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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾参 ―黒き神の子―
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死神少女は目をつけられる

【バナス砂漠】

時は少し遡りエミリアが闘技場で殺人ショーを始める前辺り。


バナス砂漠の何処かにある遺跡の内部には発動していない魔法陣と祭壇、それらを青く燃える松明が囲んでいた。

魔法陣の中心にはこの場に似つかわしくない黒髪の少年が両手を挙げぶつぶつ呟いていた。


「素晴らしい逸材だ。」


少年がはっきりと言葉にすると周りにいた黒いローブの集団に指示を出し始めた。


「依り代は決まった、儀式の準備をすすめろ。例の部隊で町に向かうのだ。()()()()()()魔物を放って魂を集めよ。僕も準備ができ次第向かう。」


黒いローブの集団は少年の言葉の終わりを待つと直ぐに行動を開始した。



「間もなく貴方を再臨させることができます、今しばらくお待ちを。」









「邪神ズヴェン様。」










【砂漠の町ゴドゴゴ】

絶対的な守り、そして散弾銃(ショットガン)による不意打ち。

瀕死の状態にあったエミリアは短時間で血を多く流しすぎた。その一瞬の隙に小さな身体は無慈悲にも貫かれた。


死ぬかも知れない。そう思ったのは何度目だろうか。

戦闘に慣れなかった頃にでかい熊に襲われた時、人攫い目的で沢山の破落戸に囲まれた時。

吸血妃や王国のなんちゃら王子との殺し合いの時も危なかった。


嘗ては自分の居場所の為に殺しを続けていた。




だが今は大切なものが増えた。

自分が死んだら残された少女の末路は地獄だ。


見知らぬ野郎に連れて行かれる未来、そんな光景を幻視したエミリアに不思議と力が籠もってきた。





エミリアの中の何かが切れた。


グリムリーパーを投げ捨てるとエミリアは腹に突き刺さった戦斧(ハルバード)を曲げ始めた。


「何っ!?」


この戦斧(ハルバード)はミスリル製だ、素手でどうこうできる代物ではない。

だが戦斧(ハルバード)からギギギと不吉な音が鳴り始めていた。


キングはエミリアごと戦斧(ハルバード)を振り回し、叩きつけだした。

だが深々と突き刺さった戦斧(ハルバード)はキングの馬鹿力をもってしても抜けなかった。

そんな状態でもエミリアはミスリルを曲げるべく力を込めていた。




バキッ


有り得ない事にミスリルが素手で折られた。

エミリアは背中から自分の血で汚れた戦斧(ハルバード)を抜き取るとゆらゆらとキングに近づいてきた。


キングは初めて恐怖という物を感じた。

本来ならこの少女(イカれたガキ)は死んでいるはずだ。

あれだけ大量の血を流しておきながらまるでアンデッドのように立ち向かってくる。

ただのアンデッドならまだ良い、問題は戦意を失うどころか逆に殺意を剥き出しにしているところだ。

顔は全くの無表情、しかし先程から目を限界まで開いた少女は真っ直ぐキングを捉えていた。


思わず後退りをしたキングは折られた戦斧(ハルバード)の柄を捨てると先程落とされた散弾銃(ショットガン)を拾った。


ドウッ!!


躊躇なくぶっ放した散弾は間違いなくエミリアに命中した。

ところが怯むどころか全く歩みを止めない。


カチッカチッ


「くそっ!!」


もう一度散弾銃(ショットガン)を撃とうとしたが不発。排莢をしないと散弾銃(ショットガン)は撃てない。


エミリアは徐に持っていた戦斧(ハルバード)の先端をキングに投げた。


「ぐぉっ?!」


何処にそんな力があったのか、兜に当たった衝撃で思わず倒れた。

倒れたキングを足で抑えたエミリア。


右手にはキングが持っていた散弾銃(ショットガン)。それを持った瞬間にエミリアの脳内にある光景が浮かび上がった。


これは都合が良い、片手だけで十分だ。



エミリアは散弾銃(ショットガン)を片手で格好よく一回転…………スピンコックさせて射撃可能な状態にする。


そして銃口をキングの兜に密着させた。




「さっさと死ね。」


ドウッ!!



兜から血飛沫が噴き出た。

そして散弾銃(ショットガン)の反動に耐えられずエミリアが吹き飛んだ。




ウォォォォォ!!!


新たな王の誕生に観客は歓喜の声をあげた。

絶対王者を蹴落としたのは成人前の少女、これはゴドゴゴの歴史を大きく変えたようなものだ。


ガチャンッ


キングの死と同時にクリスティアナ達の首輪が外れた。







それと同時に大闘技場に魔物が殺到し始めた。


「何だ?!一体何が起きている?!大闘技場の障壁はどうした?!」


砂漠の族長セルジオは叫びながら襲いかかってくるコンドルを捌いていた。

すると部下の一人がセルジオに


「族長!障壁が割られています!大闘技場どころか町中に魔物が!」


事実、ゴドゴゴにはいつ入り込んだのか大量の魔物が人々を襲っていた。

コンドルだけで無くディンゴやイエロースライムまでいた。






「何て数っ!」


ハンナは大闘技場に降りて襲いかかる魔物を撃ち落としながらエミリアの下へ向かっていた。

キングを倒してから気を失ったのがエミリアは起き上がる気配がなく、無防備な状態だった。


力を取り戻したレイラとナタリーも迎撃に加わり、クリスティアナの強固な障壁のお陰で少しずつだが進んでいた。


「王国の時の襲撃と同じです、魔物を招き入れた何かがいるはずです。」


クリスティアナはエミリアと再会したあの日を忘れていなかった。

あの時も突然魔物が沸いて大混乱に陥っていた。

状況は全く同じだった、




キェェェェェ!!


騒然としていたはずの大闘技場に一際異彩な雄叫びがはっきり聞こえた。

その雄叫びに応戦していた砂漠の民達は顔を青くした。


「おい、今のって………」


それは空から突然やってきた。

圧倒的な巨体を持ちながら何も居ないかのようにゆっくりと大闘技場に降り立った。



見た目は黒い鳥、だがサイズはかなり大きく成体のフレイムドラゴンに匹敵する程だ。


黒い巨鳥は首を大きく震わせた。

それにハッとしたハンナは


「みんな耳塞いで!!」



「キエェェェェェェェェ!!!」


大闘技場を揺るがすような轟音。

砂漠で最も恐れられる魔物、その名は『ズー』。

名称:ズー

系統:鳥系

全長:25m

ランク:A


巨大な鳥の魔物。

鳥系の魔物としては世界最大で砂漠の生態系の頂点に立つ。

過酷な砂漠で生き延びる為、普段は岩場などに身を潜める体力を温存し砂嵐の無い夜に大規模な狩りを行う。

標的は自分以外の全てでドラゴンですらも彼の栄養と化す。しかし巨体に見合わず食は細い。

岩に食い込ませる頑強な足爪や岩盤をも砕く嘴、『翼爪』と呼ばれる翼の突起等で攻撃。

毒などは持たないが恐怖心を煽る特徴的な雄叫びをあげることから『黒き凶兆』の異名を持つ。



『魔物生態報告書』 著:アリス・ヘッセンベルグ

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