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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾壱 ―巨人と巨船と魔導人形―
142/174

死神少女は隙間を埋めたかった

【ベルセイン帝国 小さな村リネ】

港町での激戦から数週間後、クリスティアナは目隠しをされて広間に立たされていた。


エミリアが「クリス、ちょっと………」と言いながら布を巻いてくるのだ。

昔から何かびっくりさせたい時に使う手段だ。

記憶の中では大きなチョココロネが出てきた事があった気がする。

子供だったクリスティアナにはもはや夕食レベルのチョココロネだった。


そんな彼女が広間に立たされ数分、ガチャンガチャンと何か音が聞こえてきた。

かなりの重量を感じさせるそれはこの家には不釣り合いだ。だがエミリアが何の反応も示さないとなると危険性は無いのだろう。


やがて何かがクリスティアナの目の前に立つとエミリアが目隠しを解いていく。


「クリス、目を開けて。」


目隠しされていた目を少しずつ開けていく。





それは信じられない光景だった。


「どうして………」


クリスティアナの前に立っていたのは黒い鎧。

だが色は違うが見覚えのある鎧だった。


もう二度と会えないと思っていた。

思わず抱きついてしまった。

黒い鎧はただされるがまま立っていた。


聖騎士、オリハルコン製の自我を持つゴーレム。

彼に与えられた名はラバダ。任務はクリスティアナを守ることであった。




「まさか再びラバダに会えるとは思えませんでした。」


「ん。クリスの喜ぶ顔が見たかったし、お礼はナタリーに。」


「ナタリーが?」


視線を変えるとエミリアの後ろには老人のように杖で身体を支える若き賢者がいた。


「うふふふ………我ながら自らの才能が恐ろしいですわ。今ならホムンクルスだって作れそうですわね。」



港町での防衛戦の報奨としてナタリーは魔導師団長ヨーデルにオリハルコン鉱石を要求していた。


その裏で大量の金が動いたのだがそんなことを知ることはないだろう。



「ラバダ………その、私は」


「そこから先は言ってはならない。」


クリスティアナの台詞をラバダが遮った。

その声は以前同様無機質だが。


「俺は主の命令に従ったまで。俺は深く考えることはできないが、主の考えに今まで間違いは無かった。そう思っている。」


一瞬エミリア達の方を見て再び続ける。


「実際に全員生き残っている。だから自分を攻めるな。」


「あぁ………あぁ………。」


クリスティアナはずっと負い目を感じていた。

ラバダが倒された時点で邪神の復活を予知していた彼女はラバダに、魔力を全て聖都の石像に送るように念話で伝えた。

それは遠回しでラバダに死ねと言っているような物だった。

ラバダがクリスティアナの命令を聞かないはずがない。当然全てを承知で石像に魔力を送り、やがて力尽きたのだ。


自分がラバダを殺した。

その罪に時折悩むことすらあった。

だから今、目の前に再び蘇ったラバダに謝ろうとしたのだった。


抱きついてわんわん泣くクリスティアナを見て困ったようにラバダが顔を向けた。


「………どうすればいい?」


こんなに感情的なクリスティアナを彼は知らなかった。

エミリア達と合流する前の淡々としたクリスティアナが彼の知る彼女だった。


「クリスの好きにさせてあげればいいよ。」


クリスティアナをよく知るエミリアが答える。

エミリアはクリスティアナが信頼する数少ない存在だと覚えていた。

故に彼女が言うのなら問題ないのだろうとそれに従った。


エミリアは満足そうに頷くとふらふらしているナタリーに肩を貸してその場を後にした。




王国でクリスティアナを助けた時、エミリアは違和感を感じていた。

彼女の表情の奥に何か穴が空いてるように思えたのだ。


そして聖都へ向かった時に理由がわかった。


鎧の騎士が居ない。

エミリアの居ない間、ラバダはクリスティアナの心の隙間を僅ながら埋めていた。


皮肉な事に長い間共に過ごした為、彼はクリスティアナにとって居なくてはならない存在となってしまっていた。


エミリアは以前のような彼女に戻ってほしかった。

だからダメ元でナタリーに復元を頼んだ。

ゴーレムの復元には錬金術が必要。魔力を扱うそれは賢者であるナタリーならできるのではないか、と考えた。


実際は錬金術など素人同然だったのだがそこは腐っても賢者、素質はあったらしく上手くいった。




数日間錬金漬けだったナタリーはエミリアに誘導されベッドに寝かされた。


「お疲れ様、ナタリー。」


静かに寝息をたてる可愛い妹の髪を撫でながらエミリアもお昼寝を敢行することにした。

今日は冒険者はお休みだ。






そしてラバダが加入して六人組となったエミリア率いる冒険者パーティーは更なる躍進を遂げることとなる。

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