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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾弐 ―嫉妬の果てに―
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死神少女は目を付けられる

【ベルセイン帝国 小さな村リネ】

翌日、村に帰るとやけに歓迎ムードが漂っていた。


村人達は口々に「流石だ」「村の誇りだ」とか言ってるが何のことだか分からない。


その答えはギルドで分かった。



「おめでとう。君たちは今日からAランク冒険者だ。」







Aランク冒険者。


かつてエミリアの母であるニコルが到達した冒険者ランク。

任命される条件は明らかにされては居ない為なろうと思ってなれる物ではない。

現在帝国の冒険者でAランクなのは数名しかいない。

数多の功績と推薦状が必要となる。




エミリアには自分が母と同じ位置だという自覚は無かった。

もう二度と手合わせはできないが未だに勝てるとは思っていない。

だからこの偉業は仲間の皆が居てくれたから達成できたのだと考えることにした。





数十分後のギルドは宴会場となっていた。


誰がやり始めたのかいつの間にか料理と飲み物が運び込まれ大きな騒ぎが起きていた。

元来冒険者の中には祝い事や騒ぐのが好きな者が多い。

年端もいかない少女達が自分達を越えた事を心の底から祝福した。



「ははは、まさかエミリアちゃんがここまで行っちゃうなんてねぇ。」


「複雑だけど色々と恵まれてみたいだし、正当な評価なんじゃない?」


酒宴の端っこではビキニアーマー戦士のセリカと仮面の死霊術師リリノアが思いに耽っていた。

大分飲んだらしいセリカは顔どころか身体中が赤くなっていた。


「だってさ~、ワイバーンなんか中々倒せるもんじゃないからね?もう弟子入りしちゃおうかな~?」


「迷惑なだけよ。」


グラスの中身が空になったセリカは席を立つとリリノアに後ろから抱きついた。


「何よ。」


「おしゃけ無くなったぁ~。」


「……そうね、そろそろ宿に戻りましょうか。」


スケルトンを1体召喚すると彼にセリカを担がせた。


ギルドから出る間際に祝福され慣れてないエミリア達を一度見る。


次々と差し出されるアルコール代わりであろうジュースに困惑しつつも律儀に全部飲んでいた。





仮面の下でそんな様子を見て微笑むと今度はそんな騒ぎを眺める目付きの悪い数人を見やる。





「冒険者の中には変なプライドを持つ奴もいる。妙なことにならなければいいんだけど。」


誰にも聞かれない声で呟くとリリノアは夜の闇へと消えていった。













異世界転生。

異世界転移との違いは異界人の元の世界での生死である。


異界人が何らかの理由で死亡し、魂が抜けた際に別の世界で瀕死の人物の体に入り込んでしまうことがある。

そして元の世界(以降前世と呼称)と現世の記憶が混ざり短時間重病人のような状態を過ごすと異世界転生は完了する。

転生先の元々存在した人格は残念ながら消え、新たな人格が誕生する。


異世界転生先の肉体は大抵が貴族令息、令嬢であることが多い。

それ故貴族は異世界転生に対し常に警戒をしていた。







エミリアナ・メイラインは異世界転生を果たした貴族令嬢だ。


ニホンと呼ばれる国で地下アイドルをしていた彼女は帰宅中、不幸にもトラックに轢かれてしまい死亡してしまった。


目覚めたら見覚えの無い天井に上等そうなベッド。

ここは天国かと思ったが部屋に入ってきた侍女を見て悟った。これは異世界転生だと。




所謂剣と魔法のファンタジー世界だと理解した頃にはこの世界を自分なりに満喫することにした。

目指すは冒険者だった。


前世でそう言った類いの小説を読み漁っていた為憧れていたのだ。


両親は諦めたような顔をして冒険者稼業を認めてくれた。

家に迷惑さえかけなければ良いと。





自分付きの使用人を巻き込んで冒険者パーティーを結成してからは快進撃を繰り広げBランク冒険者へと上り詰めた。


ここまで来ると色々な人から注目され始めた。

元々目立つことが好きな彼女は視線を独り占めできる事に優越感を覚えていた。


それと同時に自分よりも目立つ存在を疎ましく思うようになってきた。

同業者を妬むのは冒険者界隈では割りとあることだ。

だが彼女のそれは普通ではなかった。


仲間である使用人の一人は諜報能力に優れていた。

それを利用して相手の弱味を握り、パーティーを組んでいるのであれば不和を生じさせ孤立させ、最終的に魔物の餌とさせていた。

使用人が優秀だったからか今までバレることは無かった。



そして彼女達が立ち寄った村のギルドで新たな標的が現れた。



自分よりも目立ち、自分よりも若いくせに冒険者ランクが高い。


何よりも自分と同じような名前なのが許せなかった。




社会の厳しさを教えてあげよう。

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