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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾壱 ―巨人と巨船と魔導人形―
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海賊対策会議

【ベルセイン帝国 港町セーベグ】

帝国海軍壊滅の報は直ぐに広がった。

当然エミリア達が滞在する港町にも届き、偉い人達が対策に追われる事になった。


港町の守備が薄くなった今、海賊に襲われたら一溜りもない。


まずは帝都に救援要請、そして周囲の冒険者ギルドへ依頼を出した。

最寄りのギルドにはBランク冒険者がいる。彼等が協力してくれれば心強いだろう。


当然この町にいる冒険者へも緊急依頼が出された。

別の依頼で港町にいたエミリア達も例外ではなかった。

港町の偉い人と思われる筋肉達磨が成人していない女の子に頭を下げる様は周りの人をざわつかせた。

そして二つ返事で引き受けたエミリアもまたざわつかせた。


「あいつらがいなければハンナが溺れなかった。だから全員息の根を止めてやる。」


初日の事件で散々殺戮と恐怖を与えておいてまだ足りなかったらしい。

エミリアの望みはただ1つ、バイキンゴー海賊団の皆殺しである。


「私の我儘だけど、皆手伝って。」


そんなエミリアに反対する者は存在しなかった。

決意と殺意を固めて闇剣グリムリーパーの腹を撫でると少し赤く光った。








【ベルセイン帝国 帝城ハーベリア】

夜、帝城にて緊急会議が開かれた。

帝国海軍壊滅の報、港町の危機に伴いどうするべきか。


大会議室には皇帝ハワードに皇妃ブリュンヒルデ、そして軍部のトップ等が揃っていた。



会議室中央には要塞船ジェストの船員が撮影した写真が複数置いてある。


「とても信じられん………何重にも施された防御魔法を突破する奴がいるとは。」


皇帝ハワードは感心するように呟いた。


「先に伝えました通り、ハーベリアが大破した今のセーベグは無防備です。現地の兵士だけでは太刀打ちできないでしょう。」


そう言うのは宰相クリックス。

巨大戦艦は存在だけで抑止力となっていた。おかげでこれまで盗賊等の被害から逃れられていたのだ。


「セーベグにも巨人はやってくるはずだ。奴を何とかしないと町は壊滅だ!」


将校の一人が騒ぐ。

先程からなかなか良い意見は出ず会議は平行線を辿っていた。


「1つよろしいかな。」


ここで口を開いたのは帝国魔導師団長のヨーゼフ・マイスナーだ。


「ハーベリア船員によると、巨人は船を沈ませずに退いたのだったな?」


「報告によるとそのようです。」


クリックスに確認するとヨーゼフは少し考え込む。



「巨人は逃げなければならない理由があった。そして巨人の後退と同時に海賊は去った。奴等の主戦力は巨人による物が大きいだろう。奴さえなんとかすれば勝機はある。」


海賊そのものは脅威ではないと断言する。

巨人が居なければ制圧は容易であろうと。


「しかし巨人は巨獣砲を無傷で耐えたんだぞ、そんな奴を一体………」

「これは推測に過ぎないのだが……」


将校の一人の言葉を遮るとヨーゼフは目の前にミニチュアサイズの障壁を展開した。


「通常、障壁は魔法や大砲などの遠距離攻撃を防ぐのが目的。あの巨人には常識外れの障壁が張られていたと思われる。そして………」


ミニチュア障壁を指で弾くと障壁が砕ける。


「あまり知られてないが障壁は直接的な攻撃に弱い。どんなに強固な障壁も魔法よりも数倍早く限界を迎える。」

「つまりヨーゼフ殿、貴殿は巨大な剣か何かを用意しろと仰るので?」


将校の言葉に首を振る。


「いや、巨人を倒すには準備がかかりすぎる。巨人を足止めしている間に飛行騎士や残った海軍で海賊を殲滅するのだ。」


おぉ、と声があがる。

ハワードも頷いていたが、


「飛行騎士団は勿論参加させていただきます。でも、肝心の足止めをどうするつもり?飛行騎士総出でも止められるとは思えないのよ。」


「皇妃殿下の懸念もごもっとも。しかし心配はありません、手は一つあります。」


「何かしら?」



ヨーゼフは一枚のやや古ぼけた紙を取り出した。


「以前、王国と争っていた事がありましたな。終戦直前に城塞都市や魔導人形等、新たな物が生まれました。しかし。」


一呼吸いれる。


「中には作られたものの用途に合わず、倉庫の片隅で埃を被ったまま放置されている物もございます。今回はそれを使います。」

「待てヨーゼフ、お前あれを?!」


ハワードには心当たりがあるのか慌て始めた。



「その通りです。今こそ巨大魔導人形『ギガント』を使う時です。」




巨大魔導人形ギガント。

『圧倒的な殲滅力』をコンセプトに作られた全高50mの巨大人型兵器。

全身をミスリル鋼で覆われたボディは頑強。まさに動く城である。





「ヨーゼフ、ギガントを使うことに反対はしない。あの巨人を止められるのはギガントしかいないだろう。」


巨獣砲を無効化する巨人に対抗する為の巨大兵器。

例え倒せなくても海賊を殲滅する為の時間は稼げるだろう。


だがハワード………恐らくこの場にいる全員がヨーゼフに聞かなくてはならないことがあった。





「だがヨーゼフ、あれをどうやって動かすつもりだ?」




通常、魔導人形には動力となる魔石が組み込まれる。

事前に魔力を込める必要があるが、魔石に含まれた魔力で活動し敵対物体を排除する。


だがギガントはその巨体故、多大な魔力を必要とする。

まず移動するだけで多くの魔力を消費してしまう。その為、攻撃用に使う魔力が失くなってしまうのだ。

魔石では少し歩いただけで活動を停止してしまう。そこで当時、魔導師が乗り込み魔力を直接送る方法がとられた。

魔力よりは多く稼働したが、やはり攻撃は手足を使った格闘に限定されてしまう。おまけに魔導師の魔力が持たないのでマナポーションを大量に用意しなくてはならない。


魔力を回復するマナポーションは高価で、稼働の度に何十個も用意するのはとてもお金がかかる。

これが原因で長い間倉庫に眠っていたのだ。





「確かにあれを動かすには魔導師が必要です。それも多くの魔力を持つ魔導師が。しかし」


「その言い方だと当てがあるようだが?」


ハワードの問いかけにヨーゼフは頷く。




「目星は二名つけています。ただ、魔導師団の者ではありません。冒険者なので交渉の必要があります。」





「賢者ナタリー・ルーベンス殿、そして聖女クリスティアナ・ハノン様です。」

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