果たしたのだろう、すぅすぅと寝息をたてていた。


眠くないエミリアは宿に置いてあった本を読む。

世界に蔓延る魔物の生態を記録したものだ。

若い学者が世界各地を回り作り上げたらしい。

なかなかわかりやすく、細かく作られていた。

なるほど、その学者は自分の目的のため、色々な人のために危険な冒険をしたのだ。

いいことだ、目的を持って動くのは………







そういえば旅の目的はなんだったろうか。






そう、確か自分の居場所を探していたのだった。

両親と妹、親友が居なくなり誰かと一緒にいたかった…………






あぁ…………そういうことか。








居場所が欲しかったのではない。

エミリアは寂しかったのだ。

自分のそばから離れることのない、誰かと居たかったのだ。









レイラとハンナが一緒にいてくれることで寂しさは無くなった。

妹と親友の代わり…………と言うつもりはないが二人が甘えてくれることでエミリアは満たされた。




二人の居場所はきっとエミリアのいる場所だ。

ならどこか適当な場所で居を構えるべきか。



「ぶぇっ。」


本が顔に落ちて間抜けな声が出た。

眠気がうつったのか腕の力が抜けたようだ。まだ日は落ちてないがこういう時は素直に寝たほうがいい。















夜、雨と強風が港町に訪れる。

波は大きく荒れとても船が出られる条件ではない。


フェイズは双眼鏡で海を見ていた。




月明かりがなく、海は荒れ、雨風が降り注ぐ。


こんなとき、決まって奴等が現れる。

『海の狩人』と呼ばれるあいつら………



不自然な泡立ちと共にあいつらはやってきた。



「サハギンだー!!」


魚のような風貌でありながら人間のように二足歩行もできる水棲の魔物。

数十もの数が雨に紛れてやってきた。


「ここ最近静かにしていたと思ったらこんなに増えてやがって!」

「キャプテン!!数が多すぎる!!」

「冒険者どもを呼べ、まだ寝てないはずだ!」












港町は騒然としていた。


サハギンの襲撃は何度もあったがこれだけの規模の襲撃は初めてであった。

フェイズは曲刀で三体纏めて凪ぎ払った。


サハギンの攻撃手段は口から出す水鉄砲と鋭いヒレ、そして手に持ったトライデントだ。


「あっははは!!いいねぇ燃えてきたよ!!」


セリカは剣舞でも舞っているかのように跳びまわり、そしてサハギンを確実に撃破した。

端から見れば踊り子のようだ。


「出でよ冥府の亡者、かの敵を殲滅せよ。」


リリノアが呪文を唱えるとリリノアを守るように数体の武装したスケルトンが現れた。

そして命令を聞くとサハギンに攻撃を始めた。

彼女はネクロマンサー、アンデットを使役することができる。


更なる上位のアンデットも呼び出せるが冒険者が多いのでスケルトン数体にとどめた。












エミリアは不機嫌だった。

襲撃騒ぎで寝るどころではなくなったのだ。

寝起きの悪いエミリアは用もなく起こされるのを嫌った。

プレートナイフを抜くと、窓に張りついていたサハギンを窓ガラスごと貫いた。


「んぅ~……寝直したい。」


寝起きの子供のように目を擦り部屋をでた。



レイラとハンナはとっくにサハギンと戦っていた。

ハンナがクロスボウで足止めし、その間にレイラが焼き尽くす。

雨が降っているとはいえ、レイラの火力は衰えていない。

いいコンビネーションだった。


後ろから二人に接近していたサハギンを蹴り飛ばす。

トライデントを奪うとサハギンの顔を穴だらけにした。


「んー、悪くない。」


エミリアは槍のような長柄武器を好まない。

だがこれはいい感じに短いので使いやすく感じた。

これで行こうか。



エミリアが邪悪な笑みを浮かべた。








お前たちはどこまで楽しませてくれるの?

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