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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾 ―降臨―
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死神少女は新ダンジョンに挑む

【ベルセイン帝国 小さな村リネ】

新たに発見された魔の森のダンジョンの攻略は困難を極めていた。


これは冒険者ギルドには想定外で予定の数週間は過ぎていた。


リネに集まった冒険者は高くてCランク。

決して低くはないのだが誰もが撤退を繰り返していた。



ほとんどが四階層目での撤退を余儀なくされていた。

犠牲も少なくはない。





「まぁ、それでは私達にもダンジョン攻略の許可が?」

「はい。実力的にも申し分ないとのことです。」


メイド風の受付嬢ティナはエミリア達に例のダンジョン攻略許可を報せていた。


「まだ来るとは思っていませんでしたが、やはり人手不足ですか?」

「その通りです。ルーキーでも構わないので即戦力が欲しいのですよ。」


ダンジョンが集落の付近に現れた場合、最も危険視されるのはスタンピードである。

黒の森で発生するスタンピードと違いダンジョンに生息する魔物が出てきてしまい周囲の原生物や集落を襲い始めるのだ。


原理は不明だがダンジョンの攻略を進め、最深部まで辿り着けば一時的にダンジョンの機能は停止し魔物が発生しなくなる。


一時的………つまり何れは復活するのだがダンジョンの魔物による被害は尋常ではないのだ。



冒険者ギルド本部が急がせるのはそういう理由だ。


そこで新米ながら早期にCランクに登り詰めたエミリア達にダンジョン攻略を要請したのであった。



「本部は急いでほしいようですがタイミングはお任せします。準備もあるでしょうし。」

「お任せください。」






ダンジョン攻略が決まるとまずハンナが近くに居た行商人を見つけて色々買い始めた。


小さい村にはこうした行商人が帝都等の商品を売りに来る。

これといった特産品の無い村に来る行商人は少ないが彼らのおかげで村は存続できているようなもの。


そして新ダンジョンの発見に伴い行商人は冒険者用の様々なアイテムを仕入れてやってくる。


ハンナはそれが目的だ。



冒険者用の道具はよく知らないが一目で何に使うのか分かるものを購入していく。

支払いは問題ない。エミリアが過去に野盗集団から強奪した資金がまだ残っている。


エミリアはナイフかパン位しか買うものが無いので他の仲間に使わせているのだ。













ナタリー達はダンジョン攻略作戦をたてるべく家に帰る。

リビングには未だに寝ぼけているエミリアがレイラに顔を好き放題弄くられていた。


「あー、もうちょっとしないと起きないか。」

「お顔が凄いことになってますわね。それでも素敵ですわ。」

「んぁ~。」


念願の帰る場所を手に入れたエミリアは意識が覚醒するまでの時間が増加していた。

我が家のふかふかベッドはいつも以上にリラックスできたのか睡眠も深くなっていたらしい。






エミリアを三人で囲んで数時間後、ようやくエンジンがかかったエミリアにダンジョン攻略の話を始める。


「ダンジョンか………じゃあ準備ができたら行こっか。」


難しい話し合いは苦手なのでその辺はナタリーやクリスティアナの出番で最終的な判断はエミリアが行う。


「ところで聖女さんは?家の中にはいないっぽいけど?」

「クリスは村の子供達の相手をしてる。お昼には戻るって。」


聖女だったクリスティアナは村に帰郷してからは時折子守りのようなことをしていた。

元来世話好きな彼女だがきっと今ごろは慕ってくれる子供達に揉みくちゃにされている頃だろう。









【ベルセイン帝国 魔の森】

クリスティアナと合流した一行は新ダンジョンへと向かった。

入り口は魔の森の少し奥にある。道中ファングやクロウの襲撃を迎え撃ちながら道を進んでいく。


ふとエミリアは起きてからずっと気になっていたことを聞いてみる。


「ハンナ、腕のやつなに?」

「んー?バックラーっていうんだって。」


ハンナの右腕には小型の盾が取り付けられていた。

軽くて小さいため使いやすく、ルーキーからベテランまで幅広く使われている。


「珍しいね、そういうの使うの。」

「ダンジョンって何が出るかわかんないからねー。取り敢えず腕は守っときたいなってね。」


普段ハンナは隠れながら狙撃をしているため防具を装備していない。

前線でエミリアが暴れまわりナタリーとレイラの魔法で広い範囲をカバーしているため標的がいつの間にか居なくなったハンナを探す暇が無いのだ。

ハンナのような遠距離型の狩人はこれが本来の戦いかたである。


今回挑むダンジョンの地形がよくわからないため念のため持ってきたのだ。



「エミリアはそういうの使わないのですか?」

「いらない。重いから動きにくいし。」


前線で戦うエミリアにこそ防具は必用なのだが彼女は機動性重視らしく頑なに装備を拒む。


「お姉様、私達は怪我をしたお姉様を見たくないのですわ。」

「大丈夫、私まぁまぁ強いし当たんなきゃいいだけ。」


これである。

パーティー結成時もナタリーやクリスティアナが説得を試みたが聞き入れなかった。

今、彼女の身を守るのは何の強化もされていないただの布である。



「仕方ありません、今まで通り私達がサポートしましょう。」


今回も諦めて後衛四人組が援護する形となった。

冒険者パーティーとしてはバランスが悪いが四人の火力が高すぎてパワーバランスはむしろ取れていた。





ダンジョンの入り口らしき場所はこの場所には似つかわしくない石造りとなっていた。

そこからは魔力の無いエミリアでも禍々しさを感じた。


スカートの中にはもしもの時にと無理矢理入れられたポーション二つ。

そして久しぶりに羽織る黒い外簑の内側にはナイフがびっしりと入っている。

足のナイフベルトの物を含めればかなりの量の投げナイフを持ち込むことになる。

これだけのナイフを持ち運びながらも道中では全く重さを感じさせない動きを見せた。


「ダンジョン内には魔物だけでなく罠もあると聞いてます。足元や壁、天井にも気を配りましょう。」

「ん。じゃあ行こうか。」






「なんだ、ルーキーがこんな場所に何の用だ?」


ダンジョンへ入ろうとすると別の冒険者パーティーがやってきた。


「ここはお前達のような奴が来る場所じゃねぇ、引っ込んでな!」


目付きと口の悪い鎧男がリーダーらしい。


「何ですの、いきなり御挨拶ですわね?」

「遊び感覚でやってるような連中はこういう場所で死ぬんだ。わざわざ帝都からこんなド田舎に来てやったレオ・カバハ様に任せておけばいいのさ。俺達が新ダンジョンとやらを攻略するんだ!」


レオの後に仲間らしき冒険者四人が着いていく。







「エミリア、あんなの気にしないでいつも通りいこうよ。」

「あーいう輩は真っ先にやられるのが相場ですわ!」

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