表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾弐 ―嫉妬の果てに―
145/174

死神少女の雨の過ごし方

更新頻度がどんどん遅くなってますがなんとか生きてます。

【ベルセイン帝国 小さな村リネ】

雨。


雨の日が少ないリネでは村人達は基本的に外へ出てこない。

雨天日が少ない分降水量が凄まじいのだ。

そしてリネ近辺の森や山に生息する魔物も同様にねぐらから出てこなくなる。

魔物討伐ができないという理由で多くの冒険者も待機状態になっていた。


「凄い雨。」


新築のエミリア達の家にも大雨が降り注ぐ。

雨漏りの心配は今のところは無さそうだ。


「お日様出てこないなぁ。」


エミリアの隣で何時もより癖毛が跳ねているレイラが不満そうに呟く。


レイラの日課の一つに日光浴があった。

フレイムドラゴンの圧倒的なパワーの源の一つに日光が含まれている。

日光を浴びることで体内を巡る熱エネルギーが活発になり、ブレスの威力が高まるらしい。


因みに日光浴の際は竜の姿で行うのだが、最近は日光浴の最中に子供たちが来て遊び場にされることがあるらしい。


「明日までは雨が降るってクリスが言ってた。」


「えぇ~……」


分かりやすく落ち込むレイラ。


日光浴が出来ないのもそうだが、冷たい物が苦手な彼女は雨そのものが嫌いである。



「おいで。」


ふかふかのソファに座ったエミリアはレイラを膝に寝かせた。


「絵本読んであげる。」


取り出したのは黒地に赤い文字が書かれた絵本。

『グリム君とリーパーちゃん 悪徳領主をやっつけろ!』

と書かれていた。


子供向けの話の筈なのだが内容は残虐表現のオンパレードだ。

とても教育には向かない代物だが10年以上も新作が出続けていた。






大雨で退屈そうにしていたエミリア達の為にクリスティアナはホットケーキを焼いていた。


甘い物好きな彼女は料理も得意だ。

この家では料理は当番制でクリスティアナの日は少ない材料ながら、味も損なわないご馳走が毎回出るのだ。


彼女の背後には黒い鎧………ゴーレムのラバダが仁王立ちしていた。


「………この程度で火傷はしませんよ?」


製作者でもラバダの心意は未だに分からないが、彼なりに見守っているつもりなのだろう。





「エミリア、ホットケーキを………」



部屋にはさっきまで居なかったでかい子供が三名増えていた。


ハンナはやたら瞳を輝かせ、ナタリーは恍惚とした表情で、ルールーは何時も通りの無表情で聞き入っていた。


レイラはすやすやと寝ていた。







「ルールーは絵本初めて?」


「うん。とても興味深い内容。」


ルールーは残虐絵本を食い入るように眺めている。

読み聞かせを終えたエミリアは聖女特製ホットケーキを味わっていた。


「ルールー様、絵本にはそういった内容の物ばかりではないのですが。」


絵本に対する偏見を持たないようなんとかクリスティアナがフォローする。


「あぁ、それは分かってる。ただ珍しいと思っただけ。」


そして再び絵本に視線を向けた。

真剣に読んでいるようだが内容が内容なので複雑である。



「ルールーは食べないの?」


ホットケーキを半分ほど食べたエミリアは絵本に夢中のルールーに声をかける。


「精霊は魔力を活動源として生きている。だから食事は必要ない。」


「クリスのホットケーキ、美味しいから食べてみれば?」


エミリアのフォークがルールーの口へホットケーキを運んでいく。

反射的にルールーは口を開いてしまう。


「うん………なかなかいける。」


「でしょ?クリスは料理が上手なの。」


そう言ってエミリアは二口目を運んでいく。


「エミリア!私にもそれやって!」

「私もー!」


ルールーが口を開ける前にハンナとレイラが「あーん」を要求し出した。

二人の皿のホットケーキは胃袋の中だ。



この後、当然ナタリーとクリスティアナにもあーんをする流れになったのは言うまでもない。











エミリアの名は今や隣国のブランウェル王国にも知れ渡っていた。

10代でAランク冒険者にたどり着いたのは母親のニコル以来の快挙である。


新聞記者の取材にも応じた彼女(応対したのはナタリーとクリスティアナ)は王国の新聞記事にも一面で載っていた。






とある宿の一室で記事を読んでいた男の手に力が入っていく。


彼にとって少女の顔立ちは非常に見覚えがあった。

向こうは知らなくてもそんなことは彼にとってどうでもいいことだ。




「生き残っていたのか……。」


新聞をぐしゃぐしゃにして放り投げると瞬時に燃えて塵となった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ